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しゃっくりを漢方医学の世界では吃逆(きつぎゃく)とおどろおどろしく言います。本体は横隔膜の痙攣。横隔膜は「膜」と名前についていますが実は腹式呼吸に重要な筋肉ですから、それが長時間痙攣したら呼吸に影響が出ます。(焼き肉屋ではハラミと呼んでいたはず。見たら(あるいは食べたら)わかりますが、立派なお肉で、たしかに膜ではないですね。昔(まだ狂牛病なんて言葉が登場する前)国内畜産保護のために外国からの食肉輸入制限があった頃に「これは肉ではなくて膜である」じゃなくて、「肉ではなくて内臓である」という名目で堂々と輸入していたような覚えがあります)
たかがしゃっくり、と思うかもしれませんが、怖いことがあるので油断ができません。横隔膜の支配神経は横隔神経というそのまんまの名前ですが、なぜかすぐそばの胸椎や腰椎ではなくて遠い頸椎から出て首・胸を通って横隔膜まで伸びています(人類の祖先の動物では、横隔膜は首にあって何かをしていたのかもしれません)。神経が走る途中に何か病気があって横隔神経を刺激したりあるいは病気が直接横隔膜を刺激したら、それがしゃっくりの原因になります。たとえば、甲状腺腫瘍・食道憩室・胸膜炎・肺炎・肺癌・大動脈瘤・胃癌・腹膜炎……もっと上の病気だと、脳出血・脳梗塞・脳炎……全身疾患だと、尿毒症・敗血症・低血糖……たかがしゃっくり、されどしゃっくりです。
ひどい吃逆で夜間救急を受診をした患者さんに医者が「しゃっくりなんか、柿のへたでも煎じて飲めばいいんだよ」と言いつつ診察したら実は大変な病気が隠れていた、は「苦いカルテ」で読んだのだったかな。
で、本日のお題、「柿の蔕(へた)」。実は「しゃっくりには柿の蔕」の漢方薬が実在します。その名も「柿蔕湯(していとう)」。「調べてこわい病気が存在しないことはわかった。でも、しゃっくりが出る」場合にはこれを使うことを考えてもよいでしょう。柿の蔕と丁字(クローブ)、生姜が入っています。以前はそのへんの薬局では売ってなかったのですが、今はネットで見るとどこでも手に入りそうですね。
それ以外でしゃっくりの治療というと……私は、長い棒であるところをぐいっと押さえてしゃっくりを止めたことがありますが、これをここに書いて素人にうっかり真似されて拙いことが起きたら困るので、内緒。民間療法(?)で「わっ」と驚かすのは、おそらくびっくりして一瞬息を呑んで横隔膜に強い刺激が行くことで痙攣が止まる効果を狙っているのでしょう。舌をつかんで前方に引っ張るのも効きそうです。直接つまんだら滑るから、乾いたハンカチ(きれいなの)で挟んで引っ張ると良いかな。これはのどの奥を刺激することで横隔神経にも刺激を与えるやり方です。
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