| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | |||
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
| 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
| 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
人は生まれてしばらくはオムツのお世話になります。そして、悲しいことですが、死ぬ前にもオムツのお世話にならなければならないことがあります。
私は老人病棟で紙オムツが使われている光景を、かつて日常の風景として眺めていました。そこで、その紙オムツを自分でも体験しておこうと考えました。これは「自分が他人に行なう医療的な行為はすべて医者である自分でも体験しておくべきだ」などというご立派な考えからではありません(もしこれを本気でやるとなると、手術などの血が流れるようなあるいは放射線療法のような下手すると自分の健康や命に関わる医療行為もすべて我が身で味わわなければならないことになり、とても私の身が保ちません)。知らないから知りたい、というまったく単純な好奇心からの思いつきだったのですが、もしかしたら実際の仕事の上で役に立つヒントが得られるかもしれない、という勘定高い目論見もあったのかもしれません。まあ人の心の深淵は自分でもわからないものですし、案外それほど深い意味はなかったのかもしれません。
私は現物を手に持って、まず看護婦さんやケアワーカーさんに絶対に尿を外に漏らさないような付け方のコツを習いました。自分の子どものオムツ交換は散々やってますが、大人用はどうも勝手が違いますから、まずは慣れた人にしっかり教わっておくべきでしょう。貴重な情報が無料で手にはいるのですから使わない手はありません。特に今回はオムツをつけてその上にズボンを履く予定ですので、絶対に漏らすわけにはいかない、と私の顔はすごく真剣だったことでしょう。
さて、パンツを脱いでオムツを当ててみると、どうもごわごわします。股の間の異物感と動作時のがさがさ感が、とっても邪魔です。履いただけでこんなにとまどいを感じ情けなく思うとは、私は自分が意外に弱いことがわかりました。
さて、排尿ですが……できません。当直室のベッドに身体を横にしてリラックスをして括約筋を開こうとするのですが、幼児期からおしっこはトイレでと躾られた後遺症(?)でしょうか、どうしても出てこないのです。余談ですが、将来骨折などで身動き取れなくなってベッドで便をしなくちゃいけなくなる予定の方は、ベッドの中で排尿や排便ができるようにあらかじめ練習しておいた方が良いかもしれません。
仕方がないので体を起こし、洋式トイレに腰掛けているつもりで少し力みました。やっとちょろちょろと出始めました。それにつれてぽわんと股間が暖かくなります。ちょろちょろじょろじょろとがんばって、なんとか膀胱が空になりました。それほどの異臭はありません。健康な尿にはアンモニアはそんなに含まれていないはずだから臭くないのだな、とちょっとだけ医学的なことを考えながら立ち上がると、股間の異物感は増加しています。紙オムツの吸水ポリマーがちゃんとお仕事をして、水分を含んで膨れたのです。股間にごわごわした分厚い異物が張り付いた感じは、生理時にナプキンを使う女性ならおなじみかもしれませんが、私にはなんとも妙な感覚です。妙な初体験です。
ここでさっさとオムツを外してしまうと「上手く排泄できた、よかったよかった」で終わってしまいますから、しばらく我慢してみることにしました。布オムツと違って紙オムツは表面がさらさらで快適、というのがウリのはずですから、それがどこまで本当かを確かめてみたい、という思惑もありますし、オムツをつけたまま気がつかれずに放置されている寝たきり老人がどのように感じているのかを体験する意味もあります。
とりあえず手を突っ込んで触ってみます。おむつの表面というか内面は特に濡れてはいません。科学の勝利です。TVコマーシャルどおり「さらさら」です。歩いて吸水ポリマーに圧力を加えてみます。もしかしたら水分が逆流してにじみ出てくるかもしれない、と思ったのですが、さすがにそんなこともありません。ただ、膨れたオムツが物理的に邪魔で股関節の動きが制限されるのと、含んだ水分の重さで腰が下に引っ張られる感覚があるのにはどうも違和感を感じてしまいます。
さらに、しばらくすると別の現象が生じてきました。股間が妙にぽかぽか暖かいのです。深部体温と同じ温度の水分が放出されてゲル化して、しかもそれが体表にほぼ密着しているわけですから温度がいつまでも下がらないのでしょう。股間がごわごわしてしかもぽかぽかしているというのは……大変不快です。柔らかい炬燵を股ぐらに当てているのではないのですから。そのうち、湿った感じがでてきました。もう一度私は手を突っ込んで触ってみましたが、別に濡れてはいません。どうも、閉鎖空間で逃げ場を失った水蒸気が、オムツの内側で飽和状態に達してしまったようです。ゲル化しているとは言っても水分は水分ですから、水蒸気の供給に不足はないのでしょう。
ずしりと重くてなま暖かくて湿気ている股間……これはたまりません。
それでも私はしばらく耐えましたが、結局排尿後一時間経ったところでギブアップをしました。暖かくて湿ったコンニャクを股間にずっと貼り付けているような不快感にはもう耐えられなくなってしまったのです。私は軟弱者です。
本当は大便の方も体験するべきなのでしょうが、根性無しの私はもうギブアップでした。「今は便意は無いし」と誰に向かってか一人呟きましたが、さて、それは本当でしょうか?
もっとも、「やる以上はちゃんと大便までやるべきだ」と主張される方がおられたら、どうぞ志願してください、というか、一人で勝手にやってみて下さい。紙オムツさえ手に入れば誰でもどこでも試すことはできるのですから。きっと貴重な体験ですよ。
※昨日のエントリー「産む体位」を書いたことで、前世紀に自分が紙オムツの体験をしていたことを思い出しましたので、当時のメモを探し出してまとめてみました。
固定リンク | コメント (4) | トラックバック (0)