サッカーW杯日本デンマーク戦の視聴率はすごかったそうですね。「デンマーク戦視聴率 未明の快挙」(中日スポーツ)によると関東地区の平均視聴率はなんと30%を越えたそうです。おかげでネットのあちこちには「嬉しい」と一緒に「眠い」の書き込みが氾濫中。
日本代表の快挙に私も喜びで踊りましたが、翌朝、というか、その夜が明けてから教室ががらがらだったとの教師の書き込みを読んで首を傾げました。医者の場合、深夜や未明に起こされるのは普通の生活ですが、翌朝もそのまま仕事に突入するのが普通のことです。サッカーファンの人たちは、この際不規則に何夜か“眠れぬ夜”を過ごしてさらにその次の日も普通の一日を過ごしてみたら、医者の生活の一端がタダで体験できるかもしれません。
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「ゴジラvsビオランテ」には、ゴジラの「G細胞」とバラとヒトの遺伝子が融合した怪獣ビオランテが登場します。「植物怪獣とはなかなか斬新だけれど、結局ゴジラを越える敵はゴジラ(の細胞をもとにした怪獣)ということなのか、もう魅力的な敵役をゼロから造型するのは限界なのかな」と映画館で私は覚めた目で観ましたっけ。(当時はまだインターネットが普及していなかったので調べられませんでしたが、植物系の怪獣としては「ウルトラQ」ですでにマンモス・フラワーがいたことを後日知りました)
ところで「G細胞」は人体内にもあるのです。胃袋に存在していて、ガストリンというホルモンを分泌しています。Gastrinを分泌する細胞だから「G細胞」なのかな? たぶんゴジラとは無関係のはずです。
このホルモンが発見されたときには「胃袋は消化器官」という“決まり”が覆されて「胃袋は内分泌器官でもある」という新しいテーゼが登場したため、医学者の間ではそれなりに大騒動だったそうです。「別に胃袋がホルモンを分泌しても良いじゃないか」と思いますが、それまでの内科系の分類では胃袋は「内分泌系」ではなくて「消化系」で扱うものでしたから。
さて、胃に食物が入るとその刺激でガストリンが分泌されて血液中に放出されます。ガストリンは体内の血管をぐるっと回ってまた胃袋に帰ってきてそこで「ペプシノゲンの分泌」「胃酸分泌」などを行ないます。ペプシノゲンはペプシンになってタンパク分解を行なうので、胃酸分泌とともに胃に入ってきた食物の消化に役立つ、という非常にわかりやすい作用のホルモンがガストリンです。
ガストリンで放出されるペプシノゲンは二種類ありますが、実に単純に「ペプシノゲンI」と「ペプシノゲンII」と命名されています。略すと「PGI」「PGII」。なんだか「プロスタグランディンか?」と言いたくもなります(こちらも略称は「PG」ですから)。ところがこれ(ペプシノゲンの方)は胃粘膜の“健康状態”を敏感に反映します。粘膜が元気だとペプシノゲンも元気よく分泌されますが、萎縮性胃炎が進行して粘膜が息も絶え絶えになるとペプシノゲンの分泌量も減少します。特に萎縮性胃炎が起こりやすいところが「PGI」の生産地で、最後までしぶとく残る粘膜の所が「PGII」の生産地(そこでも「PGI」は分泌されてはいますが)。すると「萎縮性胃炎が進行するにつれて、「PGI」がどんどん減るが「PGII」はけっこう残る」という現象が起きます。そこで医学界得意の「差を比に転換」する作業が行なわれます。「PGI/PGII」比を計算することで「萎縮性胃炎が進行している」ことが一つの数字を観るだけで表現できる、ということになるのです。
ここまでが私が固有に持っている知識です。ちょうどペプシノゲンを使った胃癌検診(「血液を検査したら胃癌検診ができる」とけっこうマスコミで取り上げられましたっけ)が始まった頃にこの知識を仕入れましたが、その後“(胃に関する)現役”を離れたので、その後の変化についてはこまめにフォローしていませんでした。ところが文明はどんどん進歩します。今ではヘリコバクター・ピロリが萎縮性胃炎から発生する胃癌のリスク・ファクターとして重要視されるようになったので、ペプシノゲンだけではなくてヘリコバクター・ピロリの検査や除菌も胃癌検診には重要となっています。そういえば今年の保険改訂で、ヘリコの除菌の保険適応が「早期胃癌で内視鏡手術を受けた人」にも認められるようになりました(「ピロリ除菌 胃がんも保険適用 」(NHK))。
そうそう、「新しい胃がん検診ペプシノゲン法/ペプシノゲン法について(専門的な解説)」によると、
Hp感染のない健康的な胃粘膜のペプシノゲン(PG)値はPGI値:40~50ng/ml、PGII値:5~10ng/ml、I/II比:5以上と推測される。Hp感染に伴う炎症により、PGI値、PGII値は上昇し、I/II比は低下する。そして、萎縮が出現すれば、まずPGI値が低下し、かなり遅れてPGII値が低下する。その結果、I/II比は萎縮の進行に伴い低下する。PG法は胃粘膜萎縮を客観的な血液検査で拾いあげる方法であり、PGI≦70ng/mlかつI/II比≦3.0(基準値)を陽性としている。そして、PG法による胃粘膜萎縮の評価は、同じ日に行った内視鏡検査による胃粘膜萎縮の評価とよく相関していた。
だそうです。ただ、胃粘膜の萎縮がひどく進行して「PGII」も低下したら、この「I/II比」は使い物にならなくなります。まあ「たった一つの数字を振り回したら、それで胃癌についてのすべてがわかる」ほど世の中は甘くはない、ということでしょう。
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