たまたまテレビで映画『サウスバウンド』を観ました。小学校6年生の主人公の父親は学生運動伝説の闘士で、現在も体制に属することを好まず、という当時の生き残りそのままの生活をしていた。その役を豊川悦治。ハマリ役です。また後ほどわかるのですが、実はお母さんも元活動家で、その役を天海祐希。東京の生活でさまざまな問題が起こり、西表島に家族ともども引っ越し、そこで自給自足の生活を開始。しかしそこでもリゾート開発会社と衝突する。。。面白く観たのですが、どうも観た後がすっきりしない。実際の小説を読めばそこいらへんがわかるだろうと思いました。
『サウスバウンド』(著 奥田英朗)。奥田さんは伊良部総合病院精神科医、伊良部一郎が主人公の『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』(この作品で直木賞受賞)、そして最近文庫化された第3弾『町長選挙』の作者としても有名。とても多作なひとですよね。
そういえば、この『サウスバウンド』の父親役の名前も一郎ですよ。息子が二郎。
で、本を読んだら、やはり大筋の流れは映画と一緒だけど、細かい設定やイベントの内容が違うところが多い。で、僕がなるほどねぇ、と思ったところが最後のほうにありました。
それは父親と母親が子供たちと別れるシーンで、母親が子供たちに言う言葉です。抜粋します。
「おとうさんとおかあさんは、人間としては何ひとつ間違ったことはしていないんだから」「人の物を盗まない、騙さない、嫉妬しない、威張らない、悪に加担しない、そういうの、すべて守ってきたつもり。唯一常識からはずれたことがあるとしたら、それは、世間と合わせなかったってことだけでしょう。」「世間なんて小さいの。世間は歴史も作らないし、人も救わない。正義でもないし、基準でもない。世間なんて戦わない人を慰めるだけのものなのよ。」
こういう視点もあるなぁと部分的には共感するものがありますね。世間の流れをそのまま鵜呑みにせず、自分ひとりひとりが考え、意見を持つ、そして行動することの大切さを感じ取りました。
このストーリーに、本でも映画でも出てくる登場人物の中でもっとも好きなキャラクターは西表島に住み着いている変な外国人のベニーさんです。どんな人かはぜひ読んでみてください。
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コメント
コメント一覧
映画の違和感わかるような気がします。
時代設定に少し無理があるような気がします。集団闘争の時代は団塊の世代です。過激派になって地下に潜った世代でも豊川、天海よりは随分年齢が上でしょうね。そこらへんのリアリティが欠けてるから、彼ら夫婦(両親)の説得力がなかったような感じですね。
ただ、奥田英朗の意図していることはわかります。闘志達はその後の社会に適合していきました。戦中の軍部における高官が社会の最上部に位置し、その跡を継ぐように闘争のリーダー達が社会を牛耳っていった。私としてはかなりの矛盾でしたよ。その違和感を著した作品だと言えますね。
奥田英朗は既存のフォームを打破したエンターテイメント作家ですよね(ま、最近の売れっ子は皆、かなり既定路線から外れていますけれど)。重々しいテーマだってさらっとエンターティメントにしてしまう。これが最近の流行ですよね。その分、底の浅さに「ん?」となることも。
おっと、映画での娘役北川景子、そして警官役松山ケンイチ、最後のエンドロールが出てくるまで判別出来ませんでした。見た後に調べたんですけど、天海祐希さんもノーメイクで、皆、監督の意向でダサダサにしていたらしいですね。
そうかぁ、時代設定は確かにちょっと無理がありますね。
パイパティローマって本当にあったら面白いなぁ。
こうした社会の中の小さな闘争は文芸とは言えません(笑)。
かつて、赤色闘争がユートピアを志向したことは奥田英朗にとってはパイパティローマだったんですよね。
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