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 むかしむかしあるところに、小ぶりな救急病院がありました。モットーは「いつでも受けます」「何でも受けます」。だけど周辺では「あそこに行ったら、おしまい」という悪い噂が流れていました。救急隊員も、あちこちに電話して、もうどこも駄目となったら最後にその病院に電話をしていました。
 そこにたまたま入院した人(甲さん)が、幸い経過が順調で「噂ほどのヤブじゃなかったじゃないか。まあ、あちこち不満はあるけれど」と思っていたある日のこと。救急車のサイレンが近づいてくる音がしました。すると甲さんの同室者で入院がずいぶん長い乙さんが喜色満面で私物の片付けを始めました。「大掃除ですか?」と聞くと、「今、救急車が入っているでしょう? これで私が退院できるんです」。わけがわからない甲さんに、片付けの手を止めずに乙さんは“解説”をしてくれます。この病院は常に満床であること。でも救急車は絶対断らないこと。だから新規入院があれば、誰かが退院しなければならないこと。自分は以前から退院希望を出していたがずっと断られ続けていたけれど、これで晴れて退院できることは確実であること。というか、そもそもこの病院では救急車が来ないと退院が発生しないこと。
 まさかそんなことが、と思っていた甲さんですが、しばらく経つと乙さんが言っていたことが真実であることを身をもって味わうことになってしまいましたとさ。

 十年一昔と申しますが、そんなむかしむかしのお話です。今ではその病院も21世紀にふさわしくなって……なっていればいいですねえ。

 

NATROMさんのエントリーを読んで、昔のある地域のことを思い出してしまいました。もちろんNATROM さんの記事中の病院と上記の病院はまったく無関係です。

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20081106#p1 

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2008.11.02 17:34 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  その他(医療関連)  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 5

 定員オーバー

 かつて大繁盛の病院に勤務していた頃、次から次に入院があり病棟は慢性的な定員オーバー状態でした。あまり大きな声では言えませんが、とんでもない詰め込み状態で、これはなんとかしないといけない、ということで退院促進もしましたが焼け石に水。結局増床となりましたが、認可の問題で結構時間がかかりましたっけ。

 なぜ「大きな声では言えない」「なんとかしないといけない」かというと、たとえば地域医療計画(の病床規制)に反しているからです。監査では「定員オーバーをなんとかしないと、保険の指定を取り消すぞ」と脅された覚えが私にはあります。(「地域医療計画って、何だ?」の方はネット検索を「地域医療計画 ○○○(お好みの都道府県名)」でやってみてください。たとえば各地域ごとのベッド数などが法律に基づいて行政によってきっちり決められていることがわかると思います)

 一部マスコミが大好きな言葉「たらい回し」のとき、病院が言う「満床だから救急が受けられなかった」に対して「そんな言い訳をするな。たとえ満床でも無理してでも受けるべきだ」という意見もありますが、それをやったらその病院がこんどは別の方面から“攻撃”を受ける可能性があります。医療法や医療法施行令に違反している、と行政がおかんむりになったり(「その“無理”は違法行為である」ですから)、あるいは「あの病院は定員オーバーで患者数に比較して医療従事者の数が足りずにサービスは低下、それでも過剰な詰め込みで儲けようとしている」とどこぞが大喜びで「特ダネ」を打ち上げるとか。

 「法律通りに現実は動かないから、定員オーバーは一時的にならOKOK。超法規的に認めましょう」と行政か司法からお墨付きがあるのなら、安心して「詰め込み」もできるんでしょうけれどねえ。……もしかしたら、私が知らないだけで、本当はあるのかな?

