おかだ
More プロフィール

Search

Calendar

<< 2010/07 >>
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

新着コメント

新着トラックバック

2010.07.08 18:33 |  その他(一般)  |  その他(医療関連)  |  おかだ  | 推薦数 : 0

差別はめんどう

 私は差別が嫌いですが、それは私が「正しい人間」だからではありません。単にぐうたら者だからです。

  だって、本当にきちんと差別をしようと思ったら大変ですもの。

 たとえば私が男女差別論者であるとします(両方の場合があり得ますが、ここではがちがちの男尊女卑としましょう)。では「私」が「見た目」で女性を差別しようとすると、それでは間違いが生じる恐れが大です。「見かけが男っぽい女性」を「男」として遇すると、女性差別に失敗したことになります。逆に「見かけが女っぽい男」を「女性」として差別するとこれまた差別に失敗です。では、差別をきちんとするためには出会う人すべてまず裸に剥いてみるべきでしょうか。これをやっちゃうと、男女差別をきちんとする前に強制猥褻で逮捕されてしまいそうです。これは困ります。
 また、異性の服装をする人もいます。これも外見だけで差別したら失敗します。裸に剥かないとわかりませんが、それをやっちゃうと逮捕……
 また、性転換手術を受ける人もいます。こちらは裸に剥いてもわからないでしょう。昔の戸籍か染色体を調べなければなりません。面倒です。
 また、性同一性症候群という病気があります。これは「肉体の性と魂の性の不一致」とでも言うべき状態で、もし見かけが女だからと安心して性差別をしたら魂は男なのでその差別はハズレだった、ということになります。
 また、多重人格で、一人の中に複数の人格を持つ人がいます。その中には男女ともが存在する場合があります。人格が女の時だけ差別をしましょうか?
 まだあります。医学的には、性器の奇形、あるいは染色体異常というものがあります。これが一筋縄ではいかないのです。染色体が女性(XX)だけど外見は男性型、という場合があります。クリトリスが大きくてペニスに見えたために「男の子ですよ」と告げられた場合などです。これは初潮が来たら間違いがわかりますが、それまではずっと「男の子」として育てられちゃうわけです。逆に染色体が男性(XY)だけど外見は女性、という場合もあります。特にややこしいのは「睾丸女性化症候群」という病気です。これは、染色体は男性(XY)なのに、男性ホルモンが胎児の時に作用せず、外見・性格はまったく女性と同じになってしまう、時には女性より女性らしい(普通の女性には微量の男性ホルモンが作用していますが、この場合は男性ホルモンがまったく作用しない場合があるからです)、という状態です。普通に見ただけではまず本物の女性と区別がつきません。腹の中(子宮や卵巣が存在するかどうかの検査)とか染色体を検査したらわかりますが、女性を差別するためにわざわざそこまで検査しますか?  私は嫌です。面倒だもの。

 あるいは人種差別。たとえばアメリカ人を差別したい、としましょう。では、ベトナムの子供がアメリカの夫婦に養子にもらわれていった人はどうします?  「アメリカ人」だから差別しますか。それともベトナム出身だから差別しない?
 三代前にアメリカに移民した日本人の子孫(日系三世)はどうしましょう。国籍もアイデンティティもアメリカ人ですが、途中で混血してなければ遺伝子は日系です。親戚も日本にまだまだたくさんいるでしょう。さて、アメリカ人として差別しましょうか、それとも日系人として差別は免除しましょうか。

 がちがちの差別論者は、こういった大変な論理的作業を全部瞬時にクリアして「この人は差別しよう」「この人は差別しない」と間違いなく判断しているんでしょうね。いやあ、きちんと差別するのも大変です。私にはとてもできません。できる人は尊敬します。でも……やっぱり何かのパラメーター一つだけで差別するより、「その人」個人とどうつき合うかを考えながらつき合っていく方が楽です。私はぐうたら者ですので。


固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

 乗っている駱駝が暴走を始めたら、旅先で内戦が勃発したら、乗っている小型飛行機の操縦士が突然意識不明になったら、乗っている大型旅客機が墜落し始めたら、ジャングルで道に迷ったら、UFOに接近遭遇したら……さまざまな「生命にかかわる旅先でのイフ」に対する対応法が載っている本です。その中には当然医学的なものもあるので、それをちょっとここで紹介してみましょう。
 「タランチュラに噛まれたら」……映画ではよく「恐怖の対象」として描かれますが、タランチュラは普通は人間を襲わないそうです。また、猛毒を持つものが何種類かいますが、毒を注入するのは二咬み目(最初のひと咬みは「ドライバイト」と呼ばれるそうです)。ですからタランチュラに出会ったときの最初の対応は「パニックにならない」。それから、何か(手以外)でつついて追い払うことだそうです。
 「サソリに刺されたら」……サソリの毒も基本的には低度〜中程度なので、こちらでも最初の対応は「パニックにならない」。激痛はありますが、死ぬ確率は低いからです(ゼロではありませんが)。
 「吸血ヒルに食いつかれたら」……吸血中のヒルを引っ張ったり焼いたりすると、ヒルが苦しんで吸い込んだ血液を吐き出し、ヒル体内のバクテリアが人間に体内に注入されることがあるそうです。だからヒルの吸血口(体の細い方)を指で横に押して皮膚から外し、それから吸盤(体の太い方)を指ではじいて外すのだそうです。怖いのは、「ヒル症(ヒルが鼻や口に取り込まれて起こる病態)」だそうです。ハナビル(Dinobdella Ferox)は動物の気道を好み、下手すると窒息です。こいつに襲われて、まだ自力で息ができるならやることは「アルコールでうがい」。蒸留酒を水で半分に割ってそれでうがいをしてヒルと一緒に吐き出す、という手段です。うっかり肺に吸い込むと、アルコールだけではなくてヒルも入り込んでえらいことになるそうですが。
 「手足が切断されたら」……まず一番に行なうべきは「止血」です。それも動脈からの出血に対して。動脈の断端を指で押さえ(あるいはつまみ)、ついで止血帯。それから血管の端を糸で縛る……って、書くのは簡単ですが、手足のどれかが切断された状態でこれができる人はどのくらいいるのかしら。本人は痛みと出血でふらふらでしょうし、脇に誰かいても、それが外科の素人だったらここまで冷静にできるかどうかはわかりません。ただ、なんとか止血ができたら次にするのは、切断されたものの処理です。上手くやれば接合ができるかもしれませんから。“ブツ”を拾い上げて洗い、ビニール袋に入れてからクーラーボックスなどで冷蔵(冷凍は不可)。すぐに病院に持っていけば、6時間以内なら接合ができるかもしれません。

 正直、旅に出る前にこんな本を読む必要があると断言する人がどのくらいいるかわかりませんが、話の種にでも読んでおいたら、「いざというとき」には少しは役立つかもしれません。できたらこんな怖ろしい状態にならないように予防した方が良いのでしょうが。

書誌情報:『この方法で生きのびろ! ──旅先サバイバル篇』ジョシュア・ペイビン、デビッド・ボーゲニクト 著、 倉骨彰 訳、 草思社、2001年、1200円(税別)




固定リンク | コメント (3) | トラックバック (0)