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 急に寒くなりました。みなさん、お風邪など召されませんように。
 前世紀末の、やはり初冬の日のことを思い出しました。


 「もうすぐ糖尿病の人には辛いシーズンになりますけど、なんとか乗り切ってくださいね」

「ええ、忘年会は今年は数を絞ることにしました」

「Gさんはこれまで頑張ってデータがすごく良くなってますから、大きな声では言えませんが少々だったら大目に見られると思います。ただし、少々ですよ、多少の多じゃないです」

「はははは」

「それと、忘年会のシーズンが済んだら、クリスマスにお正月ですね」

「クリスマスはどうでもいいんですけど、去年までのように寝正月で朝から酒、とやってはいけないわけですね」

「いけない、とは言いませんけど、やったら病気のデータが正直に反応してくれるでしょうね」

「おかだ先生は厳しいなあ」

「私が厳しいんじゃなくて、病気が厳しいんです。私はそれを日本語に翻訳しているだけ」

といった会話をのほほんと外来でするシーズンとなったときのことです。受付から外線電話が回されてきました。「○○テレビから急ぎのお電話です。内科のドクターをお願いしたい、ということです」

 私が電話に出ると「○○テレビです。忘年会のシーズンですけど、どうして飲み過ぎたら二日酔いになるんですか?」

 普通私がよその会社などに電話したときには、まず自分の所属と名前を名乗り、それから相手を確認し、忙しくないか今時間が何分くらいもらえるかどうかを確かめ、そして用件に入ります。それが社会的な常識だと思っています。TV局では時間が惜しいのか、それとも忘年会が始まろうとする季節になってからこんな情報を集めるとはよほど企画に困っているのか、単なる礼儀知らずか、それが普段の習慣なのか、挨拶抜きで本題に入ってくれました。

 私は、基本的に礼儀正しい人に対しては礼儀正しく振る舞います。無礼な人にはそれなりです。一応プロですから患者さんに対してはもちろん無礼に振る舞ったりはしませんが、“商売以外”のところではきわめて単純な原則で動いています。ですから「おかだは礼儀正しい人だ」「いやいや無礼だ」、と人によっては評価が大きく分かれます。不思議ですねえ、私は一人で対人関係の原則も一つなのですが。

 これは明らかに「仕事」でありませんし(仕事だとしても、その依頼を受けてはいません)、愚問には愚答がよろしいでしょう。「それはアルコール代謝についての知識が必要ですが、どの程度のレベルの回答が必要かで、説明の時間は五分と一時間の間のどこかになるでしょうが?」

「かまいません。でも、できるだけ簡単に、かつ詳しく教えてください」
 ……簡単に、かつ、詳しく?

「そちらがかまわなくても、こちらがかまいます。今仕事中ですから。本当に詳しく知りたければ、図書館に行くか本屋で参考書を買ってくるかネットで検索かけるか、で、ご自分でお調べ下さい。キーワードは……」

「そんな暇がないから電話しているんです!」

「こちらにもそんな暇はありません。キーワードは、アルコール代謝とアルデヒド、それから脱水と低血糖です。では失礼します」



 忙しい中、親切にキーワードを教えてあげたのに、お礼の言葉もさようならのご挨拶もありませんでした。私はマスコミに対する評価を(さらに)1ポイント下げ、また仕事に戻りました。

 なおこれは、いつもと違って、ほとんど丸ごと、実話です。



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 私は時々無性にラムレーズンのアイスクリームが食べたくなります。先日も食べたくなって「たしか冷凍庫にミニカップが一つあったはず」と扉を開けてみたら……ありません。ぶうぶう言っていたら家内が「じゃあ、作ってあげる」。干しぶどうをちょいともどしてからラム酒を振りかけ、それをバニラアイスにどさっと乗せて「はい、ラムレーズンのアイスクリーム」。
 「ふだんと味が違う。これではゾロ(ジェネリック医薬品の俗称)のラムレーズンアイス……いや、ラム“と”レーズン“と”アイスクリームだ」とぶつぶつ言いながら、それでも結局ぺろりと美味しく頂きました。化学的には同じでしょうし、お腹の中に入ってしまえばやっぱり同じようなものですよね、たぶん。

