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 帝王切開については以前書きましたが(「帝王切開」)、最近、日本で初めての帝王切開を扱った小説を読みました。
 日本初の帝王切開分娩は、明治12年横浜、エルドリッジらによって全身麻酔下で行なわれました。しかしそれから27年前に、埼玉の山奥で「日本初の子宮切開分娩術」が行なわれていたのです。それを題材としたのがこの『いとしきもの すこやかに生まれよ』です。

 日本初の帝王切開と言えば、私は『正丸峠の帝王切開』という短編を思い出します。こちらも、『いとしきもの すこやかに生まれよ』と同じ医師たちの苦闘を描いた短編で、『闘う医魂』(篠田達明)に収められています。5年近く前に読んだものなのでもうほとんど内容は覚えていませんが、作者が医師でもあるからでしょう、手術シーンがとてもリアルで血なまぐさかった記憶だけは残っています。

 『いとしきもの すこやかに生まれよ』では手術シーンは克明には描写されません。手術記録からの乾いた引用がメインとなります。こちらの方では、「医学」よりも、武州の片田舎に生まれたごく普通の人間が、様々な人為的な妨害や運命のいたずらに耐えて、自分の本意を達成しようとした「人生」とそれを取り巻く「時代」の方に力点を置いて描いていると私は読みました。さらに、ときおり混じる自然描写が爽やかな印象です。

闘う医魂 ──小説・北里柴三郎』篠田達明 著 、文藝春秋、1994年、1456円(税別)

いとしきもの すこやかに生まれよ ──日本初の帝王切開物語』秋山圭 著、 郁朋社、2009年、1000円(税別)



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2010.02.08 06:56 |  生活 / くらし  |  その他(医療関連)  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 0

コート

 今年は暖冬という予想でしたが、そんな予想を出した人をいじめるかのように寒い日々が続きます。ところで、寒い日にはコートの出番ですね。私は学生の頃から、自転車やバイクに乗ることを前提に、ハーフコートを着ることが多いのですが、そういった「機能」重視で作られたものの典型は軍用コートでしょう。


 ピーコートという、丈が短めでボタンが二列についているコートがあります。前の部分には切れ込みがあってそこに手を突っこんで温めることができるようになっています。もともとこれは海軍仕様で、厳しい環境の艦上で仕事ができるように作られたものだそうです。丈が短いのはたとえばマストに上ったりすることを想定しているのかな。二列のボタンもただの飾りではなくて、たとえば艦橋などで見張りについているとき横風が吹き込まないように右前と左前を切り替えて使うための実用品ですし、さらに、ボタンのどれかが割れた場合でもとりあえず上前を切り替えることが可能になる“予備”としての機能もあります。襟も立てたら首を守れるようにがっちりしています。
 空軍で私が思い出すのは、ボマー・ジャケットとかフライトジャケットですが、これは「コート」ではないので省略します。
 陸軍はもちろんトレンチコートです。こちらは第一次世界大戦での塹壕(トレンチ)戦で愛用されたコートで、防水生地で肩にはいろいろな装備をひっかけるためのショルダーストラップ、右胸には小銃の銃床を当てるための当て布、風の吹き込みを防ぐために袖や襟元にストラップ、ときわめて実用的です。実用的であると同時に、とても格好良く見えます。

 ただし、いかに格好良いトレンチコートでも、銃弾と塹壕足は防いでくれませんでした。
 「塹壕足」は……あまり気持ちの良いものではないので、画像を見たい方は自己責任で「塹壕足」をGoogleで画像検索してみて下さい。底に水が貯まって冷たくじめじめしている塹壕で水につかったままずっと何日も過ごしたらその人の足がどうなるか、これを正確に想像できる人はなかなかいないだろう、とは言っておきます。
 ちなみに、環境の悪い塹壕で長期間過ごすことによって生じる悪影響は、もちろん塹壕足だけではありません。それについてフィクションで手っ取り早く知りたければ……
 『西部戦線異状なし』(原題 Im Westen nichts Neues レマルク著、秦豊吉訳、新潮社(新潮文庫レー1)、1955年初版(87年56刷)、480円)
をどうぞ。


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