先に白状しておきますが、今回の記事は以前(2009年9月29日)に書いた「ビタミンK」とけっこう重なっています。もちろん新しい部分もありますし、かぶるところも違う書き方をしますので、ご安心を。え、誰もそんな前の記事は覚えてない?
本文の前に一つ質問。納豆がスーパーの棚からどっと消えたことがありましたね。それは何年前で、その理由は何でしたっけ?
私が納豆でまず想起するのはビタミンKです。納豆にはビタミンKが大量に含まれているのです。
世間には「ビタミンKは血液を凝固させる」と信じている人がいるそうです。それは不正確な言い方で、ビタミンKが血液を凝固させるのではなくて、ビタミンKが存在することで血液の凝固因子が合成されるのです(ついでに言うと、普通の状態では凝固因子はふだんは「待機」をしていて、必要になったとき(血管が破れたときなど)に働き始めます)。逆に言えば、ビタミンKが不足したら血液は凝固因子が不足することで凝固しにくくなります。だからちょっとした出血が止まらなくなってえらいことになります。(その典型例が、ホメオパシーの信者の助産師が新生児にビタミンKシロップ(ケーツーシロップ)のかわりにレメディを与えて、結局頭蓋内出血で死亡したとして訴訟沙汰、の山口の例でしょう。ついでですが、新生児全員にケーツーシロップが必要なわけではありません。母乳には最初からビタミンKが足りないから母乳オンリーの新生児だけです)
よく血栓症の人などに投与されるワーファリン(ワルファリン)は、そのビタミンKの働きを体内で妨害することで血液を固まりにくくしています。逆に言えば、ワーファリンの量以上にビタミンKが体内に存在したらワーファリンは効かなくなります。そして、上記したように納豆にはビタミンKが大量に含まれています。だから「ワーファリンを服用している人に、納豆は禁止」となるわけです。
納豆にはナットウキナーゼも含まれています。これは俗に「血液をさらさらにする酵素」です。ですから、「納豆を食べたら血液がさらさらに!」。
ちょっと待って。
そもそも「酵素」って、何でしたっけ? 基本的に「タンパク質」です。つまり、食べたら消化管で消化吸収される対象で、タンパク質は消化されるとペプチドやアミノ酸になってから吸収されます。食べたタンパク質がそのままの形で血液の中に出現することは、「可能性がゼロとは言わないけれど」と言うにとどめておきましょう。
さらに「量」の問題があります。薬の場合「過量投与」は副作用の面で大問題ですよね。逆に効かない量を飲んでも意味ありません。で、質問です。「ナットウキナーゼが消化管の粘膜をそのまま通過して血液の中にはいるとして、その至適血中濃度はどのくらいで、それを維持するためにはどのくらいの納豆をどのくらいの頻度で食べればいいのでしょうか?」。さらに言うなら、それを決定するための人体実験は、けっこう大変です。まず二重盲検ができませんし(「納豆と区別ができない臭いと食感とねばねばで、納豆ではない(ナットウキナーゼを含まない)もの」を準備できるでしょうか?)、毎日毎食納豆を食べされられるのは勘弁して欲しい(ナットウキナーゼの半減期が数十時間あれば話は別ですが)。
私にとって「納豆」は「健康のために食べるもの」ではなくて「好きだからときどき食べるもの」です。それ以上の存在になって欲しいとは思っていません。
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http://j-nattokinase.org/jnka_nattou_01.html
http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=bpb1993&cdvol=18&noissue=9&startpage=1194&lang=en&from=jnltoc
薬学会誌でPublishされたデータも、、、。
うーん。いろいろ突っ込みたいところはあるのですが(例えばMW=28kのはずなのに血中から検出されたブツは37kの所にバンドがあるとか(精製されたNKのポジコンバンドがないとか)、本当に血中に入ったものの酵素活性が生きててなんか作用してるのか、とか)。
そもそもキナーゼはリン酸化酵素のはずで、究極的にはいろんなシグナルが働いてなんかの活性を示す事もあるかもしれませんが(百歩譲って血中でなんかの活性を示すとして、です)、基本的にシグナルは突出してある部分だけが働かないよう制御されてるはずですよねぇ。
納豆を食べる→血液サラサラ
とかそんな短絡的な話は私にはちょっと受け入れ難いです。
私が「体」だったらナットウ由来のキナーゼなんて異物は喜んで攻撃します。長々体の中にご滞在頂いて生理活性を示して頂くようなまねはしないと思います。はい。
は言い得て妙ですね。現代の日本では、学問の世界でも市井でもリクツばかり重視されて、「身体感覚」はあまり重視されていない印象です。「細胞」とか「遺伝子」だけではなくて、もうちょっと「身体」を重視してもバチは当たらないだろう、なんてことを私は最近思っています。
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