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総合病院や大学病院の「科名」の多さを見て、現在の医者を“守備範囲”によって分類したら一体どのくらいの種類になるのだろう、と感じたことがあります。ただしきちんと数えようとは思いませんでした。私は基本的に怠け者なのです。
大宝律令の医疾令では「医学教育」は、大療(内科)/創腫(外科)/少小(小児科)/耳目口歯/針/按摩/呪禁/女医/薬園、に分類されています。
中世の西洋では、正規の医学は大学での内科(と少数の外科)だけで、それにプラスして徒弟制度で育つ床屋外科と薬種商が補助員として機能していました。(フィレンツェでは13世紀半ばに現在の医師会のご先祖様となる最初の職業組合が結成されましたが、そのメンバーは医師/薬種商/小間物屋でした(*1))
ずいぶんシンプルな「医学」だと思います。ただ利点もあります。「どの医者にかかって良いかわからない」ということがなさそうなこと。
今はけっこう大変です。どんな医者にかかるかではなくて、最初にどの科の医者にかかるか、で患者の運命が変わることさえあり得ますから。
どの科にかかったらよいのか迷うものとして、たとえば「舌の外傷」なんてどうでしょう。何科にかかるのがベスト? 私が最初に思いつくのは口腔外科です。しかし口腔外科はそうそうあちこちにオフィスを開いていません。だったら次は(口腔外科の素養を持つ)歯科。ただ、私は歯科との付き合いはほとんど無いため、歯科医のすべてが口腔外科の素養を持っているのかどうかは存じません。歯科ではなくて医科の領域なら耳鼻科をお勧めしましょう。耳鼻科は正式には耳鼻咽喉科でのどについても守備範囲ですから、舌も診てくれる可能性が大です(ただ、一応確認の電話を入れておくことをお勧めしますが)。
のどといえば、のどぼとけの左右にある甲状腺、ここの手術は耳鼻科ではなくて外科が担当します。もともと甲状腺は血管が豊富で手術が困難と言われていたのですが、その安全な術式を確立したのが外科医のコッヘル(Kocherコッハー、1909年ノーベル医学生理学賞受賞)だったためか、ずっと「外科の担当」となってます。(ちなみにテレビの手術場面で執刀医が「メス……コッヘル……ガーゼ」などと言っている「コッヘル」はこのコッヘルさんが開発した止血鉗子の名前です)
外科といえば、乳癌の手術も外科の担当です。これを「婦人科が担当」と誤解している一般人がずいぶん多いのは不思議です。もちろん婦人特有の臓器と言えばそうではあるのですが。
手首を痛めたらどうしましょう。もちろん整形外科です。でもちょっと待って。同じ整形外科でも中は実は細分化があって、手と腰(脊椎)と脚でそれぞれ“専門家”がいるのはご存じでしょうか。親切にも「手の外科」と看板が出ていたらそこを受診してください。看板が出ていなかったら「そちらに手の外科はありますか」と問い合わせをしておいた方が吉です。
参考図書*1)『「病気」の誕生—近代医療の起源 』平凡社選書 (児玉善仁 著)
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