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2009.05.31 17:41 |  診療  |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  おかだ  | 推薦数 : 4

 ppm

 医療機関ではほとんどの医療用器材は使い捨てになっていますが、中には消毒して再利用しているものもあります。その消毒方法で今でもポピュラーなものの一つは「機器の消毒液への漬け込み」です。
 ある日ある病院にある保健所からの定期検査がありまして、病棟を見て回った保健所職員が流しに目を留めました。水槽にいろいろ漬け込まれています。「この消毒液の濃度は?」「マニュアル通り○パーセントで……」「パーセントなんかどうでもいい。ppmで答えなさい」
 ……は?
 パーセントは“percent”または“per cent”、つまりは「百分率」です。ppmは“parts per million”、つまり「百万分率」。単純にパーセントをppmに変換するのなら1万をかければすみますが、なんでこんな計算をさせられるのかがわかりません。「消毒液作成時には体積で量っているけれど、まさかその体積百分率を質量百万分率に変換することを求められているのか、でもそんな計算に何の意味がある?」などといぶかしんでいると「答えられないだろう。分子量をちゃんと知らないと計算できないはずだ」
 …………は?
 「それはモルでは?」と言いかけましたが、こちらの言うことなんか全然聞いてはいません。得々となにやら自説を展開中でした。余談ですが、不必要によく喋る人はどうしてあんなにすぐ上の空になってしまうのでしょうねえ。
 すぐに自分の話に無我夢中になる人の話を中断したら不機嫌になるでしょうし、うっかり「あんたの言うことは間違っている可能性がある」なんてことを言うどころかほのめかしただけでも不興を買って別のところで「監督官庁の権限」を振り回されかねないので、こちらはお説ごもっとも状態になりました。私は横暴な権力の前ではヘタレです。(ちなみに、「マニュアル通り液は作成しているけれど、時間経過と使用につれてその濃度は変化している」なんてことも言いませんでした。だって聞かれなかったんだもの)

 ついでに言うと「0.5%」と「5000ppm」とは“まったく同じもの”ではありません。有効数字の問題が生じるのです。どこを四捨五入したものかで話は違ってきますが、書かれた数字の末尾までが有効数字としたら、「0.5%」は「0.45〜0.54%」までの誤差があり得ますが、「5000ppm」と言いきった場合には「4999.5〜5000.4ppm」までしか範囲が許されないことになります。「5000」と「4999」と「5001」とは“違う数字”なのですから。


※本日のお話もフィクションです。誰が何と言っても、フィクションですってば。


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 地球上で重力にさえ耐えきれなくなったような重病人は、月面上とか衛星軌道上の宇宙病院だったら長生きできるのではないか、という夢想が昔からあります。実際にどうやってその体を宇宙空間まで持ち上げるか、という問題はありますが、心不全の人などは心臓がずいぶん楽できて良さそうに思えます。
 では、実際に宇宙で長期間過ごしたら、人体はどうなるのでしょう。

 靴ひもを結ぶとき、私たちはごく自然に上体を屈めます。ところが無重力(あるいは微少重力)環境ではこの重力を利用した行為が困難です。ですから宇宙では靴(足)を持ち上げる方が楽です。何が言いたいかと言うと、宇宙では地球の常識が通用しないのです。
 無重力(あるいは微少重力)環境では、重力があるところで進化した人体は様々な現象に悩まされます。まず「上下」がないことからめまいが起きます。また、地球周回軌道での衛星やステーションにいる人間は常に落下し続けているように感じるそうです(実際に「自由落下」状態なのですが)。さらにその「めまい」が人間の交感神経を刺激するか副交感神経を刺激するかで各個人の症状が異なります。前者では「冷や汗、顔色が青くなる、手足が冷える」、後者では「生唾、胃の症状、嘔気嘔吐、下痢」などが出現します。
 体内の血液は、重力で血液が下がるのに抗して上半身(特に脳)に血液を上手く送るように進化の過程でシステムが作られています。それが急に重力が消えたら、血液は「上に厚く」配分されてしまいます。顔はむくみまぶたが腫れて目は細くなり首や額の血管が腫れ上がります(逆に脚は細くなります)。
 体液が上半身に集中した結果、たとえば鼻が詰まって味がわからなくなります。その場合には強いスパイス(特に劇辛系)で「味」を感じることが可能ですが、時には何を食べても「ゲロの味」になることがあるそうで、そうなったら悲劇です。ただこの「鼻が詰まる」は、風邪で詰まったのとは違って、たとえば逆立ちで頭に血が集まった状態にそっくりだそうで、向井千秋さんは一晩寝たら直ったそうです。
 血液だけではなくて、消化管の中身も重力が消えると戸惑います。どちらに行ったらわからなくなってしまうので、とりあえず手近の“出口”に殺到することがあるそうです。消化管自体も重力がなくなって上に持ち上げられています。お腹はへこみウエストは細く、その分胸は分厚くなります。宇宙では理想のスタイルが実現?

 骨は「静的」な臓器ではなくて、毎日「動的」にその構造が改変されています。破骨細胞が毎日せっせと骨を破壊し、その後から骨芽細胞が新しい骨を作る、そのバランスによって骨は成長または維持が行われています。そこで重要なのは「骨に与えられるストレス」。運動負荷などが大きい人はそれに耐えられる骨になるし、楽な生活の人は楽な骨。したがって、無重力でぷかぷか浮いている人は、「それなりの骨」で良いと骨の方が判断してだんだんすかすかの骨になっていきます。
 筋肉もそうです。骨折をしてギプスを巻いた経験者なら説明は不要でしょうが、筋肉は使わないとすぐに細くなります。したがって宇宙で「体力」を落とさないためには、筋力トレーニングをする必要があります。あるいは定期的に遠心分離器に入った方が良いのかもしれません。
 重力がなければふわふわと“楽”ができるかと思っていましたら、体を維持するためには意外に苦労が必要なようです。


参考にした本:
絶対帰還。 ──宇宙ステーションに取り残された3人、奇跡の救出作戦』原題“Too Far From Home” クリス・ジョーンズ 著、 河野純治 訳、 光文社、2008年、2300円(税別)

向井千秋の宇宙と体のおもしろい関係』NHK出版 編、NHK出版、1995年、1262円(税別)

ヒトはなぜまっすぐ歩けるのか ──「めまい」とバランスを科学する』小池透 著、 第三書館、1996年、2500円(税別)



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