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2010.02.07 07:21 |  映画 / 音楽 / 読書  |  その他(医療関連)  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 1

原始人以下

 1991年にアルプスの氷河から発見された5000年前の新石器時代の人のミイラ(*1)や、1996年アメリカ北西ワシントン州コロンビア川土手で発見された9000年以上前の人骨(発見地にちなんでケネウィック人と呼ばれますが、縄文人と共通の骨格だそうです(*2))にはいくつかの共通点があります。たとえば歯がひどくすり減っていたこと(おそらく食べるものの影響でしょう。とても固いものを食べていたか、あるいは砂粒が混じっていたか)。それから、ひどい骨折などの重傷を負っていたがそれを生き延びた経験を持っていることが骨から読み取れます(骨折が癒合して、その後活動していたことがわかるのです)。日本で発掘される縄文時代の人骨にも、ひどい骨折が治ったあと(副木をあてたとしか思えないものもあるそうです)や、骨盤に鏃が刺さっていてその回りに新しい骨組織ができている(回復している)ものが発掘されています(*3)。

*1)『5000年前の男』原題“Der Mann im Eis”(コンラート・シュピンドラー)
*2)『縄文人は太平洋を渡ったか ──カヤック3000マイル航海記』(ジョン・ターク)
*3)『病が語る日本史』(酒井シヅ)


 現代では骨折は「治る傷病」です。基本的には折れたところを固定し、骨細胞が少しずつ骨を再生してくれるまで待てば良い。本人の生活は不便になりますが、それは周りの人間が介助や援助をすればよいことです。
 しかし、石器時代の“野蛮な原始人”の立場になってみたらどうでしょう。重傷を負った人間は、はっきり言って邪魔者です。それでなくても毎日の生存のために必死の生活です。外敵(猛獣や他部族の人間)から家族や部族を守り、狩猟/採集で食料を毎日集めなければなりません。怪我で寝ている人間は、防衛にも餌集めにも役立たずで、しかもせっかく集めてきた大切な食料を消費するだけの存在です。安全で豊かな生活をしているならともかく、ギリギリのところで生きている場合には、その一人の存在そのものが一族の存亡の鍵を握ることもあるでしょう。
 おそらく「役立たずは死ね」と捨てられたり、食べられちゃった人もいたのではないかと私は想像します。それでも、重傷を負っていても、看病され回復するまでの安全と食糧補給が保証された人が数千年前に存在していたことは確かです。

 現代社会のことを私は思います。「自己責任」とか「受益者負担」とか、社会の中で弱い立場の人に向かって冷たい態度を平気で示す人間がいますが、その態度を“原始人”以下、と評価しても良いですか?

 

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