2009年春に日本で行なわれた防疫は、「敵は水際で殲滅、一兵たりとも上陸させない」と同じ発想の作戦でした。「ウイルスを一個たりとも国内に侵入させてはならぬ」ではなくて「サーベイランスをきちんとやる」のだったらよかったのにね。
インフルエンザの簡易検査。会社などで「検査して陰性という証明をもらってこい」という要求をするところがあったのだそうです。これには二つの問題があります。まずは検査の限界。感度と特異度、という言い方をしますが、「存在するウイルスをどのくらい(何パーセント)引っかけることができるのか」と「引っかけたウイルスを正しく判定できるか」とが、どんな検査でも「二つとも100%」ということはありません。必ず取りこぼしや判定ミスが混じります。ましてや「簡易検査」ですよ。それさえすれば安心、なんて、どうして言えたのでしょうねえ。
BSEでの全頭検査。たしかに全頭検査をしたら絶対安心、のように見えます。ただ、検査には限界があります。検査の精度の問題と確率的に必ず存在する人為的なミス。これを考えると「全頭検査をしていれば日本はBSEに関しては絶対安心」とは私には言えません。人的・金銭的・時間的コストを考えて、「全頭」と「検査しない」の二者択一ではなくて、その間のどこかにアナログ的に線を移動した方が良いんじゃないか、が現在の私の考えです。
HIVの血液検査も同じです。これも「検査で陰性だったからもう安心」ではありません。この検査にも感度と特異度の問題がありますし、病気自体のウインドウ期の問題もあります。
「安心したい」は人間としては当然の欲求です。でも、欲求を最優先して科学をないがしろにすると、医学では間違いの元となります。「安心できない宙ぶらりんの状態」にも耐えられるようにするためには、何をすれば万全なんでしょう?(……あれ?)
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