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今年の夏の甲子園大会も、あと少しとなってきました。この暑さの中、連日の熱戦を繰り広げる彼らの体力と頑張りには敬服します。
昭和39年(1964)、沖縄で風疹の大流行がありました(当時アメリカで風疹が大流行しており、それが入ったのではないか、と言われました)。風疹そのものは俗に三日ばしかと呼ばれるくらいで基本的には軽い病気なのですが、大きな問題は妊婦がかかると胎児に奇形(白内障、先天性心疾患、難聴など)が発生する率が高くなることです(先天性風疹症候群と呼ばれます)。
先天性風疹症候群で生まれた約500人の子どもたちの一部は聾学校に進むことになりました。そこで『野球をやりたい」「やる以上は甲子園を目指したい」と望んだ彼らの苦闘を描いたのが、漫画「遥かなる甲子園」(山本おさむ、小学館)です。
野球には「音」が重要です。優秀な外野手は、バッターがフライを打った瞬間、球が弾かれる方向を目で確認すると同時に打球音を耳で聞き、それによって落下地点を判断して瞬時に走り始めます。この第一歩の早さと判断の正確さが外野手の守備に関する優秀さを示していると私は思っています。すごい人は、走り出すと球を全然見ずにたとえばフェンス方向に走って、くるりとふり向いてグラブを出したらそこに球が吸い込まれます。また、外野手が二人同時にフライを追っている場合、衝突を防止するために「マイボール」とか「オーライ」とか声を出します(両者の目は球に釘付けですから声を使うわけです)。その「音」が使えないハンディを克服する苦労と、さらに高野連の、はじめは「学校教育法の『高等学校』に限定。『特別支援教育(現在の言い方。当時は「特殊教育」)』の学校は軟式だけやっていろ」、ついで「難聴者が野球をするのは危険だから、甲子園大会への参加は認めない」という門前払い方針が、子どもたちを苦しめます。身体的なハンディキャップだけではなくて、社会的なハンディキャップとも彼らは戦わなければならなかったのです。
新生児の難聴は、約1000人に0.5〜1人(正常新生児では出生1000に対して0.5人、NICU入院児では2〜3%)といわれています。その主な原因は、遺伝子異常と胎内感染。感染では、先ほどの風疹だけではなくて、梅毒とサイトメガロウイルスもよく知られています。
1990年代に欧米で新生児の聴覚スクリーニング検査が可能な自動解析器が開発されました(面白いのは、生まれたての方がくうくう寝るから検査がやりやすいそうです。ちょっとでも育つと刺激でびーびー泣くから検査にならない、あるいは全身麻酔をかける必要が出てきます)。そして、新生児期に難聴を発見されて6ヶ月以内に専門の療育を開始した場合には、3歳になったときの言語能力が健常児と同等であることが研究で示され(このスクリーニングをしなければ、2〜3歳のころに言葉の遅れでやっと難聴が発見されることが多い)、その結果、アメリカではほとんどの州で新生児の聴覚スクリーニング検査が義務化され、ヨーロッパ各国もそれに追随しました。
では日本では……私が検索してみた限りでは、公的なモデル事業がいくらか、あとは分娩取扱機関で個別に自費による新生児聴覚スクリーニング検査が行われている、が実情のようです。(たとえば、「きこえとことばの発達情報室 新生児聴覚スクーニング検査」)
米欧のリクツはわかります。早期にきちんと対応したら言語能力が伸びることがわかっていて、それをしないのは、怠慢だ。少々の手間とコストはかかるし、公的な受け皿を整備する必要はあるが、その“コスト”と引き替えに、将来の福祉コスト(言語能力が不十分な人に対するもの)の削減と金銭には替えられない本人・家族の幸福(というか、不幸から少しでも遠ざかること)が得られる。
日本のリクツもわかります。「少々の手間とコスト」をかけたくないし、義務化をしたら公的な受け皿を全国に整備する必要がある。そんな金はない。制度を作ったらその運用に関して責任もとらなければならなくなる。そんな気はない。
“甲子園”は、まだまだ遥かなのでしょうか。それとも、政府の方針は変わったが、上記のサイトが(あるいはここには紹介しなかった他のサイトも)更新されていないだけ?
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