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食欲の秋に梨狩りやブドウ狩りをするのは楽しい経験ですが、今回のサクランボ摘みはそんなのどかなお話ではありません。
アメリカでは民間の保険会社が医療保険を扱っています。「株式会社」ですから「株主の利益」が最優先されます。ということは「利益」を上げてそれを株主に配当する必要があります。利益を上げるのに一番単純な方法は「収入を増やす」と「支出を減らす」の組み合わせです。医療保険で「収入」は加入者の保険料、「支出」で最大の項目は「保険を使った医療への支払い」です。そこで、「最大の利益」を上げようと思ったら、「収入は最大/支出は最小」を目指すべきです。次善は「収入はそこそこ/支出は最小」かな。「支出を最小」にするためには、「加入者が病気になっても保険が使えない」ようにするの(会社から支払わない)が一つの手です。もう一つは「保険加入者が病気にならない」(そもそも支払いが発生しない)。
ということで、加入手続きで「病人および病気になる可能性が高い人を排除」して「健常者(保険料は支払うが保険は使わない)だけを加入させる」のが利益を追求する保険会社としては“正しい態度”となります。その「健常者を優先的に医療保険に加入させる行為」のことを「サクランボ摘み(cherry picking)」とか「クリームすくい(cream skimming)」と呼びます。美味しいところだけ自分のものにして、美味しくない部分はほかに回す、という態度です。
実はこれは「健常者」にもメリットがあります。保険料が安くなりますから。最近日本でも自動車保険などで「安さ」を強調しているものがありますが、保険料が安くて支払いの保険金が変わらないのでしたら「会社の支払い確率が減っている = サクランボ摘みが行なわれている」可能性が大です。ただ、これは「その保険を本当に必要としている人(=病人、病気になる可能性が高い人、交通事故を起こしやすい人)」が「保険に入れない」「入れても高額の保険料になる」というデメリットを押しつけられることになります。
あるいは支払うときにいろいろ難癖をつけて会社が支払わないか。
ある県でのお話です。
そこの県庁所在地には、大学病院・県立病院・市立病院と一通り公的病院が揃っていましたが、重度の精神障害者はなぜか私立病院が診ることになっていました。公的病院で診ていた外来とか開放病棟で診られるレベルの患者さんがもしも急に悪化したら、紹介状付きで民間に送られるわけです。私から見たら、変な現象です。小さな民間病院で診られないほど悪くなった患者さんこそ規模が大きな総合病院で精密検査とか濃厚治療とかを受けてもらいたいのですが。
その市には、市立のリハビリテーションセンターもありました。人を潤沢にそろえ、何十億円という投資をして高額の医療器機も揃っています。ところが、重度の障害を持っているとか難病を持っていて医療や介護の手がかかる患者さんが、次々入院申し込みを断られて民間のリハビリテーション病院に流れる、という現象が起きました。これまた妙だ、と私には思えます。
どちらの例でも、税金を大量に投入して高度な医療を提供できる施設が、患者の“サクランボ摘み”をやっているわけです。私的な企業がそれをするのは「利益追求」の観点からはあり得る態度と思いますが、公的な機関が「サクランボを摘む」のは、なぜなんでしょうねえ。もしも私が公務員をやっていた頃の経験が今でも生きているのなら、医者“以外”の“権力者”が病棟を支配しているから、と言いたくなりますが……まさか、ね。
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