日本では「役に立たないもの」は嫌われます。たとえば壊れた機械、場所ふさぎで高く売れるあてのない美術品、役に立たない人(病気、障害、極貧……)……
福祉の現状とか介護保険でのリハビリテーションの扱いを見ていると、ここでも「役立たずは嫌い」が露骨に露出しているように思えます。ただ、厚労省のこういった態度には、もちろん「コスト削減」がベースにあるでしょうが、「世間の(「役に立たないもの」への)冷たさの反映」も大きく作用しているのではないか、と私には思えます。
だけど、たとえば脳卒中の後遺症を抱えた人をまるでこわれたおもちゃのようにぽいと捨てる態度、自分の親や子どもに見せたいですか?
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ある患者さんのご臨終で、そのことを家族の皆さんに告げたら、その中のお一人がいかにも不思議そうに「心臓が止まったんですか?」と尋ねられました。
こちらはこちらで不思議に思いましたが、よくよく聞くと「心臓ペースメーカーを植え込んでいるから、もう心臓はずっと永遠に止まらないものと思っていた」とのこと。
状況がそんなものでなければ、私は笑っていたかもしれません。
心臓ペースメーカーというのはあくまで「心臓のペース(動くリズム)」を電気信号を送ることで作るもので、心臓の筋肉そのものを直接ぐいぐい動かしているものではない、ということを説明したらすぐに理解してもらえましたが、おかげでこちらは死後直後にするべきもう一つの説明にスムースに入っていけました。ペースメーカーの摘出です。
心臓ペースメーカーにはリチウム電池が使われていますが、そのリチウムの沸点が1300度。そのまま火葬場に行くと熱で破裂することがあるのです。(たまに「爆発してお釜が傷む」という人がいますが、爆発ではなくて破裂です) ですから私は極力ご遺体が院内にある内にペースメーカーを埋めたチームに連絡してペースメーカーを摘出してもらっていました。
なおこの問題に関して、病院ではない視点からの考えが「新しいペースメーカの考え方と患者さんの死亡」で読めます。
ペースメーカー植え込み術は、私の県では私が医学部を卒業した頃に盛んになりました。症状によって様々なタイプがありますが、心臓にカウンターショックをかけることができる埋め込み式のペースメーカーの話を30年近く前に講演会で聞いたときは、私にはショックでした。今あちこちにあるAEDの小型版を胸に埋め込んでいるようなものです。これだったらそれこそ「ペースメーカーを埋め込んでいるから、心臓は止まらない」に近い状態になれたかもしれません。1秒に1回ずつどっかんどっかん電気ショックを与えたら、とりあえず「心臓が動いている」にはなれるかもしれませんので。
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