2月5日にあった日医での医療政策シンポジウム、宇沢氏に続き武見敬三氏の講演『人間の安全保障と健康』について要点を述べます。武見敬三氏は前回の参議院選挙、日医推薦で出馬し落選(次点)。しかしむしろ国会議員でなくなった現在の方がワールドワイドな活躍をされています。現在の主な肩書は日本国際交流センター・シニア・フェロー、東海大学教授です。
現代の人間の安全保障を考えるにもはや国内だけの視点ではどうにもならない。国境を越えた問題として考える。たとえば新型インフルエンザしかり。HIVなどもしかり。気候変動もしかり。エネルギー問題もしかり。国際社会共通課題の噴出に対してどう対応するか。
人間の安全保障の定義・・・●人間の生にとってかけがえのない中枢部分を守り、すべての人の自由と可能性を実現すること(自由の拡大)→健康は生にとってかけがえのない中枢部分 ●実現の手段:(非軍事的な)保護と能力の強化⇒人間の安全保障は、日本の新たな平和主義「強靭な平和主義」を支える概念
人間の安全保障の視点から見た健康への障害となるものは、戦争と人道的危機、感染症、非感染症(高齢化にともなう疾病など)、貧困と不公平がある。
アプローチの方法としてはトップダウンとボトムアップで日本はやってきた。
グローバルで見た場合垂直的なイニシアティブおよびプログラムでは限界が見える。そこで水平的なイニシアティブおよびプログラムが思考されている。たとえばWHO(世界保健機構)はもはやグローバル・ヘルスの課題を扱う唯一の機関ではなく、政府機関以外のアクター(ビル&メリンダ・ゲイツ財団、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)、ワウチンと予防接種のための世界同盟(GAVI)、など)の台頭がめざましい。そこでヘルス8(H8)(8つの保険関連機関(上記機関と国連機関)のトップによる非公式協議の枠組み)が構成されたが、なかなかうまくいっていない。
日本にとっての課題は、官官協力、官民協力の制度化、政策施行のグローバル・ヘルス専門家の養成、グローバル・ヘルス外交の確立などが挙げられる。そのためには●国立公衆衛生科学院、国立国際医療センター、国立感染症研究所、JICA間の連携強化をし、日本版NIHやCDCを作る必要がある●グローバル・ヘルス関係省庁(外務省、厚労省、財務省、文科省、など)間の連携強化●主要国の国際問題研究所とのグローバル・ヘルスをめぐる対話の促進が必要である。
自由、ダイナミズムと社会的共通資本をいかに共存させる仕組みを考えていくのか。またグローバル・ヘルスの中での日本の医療をどうするのか。それがこれからの課題である。
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