おかだ
More プロフィール

Search

Calendar

<< 2008/12 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

新着コメント

 ドイツでは医者は配置制度になっているんだからそれを日本も見習えと主張する人がいるそうです。あなたたちは岩倉使節団か、と思わず私は呟きましたが、それでひょっこり歴史を思い出しました。偶然の一致でしょうが、岩倉具視を正使とする使節団が日本を出発した明治四年(1871年)にプロイセン国王ヴィルヘルム一世が(普仏戦争で進攻したヴェルサイユ宮殿で)戴冠してドイツ帝国が成立しました。それまでの“ドイツ”は数多くの君主国や少数の都市国家の連邦国家で(なんだか日本の藩幕体制を連想します)その中で中心となるのがプロイセンでした。で、そういう経緯で成立した国だからでしょうか、きわめて中央集権的なお隣のフランスとはずいぶん違って、ドイツでは制度のあちこちに地方自治を重んじるにおいがぷんぷんします。それがよくわかるのは、たとえば教育制度でしょう。各地に大学がありますが、偏差値によるヒエラルヒー(ドイツ語風に言ってみました)なんかありません(もちろん人気の差はありますが)。アビトゥーアに合格して大学入学資格を得た学生は(定員に空きさえあれば)どこの大学で学ぶこともできますし、そこで得た単位を持って他の大学に(これも定員に空きさえあれば)移ることも自由です。つまりドイツの「定員制度」は「どこでも平等」「移動の自由」が背景として存在しているからこそ健全に機能しているのです。
 そういった、歴史的・文化的・社会的背景を全く無視して、制度のほんの一部だけ都合良く切り取って“引用”する態度には、「無知」「視野が狭い」「思慮が浅い」あるいは「不誠実」のレッテルを貼りたくなります。

 ただ、人と議論をしたり何かを提唱する時にはそういった“四拍子”をそろえて良い、と言うのでしたら、私も日本の医療制度については脳天気な提唱をしたいな。「ドイツよりフランスが良い」と。だって、医者に限らず国民の多くが1〜2ヶ月のバカンスを平気で取れるんですよ。私なんか今年度の最長休暇は年末年始の4日間ですから、うらやましくてうらやましくて。ドイツよりフランスにしましょうよ、フランスに。
 あ、フランスを採用する時に「そのかわりに」はナシ、ね。ドイツを採用したい人だって「そのかわりに」は聞きたくないでしょう?



固定リンク | コメント (4) | トラックバック (0)

2008.12.23 07:38 |  その他(医療関連)  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 2

 成長ホルモンの輸入

 脳にぶら下がっている下垂体(かすいたい)は、指のあたまくらいの大きさ(小ささ?)ですが重要なホルモンをたくさん出す大切な臓器です。そのホルモンの一つに成長ホルモンがあります。これは文字通り人(子ども)を成長させることが主目的のホルモンですが、その分泌が適正レベルより過剰になると巨人症(あるいは末端(先端)肥大症)、不足すると下垂体性小人症になります。巨人を小さくすることは困難ですが、下垂体性小人症の場合は骨端線が閉鎖する前(子どもの骨がまだ成長している時期)に成長ホルモンを補充したら、体を成長させることが可能です。
 現在では「遺伝子組換え成長ホルモン」が製品化されていますので、それを投与すればよいのですが、では「遺伝子組換え成長ホルモン」がなかった時代にはどうしていたでしょうか。
 まず考えるのは動物からいただくことです。実際、昔は牛や豚からのインスリンがありましたし、骨粗鬆症に使うホルモンのカルシトニンには鮭のものもありました(サーモトニンという商品名でした……過去形で言っちゃったけど、今でもあるのかな?)。
 しかし、動物の成長ホルモンは人間には効かなかったようです。そこでつぎに考えるのは人体から。だけど「下垂体を取り出す」はつまりは「脳を取り出す」ことです。脳全体は残して下垂体だけ取り出したとしても取り出された人が困ります。そこで昔は人間の死体から脳下垂体を取り出してそこから成長ホルモンを抽出していました(頭蓋骨を開けなくても、顔面(鼻の穴だったっけ?)からのアプローチがあったはずです)。これを「下垂体抽出成長ホルモン」と言います。

 私が学生時代のお話です。
 たまたま授業で教師がその話を始めたのですが、非常に印象深かったので今でも覚えています。(「覚えています」と書きましたが、記憶は変質するものですので「事実」とは異なってしまっているかもしれません)

 当時の日本は「下垂体抽出成長ホルモン」を外国に頼っていました。(日本で「死体から脳を取り出し、そこからホルモンを抽出している」という話を聞いたことがある人はいないはずです。死んだ人はふつうそのまま焼き場に送りますよね) あるドクター(この話をしてくれた医師本人のことだったかもしれません)が北欧の小国に行って分けてもらう交渉をしたら「我が国にも十分な量はないのだけど、お困りでしょうから」となんとか少し分けてもらえたのだそうです。だけど患者全員を平均身長まで伸ばすにはとても量が足りないため、男女でそれぞれ身長の到達目標を設定して(具体的な数字は忘れましたが、たしか平均身長よりずっと低い数値だったはず)、そこまで背が伸びたら「もう君の分はおしまい。残りのホルモンは別の人に」とやっていました。ことばが悪いのですが、量が足りないからちびちび使うしかなかったのです。
 で、「また分けてください」とその国に行くと不思議そうな顔で「日本では自分の国の国民でまかなえないくらい成長ホルモン欠乏症が多発するのですか?」と聞かれたそうな。自分たちの国でも歯を食いしばって死体からの抽出をしているのだから、日本も当然それくらいの努力はしているだろう、という前提での質問でした。

 そのドクターは、とっても恥ずかしかったそうです。


※そういえば、「外国で移植を」の募金運動は日本では美談扱いです。それで日本人が割り込むことでその外国で誰かの順番が遅くなっていることには、マスコミは無関心ですが、そういった観点で取材をしたことは無いのかしら? イギリスでもかつては子どもの臓器移植は募金をしてアメリカに渡って、と日本と同じだったのですが、BBCは“そういった観点”から番組にしました。そのせいかどうか、今イギリスでは“自前”でやってますね。(『イギリスにおける移植医療の夜明け ──ベン・ハードウィック物語』エスター・ランジェン/ショーン・ウッドワード著、前田祐子監訳、はる書房、1994年)

 「高い志を持ったマスコミ」もこの世のどこかには存在しているようです。
 


固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)