2007年12月にこのブログを始めて2年半、投稿した記事はいつのまにか1500を越えました。
我ながらよく書いたものだと思います。特に最近は一日二本の投稿が続いていますが、まるで「朝刊・夕刊」ですね。ここまでくると、どこまでこのペースが続けられるか、と興味を持ってしまいます(まるで他人事のような書き方ですが)。とりあえずネタかやる気か、どちらかが切れるまでは続けてみましょう。今のところは特に無理は感じていませんので、もうちょっとは続くんじゃないかというのが私の予想です(またまた他人事のような書き方ですが)。
おかげさまでアクセス数は総計が140万を越えました。この数字の大きさには、ちょっとたじろいでしまいます。m3では過去の「日別」「月別」の記録が残っているのですが、「4月」で見ると、2008年4月のアクセス数は25,377、2009年4月は49,909、2010年4月は78,029……なんと表現したものか、ともかく“順調”な伸びです。比較の基準を持っていないので確信はありませんが、市井に埋もれた無名人のブログとしては、これはすごい“実績”なのではないでしょうか。コメント返しもろくにしない愛想の悪いブログで申し訳ありませんが、読者の皆様、これからもよろしゅうおつきあい下さいませ。
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診察で口の中を見ようと思って「はい、口を大きく開けてください」と言うと、上から入れ歯が吊り天井のようにかたんと落ちてくることがあります。総入れ歯が口に合っていなくて不安定になっているわけです。歯茎や歯の向きは、噛むことの影響を受けやすくて、たとえば総入れ歯を長期間外していたら歯茎が痩せてきて入れ歯が合わなくなることは(私の経験では)まず必発です。また、入れ歯がないと、口がもぐもぐして声が聞き取りにくくなりますし、食事は食べにくいし、表情も老けて見えるし、良いことはあまりありません。ですから、特段の事情がなければ私は「入れ歯は使ってください」と言う主義です。
ただ、入れ歯を使うことによるトラブルもあります。一番怖いのが「異物誤嚥」。入れ歯そのものを呑んでしまった、という状況です。さすがに総入れ歯を呑み込むのは難しそうですが、部分入れ歯や差し歯でそのトラブルが時に発生します。
20世紀に同僚の内科医μさんがレントゲン写真を握って血相を変えて走り回っていました。「入院患者さんが昨日入れ歯を呑んじゃったと今頃言った」と。
レントゲンを見せてもらうと、たしかにお腹の中に差し歯が一本写っています。「緊急内視鏡で取れなかったら、これはもう開腹手術しかない」と彼は悲壮感を漂わせています。「ちょっと待って」と私。えっと、まず情報を整理しましょうね。
呑んだのは昨日。すると胃の中に残っている(胃内視鏡で取れる)可能性は低いはず。実際レントゲンをじっくり見ると、もう胃の中には無いことが明らかです。μさんの悲壮感は高まります。もう手術だよ、と。
ちょっと待って、と私。
異物(特に尖った角があるもの)誤嚥で特に困るのは主に次の二つです。
1)消化管に傷がつく
2)どこかに引っかかって動けなくなってしまう
1)の場合、粘膜の浅い傷なら基本的には問題は生じません。要するにかすり傷ですから、直ります。深い傷の場合は困ります。最悪は「穿孔」。食道だったら縦隔炎、胃腸だったら腹膜炎を起こし、命取りになりかねません。中途半端に深い傷は、たとえば出血が怖い、ということになります。
「で」と私は言います。「患者さんの容体はどう? どこか痛がっている? 腹膜炎の徴候は?」
けろりとしているそうです。念のためにもう一回お腹を触っておくことと、血液検査で白血球や炎症反応を見ておくように偉そうに私は言って、次に行きます。
2)の場合、単に「そこにあるだけ」なら基本的には問題はありませんが、ただ食物の流れを邪魔して結果的に腸閉塞の原因になることが考えられます。ですからどこかに完全に引っかかってしまったら、それはもう暴力的に手術で取り出すしかないでしょう。だけど、そのまま大便と一緒に出てくれたら? その場合には、一応めでたしめでたしです。
医療者だけではなくて患者側も含む関係者一同協議の上、一日様子を見ることになりました。翌日のレントゲンでは差し歯は大腸に入っていて、その翌日めでたく体外に自力排出されました。便の潜血検査でも大丈夫だったので、幸いなことにどこにも傷はつけずに通過しただけ、だったようです。
ただ、私が気になったのは「なぜ歯を呑んだことをすぐ言わずに、翌日になってから言ったのか」です。このことをμさんに言ったかどうか、実は覚えていません。この記事を書きながら、急に気になってきました。
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