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 私が若い頃働いていた県立病院は赤字が問題で、そのことで院長は定期的に県庁に呼び出されていました。「明日は議会で赤字について説明しなきゃいけないんだ」とげんなりした顔でぼやいていた姿を私はお気の毒になあ、という思いとともに覚えています(私は下っ端だったから、お気楽だったのですが)。だけど、病棟は常に満床で外来にも患者が溢れていてそれで赤字になるのは、院長のせいではないとも思っていました。だって当時の院長には明らかに実質的な人事権も予算編成権もなかったのですから。(医者の人事は大学が、それ以外の人事は県庁が、予算は議会が握っていました)

 民間病院は企業ですから、赤字はまずいでしょう。でも公的病院では経済オンリーではないちょっと違った角度からの政治的判断も必要だと私は思っています。
 たとえば経営者や管理者の放漫経営が原因の赤字は、これは民間でも公立でも完全に駄目です。だけど、たとえば県の中核病院で、他の民間病院では不可能な(あるいはコストがペイしないから民間では行われない)高度な治療をそこで行なっていたために赤字になった、は、県民の安全保障(いざというときのための高度な医療を準備)のためのコストとして捉えたら「黒字でないから駄目」とは軽くは言えないように思います(もちろんとんでもない巨額の赤字は駄目かもしれませんが)。

 ところで……公的な行政機関や出先機関で「黒字」の所って、あるのでしょうか。現金の流れだけ見たら税務署は「黒字」ですが、あれは「税務署の収入」ではありません。
 「赤字の消防署」「赤字の義務教育」「議会が赤字なのは問題だ」って、ふつう言いませんよね? 「自衛隊の赤字は問題だ」とも言いません(そもそも消防署や学校や自衛隊が黒字か赤字かは問題になりましたっけ?)。道路やダムはお金を使えば使うほど出先機関は本省から褒められます。ああそれなのにそれなのに、公的病院は黒字にしないと怒られるのです。

 なぜ?
 「現金収入」があるからかな? だけど、「安全保障」の分まで赤字・黒字で判定して良いのでしょうか?


 アメリカの保険制度では、病院が黒字であることだけではなくて保険会社も黒字であることが求められます。医療費が高くなるわけです。おっと、実は病院の経営状態はどうでも良いのかもしれません。保険会社から見たら病院なんか取り替えのきくコマでしかないでしょうから。「赤字の自治体病院なんかどんどん潰せばいい」という人から見ても、病院はきっと何かの(おそらくは自分の政治的な主張を実現するための)コマでしかないのでしょうね。


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 もちろん炭疽菌も炭疽(炭疽症)も「現役」です(獣医の世界では重要な病気でしょう)。ただ、19世紀末にコッホが炭疽菌が炭疽の病原菌であることを証明しパスツールがワクチンを開発してくれたおかげで、すっかり「過去の病気」のイメージになっていました。少なくとも私は、大学を卒業した後はきれいさっぱりこいつらのことは忘れていました。
 それがまたテロで“復活”してきたものですから、私は目をぱちくりです。炭疽菌だけではなくて、天然痘やペスト、ボツリヌスなどがテロ兵器として考えられるという厚労省の通達 http://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1015-4.html が出ましたが、営々と積み上げられてきた近代医学の先達の努力の集積が、テロリストによって一挙に否定されてしまったようで、私は当時なんだかとっても不愉快な気分を味わいましたっけ。

 そういえば当時日本のある病院では「炭疽菌対応マニュアル」を作れという病院上層部からの命令が出されました。「もし炭疽菌入りの封筒がこの病院に届けられたら、一体どうするんだ?」と。
 あれはアメリカのテロで、日本で起きるとしてもここに真っ先に届けられるとは確率的に思えないけれど、誰かに激しく恨まれるような何か身に覚えでもあるのかな、とそこの院内感染対策委員長は思いました。ところが求められているのは、病気の対策というよりテロ対策です(感染した人は抗生物質で治療するしかないし、人→人の感染は考えなくて良いのですから)。テロ対策は院内感染対策の範疇を超えています、というか、そういった病院全体の危機管理システムに関して考えるべきは病院の上層部のお仕事のはず。
 しかもそんな封筒が見つかったら、院内マニュアルよりも警察と保健所の命令の方が優先になるのは目に見えています。ちょっと想像してみてください。院内にいる殺気だった警官に向かって「院内マニュアルではそこは立ち入り禁止です」と医者が申し渡して、言うことを聞いてくれると思います? 保健所が「こうしろ、ああしろ」と言うのに対して「院内マニュアルではそうなっていません」と抵抗できると思います?
 ということで、結局院内マニュアルは作られませんでした。

 で、今。テロの記憶もずいぶん遠くに行ってしまいましたが、「炭疽菌」について、皆さんはちゃんと記憶を保持していますか? それともまた「死語」になってますか?