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 日本で使われる医薬品は「日本薬局方」に収載されています。日本では医薬に関する「聖典」と言ってもよいもので、これに収載されていないものは原則として私は処方に使えません。
 ところで、面白いニュースがありました。ゲンダイネットの「コーヒー飲んで“いい人・悪い人”」に「1951年まではコーヒーは日本薬局方に収載されていた = コーヒーは“医薬品”だった」と書いてあるのです。
 もちろんコーヒーには主にカフェインによる“薬理作用”がありますから「薬」と言ってもよいかもしれませんし、そもそも嗜好品が「医薬品」というのに私は抵抗がありません。歴史を見ればたとえば「茶」ももとは「薬」扱いでした(鎌倉時代の「喫茶養生記」(栄西))。(ついでですが、現在の漢方薬でも「川芎茶調散」には「お茶」が生薬として含まれています。

 ……さすがにコーヒーは漢方薬には入っていませんが(少なくとも私の見聞の範囲内では)。)


 そういえば学生の時に「砂糖は薬局方に含まれているから処方箋で処方できる」と聞いた覚えがあったのを思い出して、ちょっと薬局方の目次を眺めてみました。すると……これは面白い。嗜好品というより、いろんな「食品」が「医薬品」として並んでいるではありませんか。
 たとえば油が各種あります。オレンジ油、ゴマ油、ダイズ油、ツバキ油、トウモロコシ油、チンク油、テレピン油、ナタネ油、ヒマシ油、加香ヒマシ油(オレンジ油やハッカ油が加えてあるようです)、ヤシ油、ユーカリ油、ラッカセイ油……いやあ、油屋が開業できそうです。チンク油、テレピン油、ヒマシ油はあまり飲みたいとは思いませんしツバキ油は髪の毛に塗るのだったと思いますが、それ以外はそのまま料理に使えそうです。
 「脂」だったら、牛脂と豚脂も薬局方にちゃんとあります。
 味付けには、白糖と塩化ナトリウムとサッカリンが使えます。エタノールとブドウ酒は……料理の風味付けよりもキッチンドリンカーに喜ばれるかな?
 ゼラチンはおそらくゼラチンカプセルの材料として収載されているのでしょうが、これもなんとか料理に使えそう。わからないのが石油ベンジンです。料理の燃料にでも使いましょうか。

 なお上記は西洋薬のコーナーの目次から拾ったもので、生薬の方にはもっと「食品」として使えそうなものが並んでいます。アロエ、カンテン、ケイヒ(シナモン)、米デンプン、サフラン、トウガラシ……まだまだあります。もし興味を持たれた方は「日本薬局方」をじっくりご覧下さい。(本当は「ご笑覧ください」と書きたいのですが、“自分の作品”ではないから遠慮します。笑うのはパーソナルにこっそりとどうぞ)


 a recipe bookは普通は料理の本です。でもrecipeには「処方箋」の意味もあります。西洋でも中国と同様、昔は文字通り「医食同源」だったのかもしれません。病気を治すためには贅沢は言わず、使えるものは何でも使っていたでしょうから。


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2008.07.17 06:48 |  生活 / くらし  |  グルメ / お酒  |  その他(一般)  |  おかだ  | 推薦数 : 2

ビタミンC

 「100グラムあたりでビタミンCが非常に多く含まれている」ことの引き合いによく出されるのがレモンやパセリですが、この両者にはビタミンC含有以外にも大きな共通点があります。

 

  どちらも、100gの重さを量ってばりばり食べようとする人は(あまり)いません。

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2008.05.31 06:58 |  生活 / くらし  |  グルメ / お酒  |  おかだ  | 推薦数 : 0

グルメごっこ 

 先日回転すし屋で食べていたら、妙に声高にしゃべっている3人連れがいました。必要以上の音量は、正直言って耳障りです。すし屋のタバコの煙は鼻につきますが、騒音は耳につきます。どちらの穴も蓋ができないので困ります。しかも内容がなんというか……「やっぱりすしはトロだよな」「そうそう、大トロ大トロ。えっ、ここ中トロしかないのぉ?」「ウニも美味いなあ、ウニウニ」「イクラ食べたい。あ、鯛もね。やっぱりすしは……」
 ……あのう、ここは回転すし。どう見てもロボットが握ったすし飯の上に本わさび様のわさびを塗って冷凍の切り身が乗っかっている店でっせ。グルメ気取りをしたいのだったら、回転しないお店に行ったら?と言いたくなります。回転しない鮨屋で「トロトロトロトロ」「イクライクライクライクラ」と連呼する客が喜ばれるかどうかは知りませんが。高級な店だったら野暮な客と認定されることはおそらく確実……おっと、「お前たちは野暮だ」と言う(言いたくなる)こと自体が野暮ですね。

 ……しかし、ウナギとトロの間に鯛やヒラメを食って、白身の味がわかるのかなあ?

