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 地上波テレビはなぜかどうしてもデジタルになるのだそうで、たぶん買い換え需要のためじゃないかな、なんてことを思っていましたら、健康保険のレセプトもオンラインにしなくちゃいけないと厚労省がなぜか頑強に主張しています。「医療制度改革に関する情報(レセプトオンライン化に関するもの)

 日本のお役人は「はいてく」がことのほかお好きな様子ですが、ITをいっとと読んでしまうような開業医は今からパソコンを導入して大量に文書を処理するのはちと辛いんじゃないかな、と私は思ってしまいます。年齢に関係なくパソコンに強い人やいろんな人が集まっている病院のような環境だったら何とかなるでしょうが。

 オンラインといえば、アメリカのゴアさんが副大統領をやっている時に「これからのアメリカはITで行く」と「全米情報基盤」(情報スーパーハイウェイ)の整備を大々的に始めたのを私は覚えています。これは国威だけじゃなくて実利も大きなものだったでしょうね。アメリカがトップを独走している限りネット関連はとにかくアメリカ以外の国はすべて“後追い”を強いられることになるのですから。

 「死語(53)結核緊急事態宣言」にいただいたPaul Carpenterさんのコメントからの連想で、「医療とオンラインというのなら、レセプトのオンライン化よりも、たとえばオンラインで遠隔画像診断ができる方がよほど日本の臨床には役に立たないだろうか」と思いました。小さな病院にいると(あるいはおそらく開業していても)大抵のことは自前でまかなうにしても、やはり「このレントゲン写真は、わざわざ紹介状を専門医に行ってもらうほどではないが、ちょっと読影の専門家やこの方面に詳しい人に見てもらうと助かる」という領域のものはけっこうあります。技術的にはCTはもちろん最初からデジタル情報ですし、最近は単純撮影もデジタルが増えましたから、そういったものはそのまま、アナログのは一度パソコンに画像で取り込んでデジタル化して、患者が最初にかかった医者が診断を迷うものを遠隔地の専門医に読影してもらうシステムを夢想してみたのです。
 これだと、コストはもちろんかかりますが、診断のダブルチェックになります。場合によっては治療法のアドバイスまでもらえるかもしれません。これは非専門医には大変ありがたいことです。生きた病診連携あるいは病病連携です。また細かいことですが、患者紹介をする時にも今のように患者さんにレントゲン写真を運搬してもらう必要がなくなります。
 ただ、セキュリティの問題がありますから、一般回線ではなくて、全国の医療機関をつなぐ専用回線を公共投資で。道路のような政治献金や集票効果やペイバックや天下り先は期待できませんが日本の医療の質を確実に上げるには役に立つと思います。あ、「医者なんかに公共投資で“サービス”するなんてとんでもない」という声が大きければ、一般回線を使用することになりますが、その場合には「もしセキュリティ事故が起きたらそれは公共投資の提案を妨害した自分の責任です」と一札入れておいて欲しいな。(私は「個人が気をつければいい」ではなくて「システムで事故を予防できる場合は可能な限りそれをするべき」主義者です)

 そうそう、こんなシステムが実現したら、放射線科医が「読影専門」で開業する、なんてことも可能になります。
 ついでですが、専用回線だったら、レセプトどころか、カルテ情報を将来各医療機関が共有することも可能になります。これは夢が大きすぎるので、ここまで。


 国策として医療情報ハイウェイの整備を津々浦々まで行う気は、政府には無いでしょうか。政治献金や天下り先としては魅力がないでしょうが……って、これはさっき言いましたっけ。最近物忘れが激しくて、私の頭の中にも情報ハイウェイを敷きたくなることがあります。本当は、ハイウェイそのものだけではなくてそこを流れる情報の質と量とが大切なんですけどね。


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 m3のブログ「医師が国政を目指す。」の記事「日経メディカル:英国の医療改革に学ぶ」を昨日読んで「そういえば日経メディカルはそのへんに転がっていたはず」と雑誌を発掘して読んでみました。

 1979年に誕生したサッチャー政権は「小さな政府」を唱えて「医療制度の効率化」を謳い、公的医療機関の競争原理導入と、それまで税でまかなわれていた国民医療への民間企業の参入を行いました。その結果が、不採算病院の閉鎖・医療職の減少・膨大な待機リスト(入院待ち・手術待ち)、でした。さらに国民の健康状態に“地域格差”が生じました。その失敗を受けて97年に誕生したブレア政権は、金をどんとつぎ込むと同時に医療の質向上を目指しての数値目標設定などをおこないました。(この記事で挙げられている数値目標の例は「救急外来での待ち時間が4時間以内」「家庭医への受診が48時間以内」です(イギリスでは家庭医に予約して受診しないと病院には原則として入れないはずですが、それでも48時間ですかぁ)。さらにこの記事では、数値規制逃れのためのあきれるような手口も紹介されています)

 この記事を読んでいて、私は英国と日本とを比較して考えていました。英国では、結果は失敗でしたが、少なくともサッチャーの「小さな政府」という基本ポリシーは明確でした。だから主な医療政策もその周辺の小さな政策もまとめて動かすことができました。で、それが失敗だったとなるとまず一番に行うべきはポリシーの変更です。「大きな政府」を目指すのではないでしょうが、少なくとも「小さな政府」はおしまい。基本が定まれば、メインの政策だけではなくてその回りの対策も整合性を持って改革に対応することができます。
 対して日本。小泉改革でも「医療費削減」が行われましたが、これは「小さな政府」を目指したものではありませんでした。それをにおわせるようなことは盛んに言ってはいましたが結局コトバがたくさん並べられただけで、予算規模や政府の実際の仕事の範囲を見る限り、実際には政府はどこも“小さく”はなっていません。医療“改革”でやったのは「とにかく医療費を削れ」運動のみ。だから政策の舵を切って「医療崩壊を防ぐ」方向に行きたくても、切る舵(変更する基本ポリシー)が存在しないのです。したがって今の政治にできることは、その場しのぎのつぎはぎ細工(金をちびちびちびちび入れる対症療法)だけです。これが私の見た論理的結末です。
 医療改革の結果から見たら私はサッチャーを高く評価はしませんが、少なくとも政治家としては失格ではないと思っています。ポリシーって何?オイシイの? の日本の政治家と比べるのが最初から間違いなのかもしれませんが。





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