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2008.04.28 06:56 |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  その他(一般)  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 2

舌先三寸 

 「来年3月までに、未確認の年金記録は確実に名寄せを完了させます」と誰かさんが言ったのは去年の参院選挙の前でしたね。で、今はもうすぐ4月もおわり。「名寄せが完了している」と思う人、手を挙げて〜。

 「勤務医の待遇を改善するために診療報酬を改定する」と誰かさんが言ったのは、ほんのちょっと前のこと。まだ始まったばかりですからめきめきと効果は出てはいないでしょうが、それでも今回の診療報酬改定によって待遇が改善される気配がたしかにある、と思う勤務医の人、手を挙げて〜。
 ちなみに、私が勤務する施設は、昨年よりも今年度は減収の予定です(ベッドはほとんどフル回転なので、診療報酬改定の影響が非常に計算しやすいの)。さて、私の待遇が“改善”されることを厚生労働省に期待していいんですかねぇ。
 ……まさか、ね。

 来年の今頃、もし覚えていたら、またみなさんに挙手を求めてみようかな〜。

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2008.03.30 06:48 |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 2

診療縮小

 大学からの派遣中止のため、外来時間を短縮したり時間外救急を減らしたり、などの診療体制縮小をする病院が近隣にも出ていました。他人事とか対岸の火事ではなくて、いつ我が事になるかもしれないものと思っていましたが、ついにこちらにもその波が来てしまいました。
 ぎりぎりの折衝が続いていることは漏れ聞いていたので、いくらか覚悟はしていたのですが、やはりショックです。

 さて、現有人員でなんとか仕事を回すのは……無理です。
 私個人は、医者としての仕事だけではなくて、組織運営の仕事もいくつか抱えているためあまり余裕がありませんが、それでも当直を増やしたり臨時で外来に行ったりはできます。病棟の受け持ちも少しは増やせます。しかし、皆がそうやってちょっとずつできることを持ち寄ってもやはり限界はあるわけで、とうとう外来を半日分減らすしかない、という結論になりました。(外来全廃までもが議論の俎上に載りました。論理的にはこれがけっこう“良い”解決法ではあったのですが、さすがにそこまで“過激”にはできないだろう、ということで……)


 コンビニ医療推進派の「病院は24時間コンビニ診療をするべきだ」との主張には逆らう動きになってしまいましたが、もうどうしようもないのです。貼り紙を貼ってバイトを募集したら解決する、だったら良いんですけどねえ(でも、コンビニエンス・ストアでも、貼り紙一枚ですべてが解決することなんてないですよね。おそらく店主にとんでもない負担がかかっているはず)

 「何とかするべきだ」と言う人にはぜひ来ていただいて手伝いをしてもらいたい気分です。「誰かが何とかするべきだ」よりも「私に何ができる?」の方がよほど嬉しいことばと態度ですから。(少なくとも医局の人間が一様に「この状態を乗り切る何か良いアイデアはないか」「自分に何ができるか」の方向で皆が考えていたのが、救いでした。この方向にある限り、なんとか乗り切れるでしょう)

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2008.03.23 07:17 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 2

五時間待って五分診療

 以前「3時間待って3分診療」で述べたことが本当に現実化しそうです。

 4月から始まる新しい「外来管理加算」ですが、これまでは時間要件はありませんでしたが、来年度からは概ね5分間外来診療をしたら算定できるのだそうです(それ以外にも、診察しろ・質問しろ・話をしろ・話の内容はコレコレシカジカ……何を喋るべきかの“台本”までついていますが……読んでいて「こんなの普段やっていることじゃないか」と私はひどくバカにされたような気がしました)。
 私の外来は(暇で、私が話好きだからか)ほとんどの人で基本的に5分は使っていますから、もし真面目に全員に算定したら増収になりますが、そんなのはおそらく例外的で、日本のほとんどの外来では減収となるのではないでしょうか。で、それを少しでも取り返そうとする医者がいたら、それまでの「三時間待って三分診療」が「五時間待って五分診療」になります(計算が合っているかな?)。

