出張などで病棟に医師が少なくなっていて、いろいろくるくる動いていたら、看護師さんが「○○先生担当の患者さんのμさんの血圧が下がってます」と。とりあえず行ってみると、ふだんより血圧が40くらい下がってます。印象論ですが、重症感はありません。意識はしっかりしていて「特に左下のお腹が、痛くはないけれど苦しい」と。でも触ると別にすごい所見はありません。聴診では腸がずいぶん活発に動いています。普段は下痢と便秘を繰り返す老人で、先週は下痢が続いたが今週になって便秘になったので昨夜は下剤を服用している、でもまだ排便はないとのこと。
なにしろ情報がないので困りますが、私はこういった場合、まず一番怖い病気を考えます。たとえば腹膜炎(若い人の腹膜炎では筋性防御といってお腹がかちかちになりますが、老人だとそこまで固くならないことが多いのです)、あるいは腸閉塞。そこで大急ぎで採血検査とお腹のレントゲンの指示を出しました。血液検査はほとんど異常がありません。レントゲン写真では、腸閉塞の所見はありません。肛門を入ってすぐの直腸にかちかちの便が見えます。そしてその上に、柔らかめの便とガスが行列を作っています。
昨夜飲んだ薬は、腸を刺激する作用があります。ところが刺激された腸が便を出そうとしても、出口で「栓」が立ちふさがっているため、腸の動きは空回りします。しかし薬は容赦なく刺激を続けます。結局腸を動かす迷走神経が過剰に働かされてその影響でお腹は苦しくなり血圧も下がった、というストーリーを私は組み立てました。では解決は? 通じ薬をお腹の中から取り出すわけにはいきません。ならば「栓」を抜けばよろしい。便を出すための座薬を使ってみたら両手一杯分の排便があり、同時にお腹は楽になり血圧も元に戻りました。
幸いなことに私の推論は正しかったようです。それは良いのですが「おかだ先生、今夜の通じ薬はどうしましょう」と聞かれてしまいました。下痢も困るが便秘も困る。薬を使うべきか使わざるべきか、さて、ハムレット。
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先日のある集まりで、様々な地方の小さな公的病院が変動の波に洗われている実情をいろいろ知りました。
たとえば……病院が民間に売られて職員が一挙に総入れ替えになった/病院が来年度から無床診療所になる/病院が19床の有床診療所になった(診療所だから当直の義務はないのだが、入院(入所?)患者がいるので放置できない、と、医師二人が交互に隔日で当直をしている)/常勤医師が半分に減ってしまったため残った医師が疲労困憊/医師ががくんと減ってしまったため個人的ツテを頼って診療の応援を要請したら行政が行政区画を越えての応援はいかがなものかなどと難癖をつけた……各地で病院のダメージは確実に増加し続けています。
総務省をはじめとする行政はとにかく自分の目の前から「赤字病院」が消えればそれで機嫌がよいのでしょうが、それで日本の医療は本当に大丈夫? 地方の医療を危機的状況に陥れるよりも、きちんとした整備を考えるのが行政の仕事だと思えるのですが。
私の個人的感覚では、「郡」というのは生活圏としてはちょうど良い規模に感じられます。ですから一つの「郡」に一つの一次救急病院、いくつかの郡(や小さな市)を集めて二次救急、三次救急は県に数箇所、というのが適当なビジョンではないかと感じられるのですが、行政からそんな「計画」が示されていましたっけ?(特に「郡」のところ) ついでですが、上記の二次救急では、県境は無視して良いと思っています。飛地もあるし歴史的に県境を越えての交流が深い地域もありますから(行政官でそういった「境界」に異様に拘る人がいますけれどね)。となるといっそ県境にこだわらせないために道州制の導入を、と言いたくなりました。
※上を書いていたら「常勤医師」が突然「常勤医死」に変換されてしまい、ぎょっとしました。ATOKもなにかいろいろ感じているようです。単に“疲れ”が貯まっているだけかもしれませんが。
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