そうして、深夜3時、非常識だとは思いつつも、さすがに電話回線の混雑も深夜はおさまりつつあるのではと思い、お父様にかけたところ、無事つながりました。そしてその青年の安否もご家族に被害がないこともわかり、こちらは一安心しました。
が、それから私の長い長い2週間ははじまりました。社長が「福祉隊も現地に派遣する。政府と掛け合う」といい、救命が優先される災害時に福祉が関わる、というのは、前代未聞のことでした。政府からは、とにかく人が欲しかったのか、「高齢者が多い地区なんです。福祉隊を派遣するなどという発想がありませんでしたが出来るのならお願いします。」という指示がでたため、消防署とも連携し、大阪消防二次部隊と一緒に15名現地に派遣しました。
「適任ははるちゃんや」の一言で私はそこの責任者になり、2週間家にも帰ることができず、消防に缶詰になりながら、現地情報と死者の確認作業、安否情況を整理する日々でした。現地に行く人選も私と社長で行いました。怖かった。手を上げて率先していってくれる人は自己責任という形もとれますが、それでも15名には満ちません。その中から人を選ぶんです。中には家族がいる者もいます。万が一何かがあったら・・・皆、がんばってくれたと思います。
私たち福祉隊にできることはそう多くのことではありません。人命救助が優先され、助け出された後、避難生活する体育館などを回り、高齢者や幼児の不安や話し相手を聞くことくらいしか、できません。要介護高齢者においても、ベッドも何もない状態で、そこにいる赤の他人の人に、体位交換などを教えて、次の避難所をまわる、そんな技術提供をするしかできませんでした。福祉は医療(救命)の二の次、と考えられがちです。確かにそうかもしれません。でも助かったあとの、こころのケアが二次、三次になってはいけない・・・。
現地に到着した彼らから随時伝えられる情報。。ひっきりなしに、東北や関東方面の本部側に預けている高齢者様のご家族様からの問い合わせも相次ぎました。「すみません、安否確認中です。」この言葉を繰り返し、心の中では無力感だけが残っていました。私は本部のほうのご家族様とも電話で安否情報を伝える役割でしたので、ひっきりなしになる電話や現地からの途絶えることのない悲惨な情報・・・。。そして、リストにあがっていた利用者様の死亡が確認された、との数々の報告に、涙を流しました。もう、無理だ。もう、嫌だ。関西に住んでいるご家族にそのことを伝えなければなりません。こころが痛みました。いえ、無力感だけでした。「そうですか・・この大震災ですからね、ある程度覚悟してました。でも、早期に見つけていただいてありがとうございます」多くのご家族からのねぎらいとお礼を言われ、私はたまらなく、自分の無力と自然の驚異の恐ろしさを感じました。
私たちが大阪消防と現地に滞在できる期限は2週間と決まっています。後は後続隊に任せることになっていました。この2週間、私はほとんど眠ることもできませんでした。病院だけは所長と消防所長の計らいで、その時間だけ抜け出させてもらい、またとんぼ帰りという生活でした。
それは現地にはいって二日目の岩手に派遣した彼らからの緊急通達でした。避難所に向かっているところ、避難所からもらってきたのか、おにぎり二つ、お水二つをもった中年男性がこちら側に歩いてきたといいます。「どうされましたか」そう声をかけると、「この中にまだ寝たきりの親父が取り残されてるんや。でも家が半壊してもうた。消防に今助け出してくれへんか、っていうてきたけど、歳も歳やし、助け出せてもこの寒さで避難所で生活できますか、なんていうんや。年寄りは、親父は、ここで死ねって言うんか!!」と息子さんはその場で泣き崩れたそうです。まだ生きている。例え、高齢者であっても、放置することは、見殺しと同じだ。向こうの消防もまだ被害の全容もつかめず、そのように発したのだと推測します。誰も悪くはないのです。そんな事情を知った彼らから、無線で、「半壊家屋に高齢者が取り残されています。地元警察消防では手がたりず助け出すことができません。我々で助け出してもいいですか。指示願います」そんな無線がはいりました。私はとっさに所長と目をあわせました。彼らは私の指示を待っていました。所長と消防所長、局長と私たちが集まり話し合いましたが、私たちは地震の専門家ではありません。もし、家屋にはいったところ、二次災害でお年寄りはおろか息子さんやうちの隊員まで犠牲になったら・・・そんなことを思うと、簡単に指示が出せるわけもありませんでした。決断力は早いほうの私もさすがに、待ってほしいと現地に伝えることしか出来ませんでした。。
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