| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 |
固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
上杉謙信が武田信玄に塩を送った、というエピソードを持ち出すまでもなく、日本では塩は人に必須のものとして扱われていました。日本中に「塩」がついた地名がありますが、海岸沿いのものはともかく山の中のものはおそらく塩の輸送に関連したものではないか、と私は想像しています。たとえば「塩尻」は「塩を大規模輸送する終点」の意味ではないか、とか。
体の中でも塩は輸送されています。たとえば腎臓では、血液から濾された体液をそのまま尿として排出したら大切なものが大量に失われてしまいますから、尿細管で「再吸収」という回収作業が行なわれます。そこで回収される代表的なものが、ブドウ糖や水分、そしてミネラル(つまりは塩分)です。体内環境を維持するために、塩分はせっせと輸送されているのです。
ナトリウムイオンの再吸収に関与するホルモンとしては、副腎皮質から分泌されるアルドステロンが有名です。これは、レニン→アンジオテンシン→アルドステロンの順番でホルモンが連鎖反応をして、尿細管でのナトリウムイオン再吸収が活発になり、最終的に体内にナトリウムを貯留させる方向に動きます。塩分は水を引きますから結果として起きるのが高血圧。そこでその“連鎖反応”をブロックさせる薬として、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)やアンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)が高血圧に対して使われています。
さて、「ナトリウムイオンの再吸収」と言いましたが、得るものがあれば失うものもあります。尿細管でナトリウムイオンの再吸収を担当しているのは「ナトリウムチャンネル」ですが、ナトリウムを輸送するときにその“身代わり”として、カリウムイオンを反対方向に輸送しています。ということは、ナトリウムイオンの体内への輸送量が増えれば増えるほど体内のカリウムイオンが減少することになります。細胞内にはカリウムイオンがたっぷり含まれているので、血液中のカリウムイオンが減少しても細胞内から補給することは可能ですが、あまり補給しすぎて細胞内のカリウムが減ってしまうと、簡単に言えば細胞の電気活動が落ちてしまいます(細胞内外のイオンの不均衡が、細胞の電気活動のエネルギー源となっています)。それは困るのである程度で細胞内からの供給が途絶え、血液中のカリウムが減ってしまうことになります。低カリウム血症と呼びますが、その症状としては、不整脈・筋力低下・神経機能の低下・精神症状など。「周期性四肢麻痺」という病気がありますが、これもカリウムイオンが突然低下することによって全身の脱力が起きる病気です(こちらの原因は、アルドステロン系ではなくて甲状腺が多いそうです)。
「偽アルドステロン症」というけったいな名前の病気もあります。これは、いかにもアルドステロンが悪さをしているように見えるのにいくら調べてもアルドステロンの値には異常が見つからない病態です。その原因の代表が「漢方薬」。日本で売られている漢方薬の多くに含まれている「甘草」を大量・長期に摂取を続けると、低カリウム血症が起きます。漢方薬が一種類の単独処方だったらまず心配ありませんが、複数の漢方薬をいっぺんに服用してそのそれぞれに甘草が含まれていたら、容量オーバーになる確率が高くなります。おっと、単独の漢方薬でも「甘草湯」は注意が必要です。激しい喉の痛みには大変よい薬ですが、なにせ「甘草だけ」で構成されている漢方薬ですから、普通では入らない量の甘草が体内に入ってしまいます。名前は「甘」なのに塩分に関与するとは、まったくけったいな生薬ですね。味はちょっと甘くてそれなりに美味しいのですが(ですから甘草は昔は(というか今も)甘味料としても用いられています)。
参考図書、というか、サイドメニューとして……
『塩の事典』橋本壽夫 著、 東京堂出版、2009年、2500円(税別)
人気ブログランキングに参加中です。励みになりますので、クリックをよろしく。
固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)