 さて、4月から外来で、患者の顔ではなくて時計の方ばかり気にしている医者がいたら、ご注意を。患者に集中できていませんから。


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2008.03.17 07:03 |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 0

病院のTQM

 先日職場でTQMの発表会がありました。あちこちの部門から全部で20くらいの演題が集まって、いっぺんにやったらものすごく長くなりますから、定時後に数題ずつ数日かけての発表会です。で、私はその全部を聞きました。真面目でしょ? 白状すると、審査委員(点数つけて、最優秀とか優秀とかを選ぶ係)の一員なので、参加せざるを得なかったのです(一日欠席しましたが、その日の分は出張から帰ってきてからビデオで審査しました)。

※TQM(Total Quality Management)とは、企業活動全般にわたる「質」の改善手段のことです。トヨタの「カイゼン」が有名ですね。昔はTQCと言っていましたが、1996年に日本科学技術連盟がTQMに改名しています。

 「プロセス指向」とか「標準化」の前に「まず各職場の中のチームでやってみる」段階ですから発表内容は玉石混淆。テーマも手法も結果の評価もバラバラです。「これはTか?」「Qはどこへ行ったんだ」「Mができてないよ」などとぶつぶつ言いながら発表を見ていましたが、それでも意外なところから大変良い発表があったりして、退屈はしませんでした。

 偉そうなことを言っていますが、私自身は、TQMに基づく病院安全管理者の資格講習を受けたことくらいしかこの方面には関わりを持っていないので、馬脚を現さないように詳しいことは述べません。(ちなみに私は、馬脚は隠しても馬鹿面は晒しております)


 「問題点を抽出する」→「対策を考える」→「やってみる」→「結果を評価する」→「新たな対策を考える」、の現場でのサイクルを上手く回しているチームを見ていて、私は自分の仕事を連想しました。私はカルテをPOS/SOAPシステム(もどき)で書いているので自分のやっていることが客観的にわかることがあるのですが、そこでもやっていることは「診察」→「診断」→「治療方針の決定」→「治療」→「評価」→「診断の見直し」→「治療方針の検討」のサイクルです。大切なのは「サイクルを回す(回し続ける)こと(姿勢と動き)」なのです。
 TQMというとついつい製造現場のもの、と思ってしまいそうですが、やっている「こと」そのものではなくてそれをやる基本的な「姿勢」が大切なのですから、各部門でTQMを行うことを延長して病院でのチーム医療に応用さえできれば、TQMと病院とは意外に相性がよいものと言えるかもしれません。

※参考図書:『医療の質用語辞典』飯田修平・飯塚悦功・棟近雅彦 監修、日本規格協会、2005年(07年2刷)、3000円(税別)

※社長が「お前らが頑張れ。おれは何もしないけれど、その成果だけはいただく」という姿勢だったら、その企業のカイゼン運動は成功しません。“上”が率先して改善に取り組む姿勢を見せるからこそ全社的な取り組みになるのです。その運動が成功するかどうかは、全社的な取り組みになってから“後”のことです。
 では、日本の医療をカイゼンするために率先するべき“上”は誰でしょうか。そして、その“上”の姿勢は? 率先して何かをカイゼンしていますか?


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2008.01.14 09:58 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 3

救急崩壊は初期症状

 今日の朝日新聞一面トップは「救急撤退235病院」です。地域の中核的存在である二次救急病院の減少が加速している(2年間で5.6%。2004年以前よりも減少率が高まっている)とのこと。
 厚生労働省は喜んでいるでしょうね。「医療費抑制」のために「病院減らし」をさせようとこれまでこつこつと努力していたのが、やっと“成果”となって目に見えるようになったのですから。

※「こつこつの努力」の例
・医療費削減改定をねばり強く繰り返す(さらに、救急などが絶対“ペイ”しないように健康保険制度を作っておく)
・地域医療計画での病床規制
・医学部定員5%削減
・看護師の「7対1」
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070114ik05.htm
 ……おや、ちょうど1年前の記事ですね。つまり看護師を大きな病院に集中することによって中小病院を人手不足にしさらに保険の支払いを減らして経営を苦しくするための政策です。

