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2010.03.02 18:32 |  診療  |  その他(医療関連)  |  おかだ  | 推薦数 : 2

服薬のコンプライアンス

 私は内科医として「薬はきちんと飲み続けてください」と言い続けています。だけど、医者ではなくてただの個人として「きちんと100%飲み続けることができるか」と言えば……
 たとえばスギ花粉症の薬、これはできます。飲み忘れたら「自覚症状」が催促をしてくれますから。しかし、自覚症状のないものの薬は、たまに飲み忘れます。頻度にして数%。服薬カレンダーをつけたり携帯電話のアラームを鳴らすようにしたり、の工夫をしている人たちの真似をすればよいのでしょうが、今のところ自分の記憶力と注意力だけに頼っているので、忘れます。こんなに堂々と書いてはいけないことなのかもしれませんが。
 こんなときに「忘れてしまう悪い自分」を責めてもあまり良いことはありませんので、私は「きちんと飲む人」を褒めることにします。「お薬を忘れずにきちんと飲み続けている人。あなたたちは、エライ!」。きっと何か良いことがありますよ。私にも良いことがあればいいのですが。


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2010.03.02 07:01 |  その他(一般)  |  その他(医療関連)  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 2

絵に描いた餅

 昔々、19世紀後半にオットー式エンジンというものが発明されたとき、アメリカで目端の利く弁護士セルデンが「自動車」を“発明”しました。まだ存在しないエンジン(燃料は液体状の炭化水素)とまだ存在しない車体や駆動方式の組み合わせで「馬が無くても走る馬車」という基本概念を特許申請し、認められたのです。
 その直後にゴットリープ・ダイムラーが「ガス並びにガソリン原動機」を製造し1885年4月3日ドイツで特許が与えられます。同年8月ダイムラーはそのエンジンを積んだ「ライト・ヴァーゲン」(補助輪付きの木製二輪車)を作ります。1886年1月29日にはカール・ベンツの「ガスモトールヴァーゲン」に特許が与えられます。これはベンツがエンジンも車体もすべて作り上げた三輪車でした。
 ダイムラーとベンツに牽引される形で、世界にはガソリン自動車(やディーゼル自動車)が普及していきます。ところがモータリゼーションの波がアメリカに到達したとき、それを迎えたのが「セルデンの特許」でした。現実の自動車を開発・販売していた人たちは全員セルデンに「パテント使用料」を払わなければならなかったのです。
(もしも「アイデア」だけで特許申請できるのなら、世界は多くのSF作家に「アイデアを作品にするだけで特許申請しないでくれてありがとう」と感謝しなくちゃいけません。たとえばアーサー・C・クラークは「静止衛星」の概念を提唱しています。もしも静止衛星を使うたびに「アイデア使用料」を払わなければならないのだったら、たとえば天気予報の衛星画像なんか料金がどうなるでしょうねえ)

 「理論は重要だが、実践ぬきの理論は意味がない」これはニキータ・フルシチョフの言葉です。思わず「どの口が?」と言いたくなりますが、回顧録ではこの言葉のあとに「共産主義という偉大な理論を初めて実践したのだから、失敗や愚行があったことは大目に見て欲しい」という意味の言葉が続くので、自分が失敗もしたことをちゃんと認めているのだな、と大目に見てあげたくはなります。
 だけど自動車の場合、実践ぬきの理論(紙の上だけの「自動車」)が実践(実際に必死に考え手を油まみれにしトライアンドエラーを繰り返し欠陥を除き実用化し販売し改良を続ける)に優先したわけです。
 iPS細胞は将来ノーベル賞を受賞すると私は確信していますが、その時になって「自分は20世紀に学生の同人誌に『万能細胞』のアイデアを発表していたから、自分にもノーベル賞受賞資格がある」と主張する人が出てくるのではないか、なんて被害妄想的な発想までしてしまいそうです。
 さすがにアメリカでも「セルデン特許」は問題になり裁判が起こされましたが、解決したのは1911年になってから。ヘンリー・フォードの提訴を受けた裁判所がセルデンに「実際に図面通りに作って見せろ」と要求してそれが(当然)できなかったのを見て、でした。それまでは延々とパテント料の支払いが「絵に描いた自動車」に対して行なわれ続けたのです。

 結局何が言いたいのかって?  もちろん厚労省がいろいろ描く「画餅」について言いたいことがあるのですが、それについては皆さんも心の中に「絵」を描いてみてください。


参考図書
メルセデス・ベンツの思想』インゴ・ザイフ 著、 中村昭彦 訳、 講談社、1999年、2800円(税別)
フルシチョフ 封印されていた証言』ニキータ・フルシチョフ 口述、ジェロルド・シェクター&ヴァチェスラフ・ルチコフ 編、福島正光 訳、 草思社、1991年、1748円(税別)




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