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 江戸時代のロングセラーに「役者評判記」があります。内容は、歌舞伎役者のカタログ・芸の批判・ゴシップ・序列付けなどです。早くは17世紀から発行されていましたが、宝暦年間頃(18世紀半ば)からさかんに出版されるようになり、明治までずっと出版が続いた、という化け物のようなロングセラーです。実は役者評判記と同時期に「遊女評判記」も出版されるようになりけっこう売れていたのですが、宝暦年間には「遊女」の方は下火になってしまっています。ネタが尽きたのか、吉原遊廓の太夫が姿を消したために世間の熱気(興味)が冷めてしまったのかはわかりませんが。(役者の場合には、「芸」について様々な切り口で論じることができるので毎年新鮮なネタが提供できますが、遊女の方は姿形と性格と床上手かどうか、くらいで新しい切り口がなくなってしまったのでしょう。あ、役者の方にも「この役者を買ったら床上手か」という「色」の部分も最初の頃にはあったそうですが、「色」に関する感覚が江戸時代は現代社会とは違う〈異世界〉だと思った方が良いです)
 「役者評判記」には、判型や内容にフォーマットがありました(目録・開口・本編など。内容はポジティブとネガティブな評の両方を述べるようにしている、など)。で、そのフォーマットを生かして、様々な「○○評判記」が出版されるようになりました。たとえば……稗史・名物・能楽・古銭・相撲・狂歌師・浄瑠璃・虫・さかな・学者・文人・医師・書家・仏教の宗派・五十三次の宿駅・瓦版の悪刷りなどなど。ここで注目したいのは、ここで「評判」が述べられているのが、風俗関係だけではなくて「学者」「文人」なんて“お堅い”分野までもが「評判」されていることです。

 『江戸名物評判記案内』(中野三敏 著、 岩波書店(特装版「岩波新書の江戸時代」)、1993年、1456円(税別))ではそのことを「文化が爛熟した証拠」で、かつ、そういった名物評判記を「現代の週刊誌のようなもの」と評しています。しかし私には「現代のマスコミ全般」がすべてこういった「名物評判記」状態なのではないかと思えます。風俗情報から医者の評判、宗教、ノーベル賞などの話などまで、ありとあらゆる情報を“平等”に扱う態度で並列的に報道し、しかもその形式はフォーマット化されていて、さらに内容は基本的にきちんとした「考察」ではなくて「評判」。厳密にきちんとした態度での調査報道なんかほんの一握り。一番大事なことは「売れるか(スポンサーがつくか)どうか」です。つまり現代のマスコミの基本は江戸時代から全然変わっていないわけ。

 ちょいと“権威づけ”のために有名人のことばを引用してみましょうか。

 引用開始
>>とにかく、テレビから伝えられる情報はお二人のいわゆる“お人柄”ばかりで、そもそも彼らがどのような業績をあげたからノーベル賞の受賞にいたったのか、そしてそれはどういう意味を持つのかと言った本質的なことはほとんど何も伝えられなかった。日本のマスコミの知的水準はこの程度なのかと思った。
 引用ここまで

 これは、小林誠・益川俊英両氏のノーベル賞受賞時のマスコミに関して立花隆さんが言った言葉です。(『小林・益川理論の証明 ──陰の主役Bファクトリーの魅力』立花隆 著、朝日新聞出版、2009年、1900円(税別))
 つまり、ノーベル賞受賞の話題を報じる現代マスコミは、江戸時代の遊女評判記や役者評判記と同じような報道姿勢だったとこちらでも“保証”されています。

 まあ、知的水準の低い「ゴミのような報道をする」からこその「マスゴミ」なのかもしれませんが、科学好きとしてはノーベル賞の話題が、医者としては医療報道が「ゴミ扱い」というのは、不本意です。せめて報道姿勢に関しては「もっとまじめにやれ〜」(「帰ってきたヨッパライ」の神様)と言いたくなっちゃいます。ごまめの歯ぎしりかもしれませんが……でも「ごまめ」の方が「ゴミ」よりは上等ですよね。


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2010.03.20 06:52 |  その他(医療関連)  |  おかだ  | 推薦数 : 5

毎日新聞の広告

 他人様のブログのネタにおんぶにだっこをするのは心苦しいのですが、医療崩壊に危機感を持つ者としてはこれは放置できませんので。

 私が注目したのは、ブログ「天漢日常」の「「マスコミたらい回し」とは?(その158)毎日新聞が製薬会社に広告出稿を要請」の記事です。
 毎日新聞が「製薬会社の広告が激減したので、それを戻して欲しい」という要望を日本製薬団体連合会に出したというのです。で、広告減少の理由は「大淀病院産婦死亡事例」での報道による医療崩壊の加速に対する医療関係者の反発など。毎日新聞の言い分は「医療崩壊の現実を報道しただけで、加速はさせていない」ということでつまりは「大淀病院産婦死亡事例で、自分たちの報道姿勢は正しかった」ということのようです。ということは「これからも同じことをする」わけですね。
 実は毎日新聞で医薬品の広告が減っていたということを私は詳しくは知りませんでした。ただ、知った以上は私も何かをしたくなります。で、「これからも同じことをする」に対しての批判行動は「これまでに有効だったのと同じことをする」が効果的でしょう。私も来院されるMRさんたちにこれからしばらくひとこと言っておこうかな。ちなみに何を言うかは、日本国憲法に保障された言論の自由の範囲内です。
 ところで、「現在広告を出している数社」って、どことどこ?  どなたかご存じありません?



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