「30年後、厚生年金給付2割減 政府見通し、年収の5割」(朝日新聞)
思わず自分の年齢をこの「見通し」に当てはめて「年金はどんどん減るのか。結局何歳からいくらの給付になるんだ?」とがっかりしましたが、よく考えてみたら厚労省も度胸がありますね。20世紀にあれだけ出生率予測を外しまくって「私たちには出生率に関する予測能力はありません」と天下に知らしめた“実績”があるのに、「厚生省と厚労省は違うんです」なんでしょうか、今回は「出生率」だけではなくて「経済情勢(積立金がどのくらい年金基金に入ってくるかと運用利回り)」と「年金制度の変化」までコミで“連立方程式”を立ててまとめて予測しています。変数を多くしたらその分「予測」は当たりやすくなるんでしたっけ? いやあ、良い度胸というか性懲りもないというか、過去の実績から推定できるご自分の能力の限界を明らかに超えているんじゃないかと私には思えるのですが。この数字の結果が出る頃には自分はそこにはいないから好きなことが言える、なのかもしれません。
出生率予測の時になぜ外しまくったか、と言えば、「出生率は回復する」という“結論”が先にあって、それに合わせて“シナリオ”を作ったからです。で、今回も「年金給付は現役世代の50%(以上)」「景気は早期に回復する」という“結論”が先にあります。それに合わせてエクセルに入力する数字をあそこをいじりここをいじりと“数字遊び”をした結果が今回のものでしょう。ただ、官僚から見たらただのエクセルでいじくれる数字でしょうが、我々にはそれは“生活そのもの”です。
記事の最後に「検証結果では、出生率や運用利回りが前提を下回り、現役世代の手取りの5割を割り込むケースも示した。」とありますが、実はこれがお役所の一番言いたかったことでしょうね。私はここからメタメッセージを読み取ります。「年金がアテにできると思うなよ」と「国会答弁だって大臣が平気でひっくり返す時代だ。自分たち官僚が言ったこと(たとえば給付率5割)を国民はアテにするな」の二つのメタメッセージを。
そもそも数十年後に年金制度は、ご健在なのかしら?
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私は「血沈(赤沈)」がまだ“現役”の時代に医師免許を得ました。当時の外来にはたいてい血沈管がずらりと並んでいてそこに置かれたタイマーが1時間ごとに騒いでいましたっけ。
この血沈という検査は、採取した血液を抗凝固液(たしかクエン酸ナトリウム)と混ぜてガラス管に入れそのまま立てておくだけ、という簡便な検査です。そうするとあとは地球の重力が仕事をしてくれます。血液の中に含まれている赤血球が地球に引っ張られて少しずつ下に沈んでいきますので、その速度(時速何ミリで赤血球が沈んでいってガラス管の中身に上澄みができるか)を測定するだけ。今あちこちのサイトを見ると「赤血球沈降速度を略して『赤沈』または『血沈』」と書かれているところが多くありますが、「血液沈降速度」を略して「血沈」と言っていたのが、「沈降するのは血液ではなくて赤血球だ」ということで「赤血球沈降速度(赤沈)Erythrocyte Sedimentation Rate(ESR)」と言うようになった、と私の記憶は主張しています。(私が医者になった時代には「血沈」と「赤沈」が混在していましたので、「血沈」→「赤沈」はことばの歴史ではなくて私が聞いた順番かもしれませんが、ともかく私に教えてくれた人はBlood Sinking Rate(BSR)と言っていました。ついでですが私よりずっと古い世代はドイツ語でBSG(Bludsenkungsgeschwindigkeit)でしょう。これはモロに血液沈降速度です)
ふつうだったら血沈(赤沈)は1時間に10ミリ程度ですが、体にばい菌などが入って炎症が起きているとその速度が速くなります。では「血沈が早くなったら、感染症か」……実は即答ができません。炎症が起きる病気(たとえば○○炎といった「炎」がつく病気はほとんど)、それから外傷、膠原病や悪性腫瘍、肝硬変、貧血、心筋梗塞、関節リウマチ……わーい、許してくれ〜と言いたくなる数と種類の病気のラインアップです。一般外来で数が多いのは貧血でしょうか。薄い血液は邪魔が少ないからどんどん落ちていきます。
つまり、簡便だけどアバウト、がこの検査の特徴です。しかも病気になってから反応が陽性になるまで、病気が治ってから反応が正常化するまで、のタイムラグがけっこうあります。さらに個人差がけっこう大きい(「血液さらさら」の人と「血液どろどろ」の人で大きな差が出そうなことは、直感的にわかりますよね)。加齢によっても血沈はどんどん速くなっていくので(おそらくは加齢による貧血や栄養状態の変化(血清タンパクの減少など)の影響かな)、私は「年齢÷2」を目安にして、少々年寄りの血沈が速くなっていてもあまりそれだけで騒がないようにしていました(他にもなにか異常データや症状があれば話は別ですが)。騒がないのだったらなんで検査するんだ、と問い詰められたら返答に窮するのですが。
ということでもうちょっと“科学的”な炎症検査で血沈よりははるかに鋭敏に病気に反応するCRPが普及するにつれ、血沈管の出番は無くなっていきました。日本中にあったガラス管たちS、今はどこで何をしているのでしょう。
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