そろそろスギ花粉が飛ぶシーズンとなりました。
日本列島の南西部では例年2月上旬から中旬には飛び始めてどんどん北上してきますので、スギ花粉症を持っている人はそろそろ準備を始めておいた方がよろしいかと思います。特に坑アレルギー剤は、症状が出る1〜2週間前からのみ始めておくとスギ花粉に出くわしたときに軽くすみます。それが逆に無防備の状態でどんと花粉を吸い込んで鼻も目もぐしゃぐしゃになってしまうと、これは少々の薬ではなかなか収まりません。
実は私はスギ花粉症とは30年以上のつきあいでして、はやいところ縁を切りたいと思えば思うほどしがみつかれているような……ただ、年を取って免疫反応が元気をなくしてきたためか最近はそれほど激烈な症状が出なくなったのが救いで、「加齢のメリット」を享受しています。
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直接お会いしたことはありませんが、ホンダの創業者本田宗一郎さんは私が特別な尊敬を捧げている人の一人です。その本田さんが書かれた『私の手が語る』は本来医学とは無縁の本ですが、医者である私にとって特別なことばがその中にありましたので紹介します。
「心の修理業」と題された章の前半、「車をこわしたお客さんは、修理工場に来たり、電話で連絡してきたりするまで、さんざん苦労し、憤慨し、動揺しているのがふつうである。機械もこわれているが、お客の心もこわれている。」、そして章の後半、ホンダ・インターナショナル・テクニカル・スクールの学生たちに校長として話す「自動車修理の仕事に従事して、お客さんと接したとき、車をなおしたうえで、その人の不安や怒りを取り除いてやることができたら、それは素晴らしいことである。親切というかたちで、そういう生きた哲学を使える人になって欲しい」、がそれです。
本田さんは、お客に信頼されにくい“若造の修理工”の時代から、単に車の修理が上手いだけではなくて、ちょっとした心遣いでお客さんの信頼を勝ち得るように努力していたのだそうです。
「車」を「体」に読み替えるだけで、そのまま私の世界に通用する言葉になります。いや、読み替える必要さえないかもしれません。こういった一般性をもった言葉を自分の体験から豊かに汲み出すことができ、さらにそれを他者に伝達できることがすごい人の証拠なのでしょう(本田さんの場合にはそういった“証拠”を今さら探す必要はないでしょうけれど)。
「これは負けてはいられない」と私は呟きます。勝ち負けの問題ではないんですけどね。
そうそう、本書の各章はそれぞれ2〜3ページずつにコンパクトにまとめられています。取り上げられる題材も多彩で、穏やかなユーモアにくるまれて平易な言葉で深い哲学が示されています。もし本田さんの時代にブログがあったなら、きっと彼は超人気のブロガーになれたのではないか(それも「有名人だから」ではなくて「ブログの内容がすごい」ことで)と私は想像します。足元にも及ばないのはわかっていますが、それでも何とか大差で負けないように頑張ってみようか、と私は思います。生きる姿勢の問題であって、勝ち負けの問題ではないんですけどね。
書誌情報:『私の手が語る』本田宗一郎 著、 講談社、1982年
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