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転がるイシあたま
中山間地・島・三角州……様々な田舎や町や街を転々として様々な経験をしてきた1950年代生まれの内科医の呟きです(最近はリハ科も兼任しています)。昔の思い出・今の思いなどを、アトランダムに語ります。「次に一体何が出てくるか」と楽しみにしてもらえるようなブログを目指します。
「偉い医師」は存在するが「医師だからエライ」ではない、がモットーの一つです。「先生様」でも「患者様」でもなく、お互いに「さん」で呼び合えるような世の中に、が秘かな望みです(書いちゃいましたけど)。
タイトル履歴
2008年4月に「医師アタマ」という本の存在を知り、あまりに似ているので本ブログのタイトルを「いしあたま(医師頭)」から「転がるイシは苔むさず」に変更しました。ただ、前のタイトルへの愛着捨てがたく、同年5月31日に「転がるイシあたま」に再変更しています。
おかだ
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べきべき
先週書いた「
白血病は整形外科が治療しろ(厚労省の主張)
」の“後日談”です。
6月8日に「
包括病床入院患者さんへの他医療機関からの投薬を認め、入院基本料減額や他医療機関での算定制限を撤廃してください
」(全国保険医団体連合会)という要望書が厚労相と中医協宛に出されました。
ただ、「
他院受診の投薬制限、課長通知の見直しへ
」(m3)にはこんなお言葉が載っています。
「本来、入院患者の入院医療はその医療機関でやるべきこと。」(厚労省保険局医療課)
このお役人、論理的にも倫理的にも法的にもへんてこりんな主張をしています。「本来、入院患者の入院医療はその医療機関でやるべきこと」=「一度入院したら、そこで“(入院の主目的以外も)すべて”を診てもらうべきで外出は禁止」って、どこの世界の日本語です? それと、文中の「べき」の法的根拠(エビデンス)は? 法的根拠を示すのは官僚の得意な仕事でしょうから任せるとして、私は「日本語」の方を担当しましょう。これを少しでも分かりやすい“日本語”に“翻訳”したら、「一度入院したら一人の医療は一つの医療機関で完結するべし」つまり、整形外科病院に入院したらそこで白血病を診てもらえ、白血病だけではなくて他のありとあらゆる病気もそこで診てもらうべし、なのですが……
1)医師法第19条「医師の応招義務」
2)「腕に覚えのない医者はとっとと専門家に紹介しろ」(判例、および、「
WMA医の国際倫理綱領
」(日本医師会):「診療や治療にあたり、自己の能力が及ばないと思うときは、必要な能力のある他の医師に相談または紹介すべきである。」)
この1)と2)を組み合わせたら、「白血病は血液内科の外来で診てもらいたい」と患者が言った瞬間、整形外科医には紹介義務が生じます。当然血液内科医には診療の義務が……というか、『義務」とか「べき」なんてことばを使う必要はないでしょう。「常識」で処理すればよろしい。で、厚労省のお役人はそれに経済的な手段で“妨害行為”を働きたいわけです。
法律や倫理に対してまったく無頓着に「入院した病院で患者はあらゆる病気を診てもらうべきだ」なんて平然と言える人は、基本的な法律を無視する点で官僚としては失格ですし、倫理を無視する点で人として……むにゃむにゃ。(法律と言いましたが、医師法だけではなくて、日本国憲法も持ち出して良いかな? その人が存在している場所によって診療機会を制限するのは差別でしょ。レプラの“島流し”がなぜまずかったのか、忘れたのかな? 差別はだめよん)
さらにこういった人は、「患者がよりよい医療を受ける」ことがお嫌いのようです。なにしろ整形外科医に白血病の治療をさせたいのですから。「患者がその病気にふさわしい医者に診てもらうことが大嫌い」な人間って、本当に厚労省のお役人ですか? それともこのお役人、自分の家族が骨折したら何科に駆け込むんだろう? あるいは肺炎になったら? そのお方にとっては「日本ではどこの病院でもなんでもちゃんと診られる」のですから、どこでも標榜科に関係なく適当な病院に駆け込むんですよね? それともなんでもかんでも総合病院?
で、国家公務員として「お前らごときはおれの言うことを聞いて動けば良いんだよ」と傲岸不遜な態度は取りたいわけです。「公僕」ということばは知らず、国家公務員法には自分たちの“特権”のことしか書いてない、と思っているかのようです。
でも……何を思うかはもちろん「個人の自由」に属することですが……外形的な仕事に関しては、本当に厚労省の官僚なら、もうちょっと国民の福利厚生に興味を持ち、現実の世界についても知識を持った方が良いです。「べき」という単語を使うつもりはありませんけれどね。(もしも私の頭が(もっと)固くなり、言葉に説得力がなくなったと感じたら「べきべきべき」と言い出すかもしれませんが)
しかし……「医療崩壊」に関しての日本の不幸(の一つ)は、こういった“べきべきの人”が政策を決定していることです。せめて患者を紹介する医者の行動に倣って「専門的な知識を持っていて、国民の福利厚生に興味を持っていて、さらに国民に対して愛情を持っている人」に、自分ではきちんとできない(向いていない)仕事は“紹介”した方が良いんじゃないかしら。というか、その“義務”があるんじゃないかなあ。
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