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<  偽装された嫉妬 | メイン |  癌を活かす >
2009.03.03 07:08 |  診療  |  その他(医療関連)  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 1

 MPQC

 「倫理学」が必要なのは大学にいる学者だけで、一般人が持っているのは「倫理観」、は以前どこかで書いた覚えがありますが(こちらではなくて、mixiの方だったかな)、医学の世界で「医学には倫理が必要だ」と強く主張する人に限って「その倫理の内容や基盤は?」などと問いただそうとすると、特定の宗教が登場するのはまだしも、古代ギリシアの哲学者が出てきたり、あるいは説明抜きでえらい剣幕で「倫理も知らないのか!」と怒られたりします。
 悪いんですが、「倫理」という単語だけでは私には何も伝わりません。それは“物語”についている短いタイトルだけですべてを判定しようとするようなものです。(「羅生門」は京都の観光ガイドや門の建設法を論じた本ではないし、「若草物語」は「若い牧草の物語」ではないでしょ?) そして「倫理観」は各個人の生い立ちや価値観が異なるのに合わせて微妙に食い違っているのが普通です。というか、すべての人間の判断が常に一致するのだったら、倫理なんてものに最初から出番はありません。「社会」が「それぞれ価値観の違う人の集合体」であるからこそ、その“潤滑油(人間関係を円滑にする“ツール”)”として「倫理」が必要になるのです。もしも「唯一絶対の真理」としての倫理が社会に存在するとしたら、その社会はがちがちの宗教国家のようなものでしょう。ドグマの下には一切の変更も異議申し立ても許されず、広く議論をする(考えの違う人間が、思想の自由と言論の自由を行使する)ことも認められない世界です。
 ……しかしそれは本当に「倫理的な社会」なのかな?


 私が使う医療倫理はMPQC(4分割)ですが、これも「タイトル」だけでは何も伝わらないでしょう。詳しくはこのサイトを読んでみてください、で終わったのでは不親切ですから、簡単に説明を試みます。
参考サイト「臨床倫理の4分割法

MPQCとは、MはMedical Indication「医学的適応」、PはPatient Preference「患者の意向」、QはQOL(Quality of Life)「生きることの質」、最後のCはContextual Features「患者の周りの状況」です。この4つの要素をカンファランスの場で各患者毎にすべて拾い出して記録・判断してその上でどのような治療と生活をするのかを決定しよう、というお話です。重要なのは、4つの要素をきちんと考えること、オープンに議論すること、です。
 Mだけで決定するのはパターナリズム(家父長主義)ですから、インフォームド・コンセントをベースとする医療にはなじみません。医者と患者は対等ですから、それぞれの主張や要望も対等に扱われます。
 さて、ここで問題になるとしたら、日本ではときに患者本人よりも重要視されることがある「家族の意向」です。いくら目をこすってもMPQCに「F」Familyは見えません。強いて言うなら「患者の環境因子の一つ」つまり「C」の一部でしょう。ただし、患者本人が自分の意見を表明できない状態の場合に、家族が法的な代理人として発言した場合、あるいは「普段からこの患者本人はこのように考え発言をしていた」と言った場合には「P」として扱うことが可能です。だけど、単に『自分としてはこうして欲しい』という「家族の要望」でしたらそれは「C」です。なかなかそういった区別がきちんとできる人は少ないでしょうが、発言するときには主語を明確にしてもらうしかないでしょう。その要望は本当は誰の要望なのか、を。
 それはMの方にも言えるでしょう。患者のため、と言って実は医者が楽をしたいだけ、ということもあるでしょうし、そもそも『患者のため』を錦の御旗にするのは、それこそパターナリズムです。

※人の為と書いて偽と読む、です。(そういえば、信者と書いて儲けと読む、というのもありましたっけ)

 MPQCで大切なのは、もちろん結論もですが、そこに至る過程が本当に倫理的なものかを自分たちで考え行動し確認し続けなければならないことでしょう。誰かエライ人に決めてもらうのではなくて。
 さらに、誰の意見が通ったかではなくて、結果として本人が幸せに一番近くなれたか(選択し得る中では一番患者本人の満足度を高くできたか)どうか、が大きな問題でしょうね。


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