 「好きなもの」でも「美味いもの」でもなくて(回転しない店だったら)とても高いネタを回転する店で安く食って満腹したいだけなのかなあ。だけど、そのお得感で本当に満足したのなら最初から騒ぐ必要もないでしょう(ふつう、満足している人間は騒ぎません)。では彼らはどんな「聴衆」を想定して大声を出していたのでしょう? 私はその深層心理の方には興味があります。


 ま、変なものを聞かされたけれど、すしネタがこうしてブログのネタにできたから、結果オーライ!

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 「コレステロールを下げる」がウリのマヨネーズタイプの厚生労働省認可の特定保健用食品のサンプルが懸賞で当たったので、食べてみました。薄味のマヨネーズといった感じで、不味くはありません。特段美味くもありませんが、私はマヨラーではないからそのへんの区別がつかないだけかもしれません。

 食べる方では楽しめませんでしたが、同封のパンフレットは楽しめました。


 まずは、なぜコレステロールが下がるのか、のメカニズムが書いてあります(というか、これがキモですよね)。成分中の「植物ステロールエステル」が腸管内でのコレステロール吸収を阻害するのだそうです。

 ……えっと、どこからツッコもうかな。

 作用機序(粘膜表面で働くのか、一度吸収されてから粘膜の“内側”から働くのか)が詳しく記載されていません。それから、たぶん用量依存性があると思いますが、何ミリグラムの植物ステロールエステルを摂取したら、何ミリグラムのコレステロール吸収を阻害できるのでしょう。それと、一日何回摂取する必要があるのでしょう? そのへんの記載が一切ありません。

 それと、20年前には「コレステロールを食べるな」と食事指導していましたが、最近は体内合成でどんどん作られる(だからHMG-CoA還元酵素阻害薬(体内でのコレステロール合成を阻害する薬)がよく効く)から、食事指導はほどほどに、の雰囲気になっています。それを今さら「食餌療法」を前面に押し出すとは、時代に“逆行”していませんか(苦笑)。まあ、最近の日本人はアメリカ人以上にコレステロールを食べているそうですから、間違っていると主張するつもりはありませんが。

 結局パンフレットが言っていることは「科学的」には間違ってはいないのでしょうが……合成と吸収は生体ではダイナミックなバランスの上にあるはずです。どちらか一方だけいじってもそれに応じてホメオスターシスが働いてバランスが傾いたら、結局なんのこっちゃ、になりませんかねえ。(吸収を押さえたら“バランス”を取るために体内での合成が増えちゃった、とか) それと、コレステロールの吸収を阻害すると、そのついでに、脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)の吸収が落ちる、なんてことはないんでしょうね。(そうそう、国試の前に私は「脂溶性ビタミンはこの4つだけ(DAKE)」と覚えました)


 パンフレットでは次にコレステロールの適正値についての記載があります。初っぱなは「低すぎず、高すぎず適正に保つことが大切です」と赤い字で目立つように書いてあります。

 ……あれれ、本製品の特徴は「コレステロールを下げること」でしたよね。良いのかな?

 そうそう、学生時代に受けた講義では「コレステロールが高くなれば、心筋梗塞の確率が高まる。しかし、コレステロールが低くなりすぎたらこんどは脳出血のリスクが高まる」と統計のグラフを見せられて教わった覚えがあります。30年前のことですから、アヤシイ記憶ではありますが。

 さらに、「体にとって余分なコレステロールを回収し、肝臓に運ぶ善玉(HDL)コレステロールと、体の各組織に必要なコレステロールを運ぶ悪玉(LDL)コレステロール」と書いてあります。え〜、日本語にツッコミます。「善玉」と「悪玉」……その働きを表現するのになんだか日本語としてとっても違和感が……「善玉」が増加している状態は、すなわち体内は“不健康”になっていることを意味するわけで、「悪玉」は体に必要なお仕事をしているわけで……もちろん「余分なコレステロール」がたっぷりあるのにそれを回収する「善玉」が少なかったらそれは過剰なコレステロールが“現場"で悪さをするでしょうから「善玉」が多いに越したことはないのですが……



