こちらを向いて写っている顔写真、向かって右側はその人の顔の左、向かって左側は顔の右側です。当たり前のことを言っています。ただし、その写真が裏焼きになっていたら、「右が右で左が左」となります。もっとも人間の顔は厳密には左右対称ではないそうですから、よく知っている人の写真が裏焼きだったらじっと見て「これ、左右が変」とわかるかもしれません。
よく内科医が難しい顔をして眺めている胸部レントゲン写真、これも実は(原則として)「患者さんの体がこちら向き」に撮影されています。したがって、シャウカステン(レントゲン写真を見るために中に蛍光灯がたくさん仕込んである箱)に間違えて裏返しに写真をかけない限り「向かって右が体の左側、向かって左が右」となります。
このへんまではまだ右左の概念が直感的にわかりやすいのですが(要するに被写体となった人が、こちら向きか向こう向きか、なのですから)、わかりにくいのが輪切りの写真です。CTやMRIの写真は基本的に「人体の輪切り」ですが、その右左はどうやって決めているのでしょう。裏も表もないのですから。
実はこれは「宇宙の法則」ではなくて人為的な「お約束」で決まっています。
昔CTがまだ「頭専用」の時代には、仰向けに寝て輪切りになった頭の写真の、向かって右は右・向かって左は左、でした。脳外科医が手術の時に立つ位置(頭の上の方)から頭(の中)を眺めたのと同じ方向に設定されたわけです。
ところが時代が下がって、全身用CTが登場。胸や腹の輪切り画像が見られるようになると、同じ問題(どちらを「右」にする?)が起きました。そこで日本得意の「全体より部分最適」「複数の規格乱立」です。胸や腹の手術では術者は基本的に真横から、あるいは下から患者の頭の方向を見上げる体勢になることが多くなります(下腹部の手術の場合は上から下向きですが)。そこで胸や腹のCT画像では「画像の向かって右が患者の左、向かって左が患者の右」と決められました。
ややこしいでしょ? それでもしばらくはそれで日本の医学は動いていたのです。人間の頭の柔軟性には驚きます。まあ、各科が孤立してやっているのだったらそれで良いのですが(本当によいのか?)、私のようにいろんな科の人と話をする人間の場合、頭が混乱します。
今は幸い(?)頭のCTも胸や腹と左右が揃えられています(まだ右は右、のところもあるかもしれませんが)。ただ、脳外科のドクターは手術前にCTやMRIをながめて情報を自分の頭にたたき込んでからメスを持つ前に左右を反転させているのかな、とそのことは気になりますが。
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実際左右を間違えてレポートやカルテに書きそうになったことが何度かあります。
腎臓の左右とり間違え手術、あれは肝臓や脾臓など他の臓器との関係を一瞬でもみれば左右間違うことはないはずなのですが(内臓逆位は別として)。
ミスを減らすためには「システムの標準化」が第一歩なのかな、と私は思っています。
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