おかだ
More プロフィール

Search

Calendar

<< 2010/03 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

新着コメント

新着トラックバック

2010.03.03 18:31 |  研究  |  映画 / 音楽 / 読書  |  その他(医療関連)  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 1

幹細胞

 子どもの頃に「人面瘡」の漫画を読んで恐怖に震えたことがあります。後頭部にできた腫れ物が人の顔になって、笑ったり喋ったりするようになるというものでしたが、実は日本にはこの人面層のお話は各種残されています。(ウィキペディアの「人面瘡」には、『伽婢子』、『怪霊雑記』、『新累解脱物語』(曲亭馬琴)、『絵本百物語』、『諸国百物語』、『京都滋賀新報の記事』、『人面瘡』(横溝正史)などが紹介されています)
 人面瘡は怪談としてはとても怖いのですが、医学的には無茶苦茶な話です。「形」についてはまだよいです。丸っこい形の中に点または短い線が三つあれば人はそれを「顔」として認識することができます。ですから多くの心霊写真のようにけっこう無茶苦茶な形でもそれが「人面」に見えるのはOK。だけど「喋る」ためには、発声器官と空気袋、それにその両者をコントロールする中枢が必要です。人面瘡の内部にそのすべてを収納することは無理な話でしょう。
 さらに、人面瘡ができるのは、足・膝・股などです。そこに存在するのは皮膚・皮下組織・筋肉・骨などですが、それらがいくら頑張って腫れても、喋ることができる人面になれるとは私には思えません。「素材」や「部品」が圧倒的に足りないのです。(特に足りない部品は、知性かな?)

 受精卵は「万能細胞」です。何にでもなれます。(だからこそ、たった一つの細胞から様々な臓器から成り立つ人間が一人(時には二人(以上))丸ごとできあがります)  だけど細胞分裂を重ねていくと、そのうち専門分化が起き、たとえば皮膚の細胞からは皮膚しかできない、筋肉からは筋肉、骨からは骨、となります。例外は「幹細胞」で、たとえば骨髄の幹細胞からはすべての血球細胞が製造可能です。
 あ、もう一つ例外がありました。悪性腫瘍細胞です。これは本体の細胞とは違ったコースに進んでしまいます。ただし、腫瘍細胞を集めて人面瘡ができるかといえば、私は首を横に振ります。腫瘍は腫瘍、それが「分化」してうまく人間の顔になり喋るようになるのは、特定の臓器に専門分化することをやめた腫瘍であることの“自己否定”です。

 幹細胞(stem cell)はちょっと不思議な器用さを持った細胞でして、「自分自身を複製する(万能を保持する)」ことと「細胞分裂で分化した細胞を生み出す(万能を捨てる)」ことを上手く両立させています。私が学生の時には血液の幹細胞だけを習いましたが、今では神経幹細胞・肝幹細胞・皮膚幹細胞・生殖幹細胞など、全身あちこちに幹細胞があるそうです。こんなに習ってないぞ、と言いたくなりますが、もしかしたら私が授業で習ったのを忘れただけ?
 で、「絶対これは授業では習わなかったぞ」と自信たっぷり断言できるのがES細胞とiPS細胞。どちらも「万能細胞」ですが……この二つ、“フルネーム”で言えます?
 前者は、Embryonic stem cells(胚性幹細胞)。後者はInduced pluripotent stem cells(
人工多能性幹細胞)。どちらも「stem」(幹)がキモなのです。ただヒトES細胞は倫理面をクリアするのが難しいし(だって「ヒト」なんですから)、ソウル大学黄禹錫教授(当時)のヒトES細胞捏造事件が拙かったですね。(時期的に近い、日本の旧石器捏造事件、欧米を股にかけた常温核融合論文捏造事件も思い出します)
 医学的にはES細胞に非常に期待していたのに、その研究が下火になってしまって残念でしたが、iPS細胞が登場してくれて安心しました。できることなら私の脳の活動度が落ちる前に、そういった「s」細胞を利用した医療が実用化して欲しいものです。人面瘡のような複雑なものではなくて脳(の予備)を私の身体のどこかにつけてくれるだけで良いですから。


固定リンク | コメント (0) | トラックバック (1)

 なつかしの昭和30年代、若い人にわかりやすくするなら『三丁目の夕日』の時代、夕暮れになると「○○ちゃ〜ん、ご飯よ〜」の声や「カラスが鳴くからか〜えろ〜」が聞こえました。その頃遊びに夢中で帰りが遅くなると「夕暮れ時にはひとさらいが出て、サーカスに売られちゃうんだぞ」と脅かされることがありました。サーカスがこんなできの悪いガキを買っても使い道がないだろうと思うのですが、お説教はこう続きます。「毎日酢を飲まされて体を軟らかくして曲芸の練習をさせられるんだ」。曲芸ができるのは魅力ですが、毎日酢を飲まされるのはごめんなのです。
 どうして酢で体が軟らかくなるのか不思議でしたが、その根拠らしきものに出会えたのは、1960年代半ばのことでした。「酢卵」です。これは酢に生卵を殻ごと漬け込んだしろものです。そのまま冷蔵庫に入れておくと殻がだんだん酢に溶かされてきます。最後には殻が消えてぶよぶよした卵の中身が酢の中にむき出しになったらそこで箸を突っこんでぐるぐる。で、できた中身が自家製の「健康ドリンク」なのです。酢とカルシウムとタンパク質、ほらとっても健康的。はい、元気になりたい子どもは、ごっくん。うげ。
 そこで子供心に思うわけです。「酢で卵の殻が溶ける、ということは、酢で骨も溶けるんだろうな。だから体が軟らかくなるんだ」

 はい、大間違いです。
 もしも骨が溶けたら、それはつまりは骨粗鬆症ですから、体が柔軟性を増すどころか骨折です。
 ついでに言うと、「体の柔軟性」とは「骨の柔らかさ」ではなくて関節と筋肉と靱帯の問題です。関節の可動域がどのくらい広いか(どこまで無理なく曲げられるか、筋肉や靱帯がどこまでスムーズに伸縮するか)なのです。そこで骨は曲がり具合の主体ではなくて運動の支持体として働いています。
 さらについでに言うと、飲んだ酢が血管に酢酸のまま混入してそのまま骨の周囲に行ってそこで化学反応を起こす、なんてこともありません。酢酸は消化吸収され、pHは平衡作用によって中和されます(というか、少量の酢酸程度に対応できないのは不健康を通り越して重大な病気の可能性が大です)。

 どうしても酢を飲みたい人を止めるほど私は親切ではありません。ただ、私は酢の物やスシやドレッシングや冷麺にたらす形で酢を美味しく頂きます。台所や食卓の酢は食品であって薬品ではないのですから。


固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)