この絵本の作者「カレル・チャペック」を知らない人は多いかもしれません。20世紀前半のチェコの作家です。この人が有名なのは「ロボット」という言葉を世界に初めて紹介したことでしょう。『R.U.R. ロボット』(1920年)で、世界で初めて大量生産の“生産者”としてのロボットが登場するのです。この戯曲には、ロボットや人の幸福とは、ロボットに魂はあるか(そもそも人に魂はあるのか)、人は神になれるのか、ロボットの人類への反乱にいかに対処するべきか、など、いわゆる「ロボットもの」のテーマはほとんど含まれていて、きわめて先進的な匂いがします。
ただ、私は彼の作品では『山椒魚戦争』(1936年)の方が好きです。こちらは「山椒魚」という一種の「奴隷」が海で栄え、やがて人類に反乱を起こす、というストーリーですが、『R.U.R. ロボット』よりも「地球規模」なのが気に入っています。全地球規模での「海」の「陸」への侵攻と言えば、新しいところでは『深海のYrr』(フランク・シェッツィング 著、 北川和代 訳、 ハヤカワ文庫、2008年)があります。ただ、Yrrは人類を必要としていない(だから人類を全滅させても気にしない)のに対して、「山椒魚」はまだ人類に依存をしています(金属を精錬する作業を人類に下請けさせたいのです)。そこのところに微かな“救い”があります。人類は山椒魚の奴隷になったとしても、いつかは反撃できるかもしれない、と。
当時のチェコは、オーストリア帝国から分離して、民主主義・資本主義が成功していたのですが、そこに影を落としていたのが民族主義やドイツのナチズムでした。「非人間的な存在」によってその生存基盤を脅かされる人類、というテーマは『R.U.R. ロボット』『山椒魚戦争』に共通していますが、『山椒魚戦争』では国際関係が詳しく描かれますので、ドイツに対する批判的な視線がこの作品に込められていたのでしょう。
で、『お医者さんのながいながい話』。これは4人の医者(あるいは医者のようなもの)が、のどにプラムを詰めた魔法使い・引きこもりで瀕死のお姫様・声が出なくなった森のお化け・リウマチの河童・脚を骨折した妖精、をいかに治療したか、のお話です。すべて医者が転地療法(あるいは環境の変化)を勧める、というのが笑えます。ちなみに当時はまだハイムリッヒ法はポピュラーではなかったんですね。別のやり方が採用されていますが、これはこれで合理的。それと、どの医者も患者に「有意義な人生」を送るように勧めています。ただの荒唐無稽な絵本と読むことも可能ですが、深い意味を読み取ることも可能そうです。
書誌情報:『お医者さんのながいながい話』カレル・チャペック 著、 関美穂子 絵、関沢明子 訳、 フェリシモ出版、2008年、1333円(税別)
なお、私が子どもの時に読んだのは『長い長いお医者さんの話』(岩波少年文庫)でした。語の順番が変わるだけで、ずいぶんイメージが変わるものです。
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この本は知りませんでした
早速取り寄せてみます
知り合いが癌で亡くなりました 1年半の闘病生活でしたが 悲惨なもんでした 未承認の◎◎を取り寄せるからと言って 寄付を集めたり悪あがきでした。若いときから不摂生の限りを尽くしておいて何を今更と思ったのですが・・・
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