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2010.07.04 17:18 |  診療  |  その他(医療関連)  |  おかだ  | 推薦数 : 0

ツモールが

 学生実習で外科外来で予診係(まず患者さんの話を聞いてまとめる係)をやっていたとき、よく太った中年男性がどんとすわってにこにこ笑いながらおもむろに腕まくりをして太い太い右の上腕を指さし「先生、ここにツモールが」。
 私ぁどぎまぎしましたよ。よくよく聞くと開業医さん。そりゃ「しこりが」とか「へんなものが」とか言わずに「Tumor(発音からして英語ではなくてドイツ語)」と言うのはわかりますが、こちらはそんなことばが出てくるとは心の準備をしていませんから。拝見するとご本人の“診断”どおり右上腕の筋肉の隙間にやや固めのでっかいかたまりがあります。癌のようなごつごつ感はないし場所からいったら脂肪腫などの良性腫瘍でしょう。予診の場ではそこまではわかりませんが。
 当時「主訴は患者さんのことばをそのまま記載すること」と指導を受けていましたので、私はそのままカルテに書きました。「腕にTumorができた(本人のことば)」と。
 実習が続いて科を変わり、次の次くらいに麻酔科に行ったら、そこでちょうどその方の手術に出くわしました。お願いして中に入れてもらいましたが、予想通り脂肪腫でした。他人事ながら、ほっとしました。


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2010.07.04 06:52 |  映画 / 音楽 / 読書  |  その他(医療関連)  |  おかだ  | 推薦数 : 0

きれいな夜景

 先月の「」では第2巻を紹介した漫画『とろける鉄工所』の第4巻を読んでいると、「工場のきれいな夜景の写真集」がネタとして登場しました。書店でバイトするさと子さん(高校を卒業したばかり、くらい)がそんな写真集を売っているのを見つけて「夜景とかキラキラしとるじゃろ。見てみたらおもろかったよ」と父親の小島さん(のろ鉄工の班長)に話しかけると、小島さんは「お──、確かに工場の夜景はきれいよの──。中の人間も遅うまで働いてたいへんじゃのーって切のうなる光よのー」。小島さんは「溶接でしんどい残業を日常的に繰り返している工場の“中の人”」なのです。
 正直私は夜景をそんな目で見たことがありませんでした。夜鉄道で移動しているときなど、通りすぎる町の夜景を見て「あの明かりの一つ一つの下に、それぞれの生活があるんだなあ」くらいは思いますし、花火大会の時に花火師の人たちが暗がりで苦労しているのだろう、と想像するくらいはしますが。
 だけどコンビナートの夜景などを遠くから見たら私もつい「きれいだな」と思ってしまう口です。自分の感受性には鈍い部分があることに気づいて、ぎょっとします。

 例によって、医療に話を引き取ります。
 医療者がきりきり舞いで働いていることに対して、口では「大変ですねえ」と言いながら、どこか覚めた目をしている人は世の中に多くいます。それはつまり「工場でしんどい思いをしながら残業や夜勤をしている人の姿」を遠くから眺めて「きれいな夜景だなあ」と思っている人と同じ態度(感受性)ということかもしれません。

 たかが漫画、とあなどれないのは……
とろける鉄工所(4)』野村宗弘 作、講談社(イブニングKC)、2010年、580円(税別)


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