 コレステロールを「下げる」単機能だけではなくて、バランス重視の「適正範囲に収める」“良い”特保が出てこないものですかねえ。それも、食べる人の血圧や血糖値や腹囲に合わせて。

 「一つのものを食べるだけで理想のメタボリズム」だなんて、ちょっと都合が良すぎる?



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2008.01.04 17:29 |  生活 / くらし  |  グルメ / お酒  |  その他(一般)  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 0

○○牛

 子年ですが、牛のお話です。(厳密には「子」に対応するのは「丑」ですが、そこのところはお許しを)

 TVのお正月番組で、芸能人が「超一流と三流を見分ける」ものがありました。たとえば超高級な楽器の演奏と練習用楽器のものとを聞き分けたり、超高級の松阪牛と並のものを目隠し状態で口に入れられて味で見分けたり(目では見ていませんが)、というものです。で、ボロボロ間違えるのを見て視聴者が楽しむという趣向です。
 本を読みながらそれを横目で見ていて、昨年の牛肉偽装事件を思い出しました。あの偽装をした企業に限らず、日本各所で「○○牛」とか「××牛」とかブランドが麗々しく飾られていますが、そこまで味の違いがわかるものなんでしょうか。なにしろ、ふだん高級牛肉を食べ慣れているはずの有名タレントでさえ、特別な松阪牛とそのへんの並を間違えるんですよ。それどころか、ミートホープ事件では、日本人の多くは牛の挽肉と合い挽きの区別もつけられないのが現実だったわけです。漫画「美味しんぼ」のグルメたちのように一口で牛の年齢やら産地などを当てるような人は、実際にはどのくらい日本にいるのかな。自信がある人を集めて、有名な産地の牛肉を数十種類ならべて次々食べて産地を当てる、なんて番組をやってみてもらいたいものです。
 同じ「○○牛」でも、牛舎の位置や日当たり温度湿度・愛情のかけ方・餌の種類と量・水の種類と量・運動量・遺伝・健康状態などで、できあがった“製品”の質はバラバラのはずです。大量生産の工業製品でさえ当たりはずれがあるんですよ。まして「生き物」がそんなに均一な品質になるとはちょっと思えません(全部クローン牛だったら、もうちょっと平準化できるでしょうけれど、それでも環境や育て方で差が生じるはずです)。また、料理によってもそれに向いた牛(肉質)・向いていない牛があるでしょう。(ステーキに向いた○○牛が牛丼にも向いているとは私には思えません。さらについでに言うと、レアステーキに向いている肉はウエルダンにも向いていますかね?)
 ……となると、「○○牛」という表示は一体何を主張し、何を保証しているのでしょうか?
 もしかして、消費者は、牛肉(モノ)ではなくて「ブランドという情報」をせっせと食べて満足して(満足させられて)いる、ということなのかな。肉で満腹、能書きで満足。
 私は美味しい料理を食べたら、それだけで幸福感に満たされる単純な人間ですから、上乗せでさらに「情報」を詰め込む必要を感じないのですが、「さらにもっともっと幸福になりたい」と望む人が多いということなんでしょうか。それとも、意地悪な見方をすると、料理人が自分の腕だけで“勝負”することに自信がなくて「情報」の付加価値の助けを借りようとしているのかな。

 私が和牛で有名な中山間地にいたとき(全国コンクールで優勝牛をよく出しているけれど、名前は全国的ではない地方です)、「ある程度育てたところで某有名産地(営業妨害になってはいけませんから、特に名を秘します)から買い付けに来て、そこで最後の“仕上げ”をして、市場では「○○牛」のブランドで売っているんだ」という話を生産農家の人から聞かされました。巨大清酒メーカーの桶買いと構造は同じですね。だから私はますます「牛のブランドって、何?」と思うのかもしれません。あるいは、「それを味わい分ける舌」を私が持たないことから負け惜しみで「ブランドがどうした」と言っているだけなのかもしれませんが。

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