 さらに「平成の大合併」がそろそろ効いてくる頃です。町がいくつか合併して新しい市になった場合、それぞれが町立病院や町立診療所を持っていたら「市立病院」「市立診療所」が複数存在することになります。これは当然“整理”の対象になるでしょう。(総務省が病院減らしのために合併推進をした、とまでは思いませんが、厚労省への追い風であったことは確か)

 問題は、この「救急崩壊」が「医療崩壊」の“初期症状”でしかないということです。体全体が弱ったら一番弱い所から目立つ症状が出てくるように、医療の中でも一番無理をしていて不採算になり易いところに“症状”が出てきているだけで、まだまだ別の“症状”が出番を待っているはずです。「痛みを伴う構造改革」に賛成していた人たちはその「痛み」ですから耐えることはできるでしょうが、私はあんまり痛いのは好きじゃないなあ。「終わりの始まり」でなければいいんですけどねえ。(というか、厚労省はこの「痛み」の先にどんな明るい未来が待っているのかを明示した方が良いんじゃないです? 明確なビジョンを持っているのなら、ですが)

 そうそう、「こつこつ努力」にマスコミ操作もあったのですが……これは最近ほころびが出始めましたね。一方的に医療者を責めるのではなくて「国の政策にも問題」と書かれることが少しですが増えてきていますから。
 国民にもメディア・リテラシーを持った人がもっと増えてくれたら嬉しいなあ。

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2008.01.13 12:53 |  診療  |  開業 / 病院経営  |  医療制度 / 行政  |  おかだ  | 推薦数 : 1

緩和ケア病床、都市圏で不足

 日本政策投資銀行のまとめでは、日本の緩和ケア病棟のベッド数は、これから特に都市圏で不足が深刻化するのだそうです。
http://www.asahi.com/health/news/TKY200801120216.html

 私がこの記事から感じた問題は三つあります。
1)日本における「緩和ケア病棟」の認知度はどのくらいでしょうか。その特性や現在どこにどのくらいあるかを街頭インタビューしたら、どの程度の“正解”が返ってくるでしょうか? 私は認知度は非常に低い、と感じているので、その街頭インタビューではまずまともな答は返ってこないと予想します。そもそも急性期病棟と療養病棟、外科と整形外科の区別さえきちんと答えられない人がごろごろいる現状で、緩和ケア病棟がどうしたこうしたと言っても「それがどうした」と返されるのがオチでしょう。我が身の問題にならない限り「知らないこと」には冷淡な人が多いですからねえ。
 ……で、こういったことの広報・啓発活動について新聞は「医療側のさらなる努力が求められる」なんて言うのですが、広報が得意なのは医者よりマスコミの方じゃありません? なぜやらないんだろう。社会的意義が感じられないから? それともまさか、広告費を出さなきゃ、駄目?

2)日本では医療法に基づく地域医療計画で病床規制が行われています。緩和ケア病棟がそれの例外なのだったら良いのですが、そうでなかったら「増やすべきだ」「はい、そうしましょう」とはなりません。
 また、「ベッドが足りない」からといって、建物を造ってベッドを入れればそれで“解決”ではありません。緩和ケア病棟には多彩な人材が必要です。医師だけでも、単に「痛みの専門家」がいれば良いというわけにはいきません。全身を総合的に診る必要がありますから、総合医と各専門医のネットワークが必要です。医師以外でも、看護・介護・心理・ケースワーカー・リハビリ……それだけのバラエティと人数をどこから“調達”してきます? そしてその人件費はどこから捻出するのでしょう? 今の保険制度で可能でしょうか。

3)もしめでたく増床できたとして、その“後”はどうします? なんだかこの記事を書いた人は「団塊の世代がそのまま癌多発年齢に突入して緩和病床が不足する」ということばかり心配しているようですが、ではその団塊の世代が“その時期”を過ぎてしまったら、がらがらの緩和病床がそこにもここにも、となるでしょう。そのときその施設と人員をどう転用するのかも考えておかないと、また新たな「問題」が発生することになります。
 ……新聞は記事のネタができて嬉しいかもしれませんけれどね。

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