朝食に美味しい匂いをぷんぷんさせるパイナップルが一切れ登場したのを見て、子供時代に初めて「生のパイナップル」がわが家に登場したときのことを思い出しました。
それまでわが家で「パイナップル」といえば「缶詰」でしたから、あのごつごつの表皮の塊がごろんと転がっているのはそれだけでインパクトがありました。で、お袋は「どうやるの?」とついていた説明書と首っ引き。頭とお尻を切って皮をむいて割って芯を取って……ところが皮の厚みをどのくらいにするのかもわかりません。子供から見たらその作業自体がわくわくする“イベント”でしたっけ。で、「最終産物」が、缶詰でおなじみのリング状でないのも新鮮でした。
で、食べてみて驚きました。それまで食べていた「パイナップル」は、つまりは缶詰のシロップの味だったんだな、と。当時桃や蜜柑は缶詰も生も両方を食べていたから、そこから「缶詰の味(シロップの味)」というのを一般化しておけば良かったのですが、まあ子供のことですから。
そういえば当時は苺も「砂糖とミルクの味」でした。コンデンスミルクか、普通のミルクと砂糖をかけて食べるのが普通のやり方。それから何年も後にグレープフルーツに出会ったときもやはり「砂糖をかけて食べる」のが普通でした。今はどれもそのままいただきますが、時には「昔の味」が懐かしくなることがあります。子供時代の味覚はいくつになっても体のどこかに残っているようです。
日本人は昔から甘いものが好きだったようですが(フィクションですが『芋粥』(芥川龍之介)を思い出します。あ、清少納言も「あてなるもの」として「削り氷にあまづら入れて新しき金まりに入れたる」を挙げていましたっけ)、その「甘さ」を強烈に味わうことができる砂糖が日本で大人気になったのは、江戸時代からのようです。江戸時代のお菓子のレシピ集(*1)(*2)には様々な砂糖を使用したお菓子が登場します。で、そのなかに「果物(など)の砂糖漬け」のコーナーも。ここに登場するラインナップはすごいですよ。「とりあえず何でも砂糖漬けにしてみました」なのかな、と言いたくなるくらい。たとえば、生姜・金柑・瓜・西瓜。うん、このへんは大丈夫。味も大体見当がつきます。まだまだ出るよ。茄子・蓮根・牛蒡・人参・百合根・空豆・独活……ふむ? 料理の天ぷらや煮物じゃないですよ。シロップで煮た砂糖漬けの話です。まだまだ出るよ。豆腐に椎茸。ちょっと私は逃げ腰になります。そしてとどめは、松の緑・麦門冬。咳に使う漢方薬である麦門冬湯はほんのり甘いから、きっと麦門冬そのものも不味いものではないでしょう。だけど生薬を砂糖漬けにしてばりばり食って良いのかなあ。あ、松の緑(松の若葉?)についてはノーコメントです。
参考図書
*1)『近世菓子製法書集成(1)』鈴木晋一・松本仲子 編訳注、平凡社、2003年、3000円(税別)
「古今名物御前菓子秘伝抄」(享保3年(1718))「古今名物御前菓子図式」(宝暦11年(1761))「餅菓子即席手製集」(文化2年(1805))「菓子話船橋」(天保11年(1840))が収載されています。
*2)『近世菓子製法書集成(2)』鈴木晋一・松本仲子 編訳注、平凡社、2003年、3000円(税別)
「南蛮料理書」(年代不詳)「鼎左秘録」(嘉永5年(1852))「古今新製名菓秘録」(文久2年(1862))が収載されています。
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昔の果物って今ほど甘くなかったからね。
トマトにも砂糖かけて食べてた時がありました。
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