「畑作物カドミウム濃度報告せず 10品目基準超 環境省」(朝日新聞)
私はまず、十数年前の「畑作物(「葉物」という言い方でしたっけ?)から高濃度のダイオキシンが!」の騒動を思い出しました。
ところでこの記事が「問題」として浮かび上がらせたいのは……
0)カドミウムはコワイコワイ。
1)日本はカドミウムに汚染されている(我々はすでにイタイイタイ病の予備軍になっている)。コワイコワイ。
2)役所が不都合なデータを隠した。けしからんけしからん。
この、どれか、あるいはすべて、ということなのでしょうか。
さて、では0)から。
カドミウムはもちろんイタイイタイ病の原因で、好んで体内に大量に入れたいものではありません。ただ、この記事で言及される「国際規格の安全基準」は、「これを超える量を1回食べたら即死したり発病する量」ではなくて「長く食べ続けても大丈夫な量」。ですから「基準の6.7倍が検出されたホウレン草を体重50kgの人が食べると、おひたし一人分に満たない38gで一日分の耐容摂取量を超える」という“机上の計算”は正しいとしても、次の問題はそのおひたしを毎日毎日何年間食べることになるのか、です。朝日新聞は「異常にホウレン草のおひたしが好きな人」を想定しているのかもしれませんが、私はそういう“特殊例”ではなくてもうちょっと常識的な例の方が一般人への訴求力は強いのではないかと思います(もちろん一時的には「極端な例」「強い言葉」の方が強い影響力を発揮できます。しかしその“強さ”(“極端”を選択した意図)を見透かされると、かえって“反動”がくることになるのです)。
次は1)。
畑作物を分析したら、(国際基準より)高い数字のカドミウムが検出された。これは事実。ではそこから「日本中がカドミウムに汚染されている」を導くのは……これは事実ではなくて、推定です。「カドミウムに汚染された畑が日本のあちこちに存在する」だったら事実だと言って良いでしょうが。
>>基準を超えた作物が検出された複数の自治体は、朝日新聞の取材に対し、採取地にはカドミウムを廃水や大気中に排出する旧鉱山、製錬工場近くの畑を含むと答えた。
この「分析調査」はカドミウムによって高濃度に汚染されている可能性が高い地域を対象に行なわれたようです。だったら「カドミウムに高濃度に汚染された土壌で育てられた作物には高濃度のカドミウムが含まれる」がこの調査の“結論”となるわけ。なんだか当たり前ですが。しかし、土壌についても作物についてもバイアスをかけずにアトランダムに選択されたのだったら、その時はじめて「日本中がカドミウムに汚染されている」と言えることになるでしょう。ですから私がここで欲しいのは「土壌のカドミウム濃度と作物のカドミウム濃度との関係」のデータです。それと、日本中のあちこちの(畑に限定しない)土壌のサンプリング調査(できたら母数が1万以上、さらにそれぞれの数年分)の結果。何かを判断するために必要なのは、「現実の姿(それもできたら時系列に並べて見ることができる全体像)です。誰かが用意してくれた机上の数字だけ眺めてナニカがわかった気になれる人には、私の意見の意味は理解できないとは思いますが。要は「日本全土カドミウム汚染地図」を作成して、さらに「土と作物の関係」も明らかにして、その上で「日本でのカドミウム汚染畑作物がもつリスク」について考えよう、というわけなんですが。
最後に2)。
>>同審議会の元委員は「調査結果が報告されていれば、基準設置を見送った結論が変わっていた可能性がある」と指摘
>>環境省土壌環境課は「調査は、畑作物の国内基準が設けられたことを想定して対策を検討する材料を集める目的で、基準設定の検討材料にはならないと考えた。審議会では基準設定が見送られたため、調査結果は提出しなかった」と説明。同審議会の事務局がある厚労省食品安全部基準審査課の担当者は「国内の畑全体の汚染実態を反映したものではないが、幅広い情報をもとに審議を尽くすためにも報告してほしかった」としている。
笑っちゃいます。審議会は「データがなかったから基準が作れなかった」。環境省は「基準がないからデータを出さなかった」。お互いに「相手のせい」と言いたい様子。
お役人って、誰のために、そして何のために“お仕事”をしているんでしょうねえ。
おまけ:「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」がありますが、なんというか看板倒れの法律で、どんな有害物質にでも対応できるように理想的にことばが並べられているにもかかわらず、結局「カドミウムと米」にしか機能しなくなっている、という可哀想な存在です。どんなに立派な理念も凡人が唱えたらそれなりの結果しか生じないのと同様、どんなに立派な法律も“それなり”の政治家と官僚が使ったら“それなり”の機能しかできないということなのでしょう。
でもそれは「理念」や「法律」の“罪”ではないでしょうね。きっと。
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