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2010.03.11 18:31 |  映画 / 音楽 / 読書  |  その他(医療関連)  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 0

森林太郎

 北里柴三郎が1885年にベルリンのコッホの下に留学した直後、来独した軍医本部長の石黒忠悳(ただのり)は北里にミュンヘン大学へ移れと命令をしました。しかし北里は反発します。ミュンヘン大学のペテンコーフェルは、コッホの「黴菌病毒説」を否定する「ミアスマ説(病気は環境によって発病する)」で、北里はコッホの教えを学びたかったからです。そこに仲裁に入ったのが、石黒に同行していた若き森林太郎で、その結果北里はコッホの下での研究を続けることができたそうです。(『物理・化学通史』橋本毅彦 著、 日本放送出版協会)
 この森林太郎は後に大出世して陸軍軍医総監(陸軍軍医のトップ)として日露戦争で「脚気は病原菌によって起きる」と主張して多数の戦病者を出すというチョンボをするのですが(海軍は食事の改善で脚気はほとんど出しませんでした)、世間一般では「森鴎外」の方が通りがよいでしょう。もっとも森鴎外としても「この鬼畜め」と言いたくなる行動をしているのですが……(『舞姫』に書かれていることが実話ではないかと思わせるように、実際にドイツから日本へ鴎外を追ってきた女性は追い返されています)

 「脚気菌」についての陸軍と海軍のごたごたは有名な話なのでここでは省略します。
 ただ、森林太郎を弁護するとしたら、当時の風潮のせいにするという手があります。当時は医学が科学になりつつあった(あるいは、科学が医学に侵入しつつあった)時代で、コッホの原則に代表される「微生物を極めたら病気のすべてが解明できる」という風潮が上げ潮に乗ってブイブイ言わせていました。(現代の、遺伝子を解明したらすべての病気が説明できる、と相似形であると私は思っています)  ですから「脚気は病原菌によって起きる」という主張は棄却されるまでは有効な仮説として扱ってもよかったのです。問題はそれを「仮説」ではなくて「真理」として扱ってしまったことでしょう。
 ですから私は森を“断罪”はしません。ビタミン欠乏症どころかビタミンという物質も概念もない時代に、「病原菌」という当時最新の「思想」を知った人間として、それを捨てる(それ以外の仮説を検討する)勇気がなかったのかなあ、とやや気の毒に思うだけです。


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2010.03.11 06:56 |  映画 / 音楽 / 読書  |  その他(医療関連)  |  おかだ  | 推薦数 : 0

確率

 確率は、何かを決定する場合には強力なツールとなります。「(不利な確率に賭ける)ギャンブラーがロマンティストだとすれば、(有利な確率に賭ける)ポーカー・プレーヤーはリアリストだと言えるだろう」はポーカー・プレーヤーであるアンソニー・ホールデンのことばだそうですが(私がこの言葉を知ったのは『数学的にありえない』アダム・ファウアー)、問題は確率だけではありません。「勝つ確率80%の事象a」と「勝つ確率1%の事象b」があれば、普通の人は前者を選択するでしょう。しかし、同じ金を賭けて、返ってくるのが前者は賭け金の1.1倍、後者は100倍だと後者に賭ける人が増えるかもしれませんし、その人がせっぱ詰まって一発逆転が必要な状況だとますます後者を選択する人が増えるでしょう。
 さらに賭けるものの価値が高い場合には話はますますややこしくなります。典型的なのは、自分の命がかかっている場合。ある手術が成功する確率が99%と言われたら、けっこう安心できそうな数字に思えますが、それはあくまで「百人同じ手術をしたら99人は成功する」と言っているだけで「“私”が“その99人”に入れること」が保証されているわけではありません。もし入れなかったらそれは“私”にとっては「百パーセントの失敗」なのです。

 ……ところで、あなたは自分が手術を受ける場合、成功確率何パーセント以上なら受けたいと思いますか?

 ところで、あなたは降水確率が何パーセントくらいから雨具を持って出かけますか?  たとえばその数字が「60%」だとして、では「あなたの病気の5年生存率は60%です」と言われたら、その数字をどう判断しますか?


参考図書
数学的にありえない(上)』アダム・ファウアー 著、 矢口誠 訳、 文藝春秋、2006年、2095円(税別)
数学的にありえない(下)』アダム・ファウアー 著、 矢口誠 訳、 文藝春秋、2006年、2095円(税別)

 ただし、この本は数学や統計の本ではなくて、(知的には面白く、お色気は不足している)冒険小説です。お間違えなく。


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