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もしも「近代西洋医学絶対主義者協会」というものが存在するなら、そこのメンバーには絶対容認できないであろう記事かもしれません。
「近代西洋医学と伝統医学を革新的な次元で統合“新医学”を全世界に向けて発信」(メディカル・トリビューン)
会員制のサイトなので読めない人もおられるでしょうから、記事の冒頭を引用します。
===引用開始===
アジア諸国では近代西洋医学と伝統医学/相補・代替医療(TRM/CAM)の双方を取り入れ,それぞれの領域で蓄積された知識の相互利用を模索している。東京都で開かれた「アジア統合医療会議―アジアにおける統合医療モデルと科学的解明―」(議長=日本統合医療学会理事長/東京大学・渥美和彦名誉教授)では,アジア各国からのゲストスピーカーがTRM/CAMおよび統合医療にかかわる自国の現状を紹介。アジアから近代西洋医学と伝統医学を革新的な次元で統合した“新医学”を全世界に発信すべく,情報の交換が行われた。
===引用ここまで===
ここにはありませんが、この会議が開催されたのは、本年3月27日・28日、東京大学・小柴記念ホールです。ついでに追加しておくと、こういった方向の医療の構築を模索しているのはアジア諸国だけではありません。アフリカや欧米でも実はこういった運動は行なわれています。
記事では、韓国・中国・台湾・ベトナム・タイ・サウジアラビア・マレーシア・インド・オーストラリアの伝統医学と近代西洋医学との統合医療が取り上げられています。国によって立場はいろいろですが、それはそれぞれの国固有の伝統文化と伝統医学のあり方が違うことと、西洋化の度合いが違うことによるでしょう。
なお、もう少しアジアの伝統医学について詳しく知りたい人には、たとえばこんな本はいかがでしょう。
『アジアの伝統医学』出帆新社、2004年、2700円(税別)
目次:
「インドネシアのアーユルヴェーダ・ジャムゥ」高橋澄子
「アーユルヴェーダの外科学」P.クトムビア
「シッダ医学概論」佐藤任
「モンゴル医薬学序説」徳力格爾
この本を読んでいると、「アジアの伝統医学」全体にアーユルヴェーダがいかに深い影響を与えているかがわかります。最終章のモンゴルの医学も、もともとの伝承医学にアーユルヴェーダが加わりさらに12世紀に仏教とともに伝来したチベット医学が加味されて形成されたことが本書で紹介されています。そうそう、中国の伝統医学(中医)の二本柱は経絡の刺激(鍼灸)と漢方薬ですが、後者の方にアーユルヴェーダが影響を与えている、という説もあります。それが本当なら、日本の漢方医学はアーユルヴェーダの孫か甥姪の関係ということになります。
WHOが代替医療に対してどんなことを考えているか、は、ちょっと古いのですが、こちらの本でわかります。
『世界伝統医学大全』責任編集:WHO/R.バンナーマン+J.バートン+陳文傑、津谷喜一郎 訳、 平凡社、1995年、4757円(税別)
単純化して言うと、近代西洋医学とその国の伝統医学を組み合わせると、治療成績は上がり患者満足度も上がり医療コストは下がるので、WHOは大喜び、なんだそうです。ただ、「占い」や「悪魔払い」まで載っているのですが、これってEBMの観点からはどうなんでしょうねえ。おっと、この本が出版された頃にはまだEBMは“時代の主流”ではありませんでした。一番最初に紹介したメディカル・トリビューンの記事ではさすがにどの国もEBMを無視せずに扱っています。
本書では二つの医学システムの関係について「排他的(独占的)システム(正規の教育を受けた専門家のみがヘルスケアを行える:フランス・ベルギー・ルクセンブルグ・アメリカ・旧ソ連)」「容認システム(非公認のヘルスケアが存在する(健康保険は使えない):ドイツ・イギリス)」「包含システム(伝統医学が公認されている:バングラデシュ・スリランカ・インド・パキスタン・ビルマ)」「統合システム(別々のシステムの専門家ネットワークを形成して共同で働く:中国・ネパール)」が挙げられていますが、これは簡単に「どのシステムが最善か」などとは言えません。それぞれの国・地域の歴史と文化と政治や社会の性格でうまくいくかどうかが決まりますので。日本では「包含システム」がうまくいくのではないか、と私には思えますが、本当に二つの医学が協力して最大限の効果を上げることができるのは「統合システム」ではないかな、とも思えます。
医学は、極端なことを言ったら「治してナンボ」の世界ですから、たとえ非科学的な方法でもそれが実際に有効なら治療や療養の方法論に取り込めばいいでしょう。ただし「非科学的な医療」に関しては「それは非科学的だ」の前提を崩さないようにしなければなりませんが。最初から「非科学」が前提のものを無理矢理「科学」で説明しても、それは“誤解(あるいは曲解)”でしかないのですから。(したがって「エセ科学」は、それが(本当は科学的ではないのに科学的であるというふりをしている)「エセ」である限り「科学的医療」にも「非科学的医療」にも“居場所”はありません)
※「非科学的な医療」の一つに、「音楽療法」というものが医療の世界の中にありますが、その一例を紹介しておきましょう。ここで示されるのは厳密には医療であるとは主張できないかもしれませんが、「音楽は薬です。音楽は私たちを変えます」との熱い語りを聞いてみてください。最後にヴァイオリンで演奏される「無伴奏チェロ組曲第1番」(バッハ)だけでも一見(一聴)の価値があります。
「ロバート・グプタ 「音楽に救われた魂」」
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