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 日本の医者はなぜか外国語が大好きです。私が医者になった頃には、ドイツ語で書かれたカルテはいくらでもありました。戦前の日本の医学教育は「ドイツ様」(で、戦後は「アメリカ様」)なので、戦前教育を受けた人(あるいはそういった人に卒業後訓練を受けた人)はドイツ語を使うのが当たり前でした。で、私が医者になったのはドイツ語が劣勢になって英語が優勢になった時期です。部長のカルテはドイツ語で、副部長のカルテは英語で書かれていて、しかもみなさん“達筆”なため、いろんな苦労をしました。(“達筆”な点では私も実は大きなことも小さなことも言えませんが)
 で、そういったごちゃごちゃで育った若い人は、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまって、そのせいか変なことばに私はたくさん遭遇できました。たとえばカルテに胃癌が「Magen cancer」と表記してあったり申し送りの時に血圧を「Blut pressure」と言われたり。どちらのことばも、前半はドイツ語で後半は英語です。いろいろ聞いていると混ざっちゃうんでしょうね。日本以外では絶対に通用しないことばです。(おまけ。胃癌はドイツ語なら Magenkrebs 英語なら gastric cancer です。そういえば大文字小文字もぐしゃぐしゃです。ドイツ語では名詞は大文字で始めますが、それを英語での表記にも取り入れてみたり、ドイツ語の名詞以外の単語も大文字で始めてみたり……日本人以外にはとても見せられませんな)

 現代日本人は和製英語が大好きです。純粋な英語が好きな人には評判が悪いことばですが、実は戦国時代から伝統的に日本人は外来語を取り入れたらそれを自己流に調理してしまうのが得意技でした(初期のもので、カルタ・カステラ・シャボン・イギリスなどいろいろあります)。日本人は言語感覚では柔軟性の塊と言って良いのでしょう(古い話になりますが、漢字でもオリジナルの使い方以外に訓読みなどで使ってました)。ですから明治時代に取り入れたドイツ語も日本方言と言いますか和製独語といいますか、とにかくいじり回していたようです。

 おっと、そういえば普段平気で使っている「カルテ Karte」もドイツ語ですね。英語だと「カード」になるのですが、実際にカルテではなくて「カード」と呼んでいる医療機関も見たことがあります。ところが独和辞典で「Karte」を引いてみたら「カード」の意味はありますが「診療録」の意味が載っていません。そう言えば、「カルテ」は「カード」ではなくて、帳面またはルーズリーフの形です。(トリアージが必要な状況などでは「カード」になるかもしれませんが)
 和独を持っていないので、オンラインの和独辞典で「カルテ」を引いてみると Patienten Akte や Kranken Akte や  Behandlungskarte が出てきました。(名詞の男性/女性/中性をきちんとしろ、とドイツ人には怒られるかもしれませんが、ご勘弁を。Karteは女性名詞なので“die Karte”がおそらく正しいのでしょうが、30年以上前の知識で自信がありません)

 本日の結論です。「カルテ」は、一見ドイツ語、でも実は和製独語のようです。


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 このエントリーを読んだら、小学校から英語教育を行うのは、日本の歴史から考えるとそんなに変なことじゃないのかなと、ふと思いました。「正しい日本語」って、どの時代まで遡ったら辿り着くのかと。
 第一外国語については、英語より独語の方が学びやすいんじゃないかと、個人的には思います。英語だと、日本語の「てにおは」がどこに行っちゃったのか、とても悩んでしまったので(苦笑)。私にとって英語は、全く構造の違う言葉で、学ぶのに難渋しました。
written by christmas / 2008.09.14 22:30
 「正しい日本語」が果たして存在するのか、はさすがにテーマが大きすぎてここでは扱いきれません(というか、私の能力と知識が不足しています(^_^;))。ただ「文法」は存在するけれど「話法」は存在しない(書き言葉にはルールがあることが明文化されているけれど、話し言葉にはそんなものはない)ことが、一つのヒントになるかな、とは思います。

 しかし、このエントリーを書いて以来、頭の中で「でるですでむでん」という呪文がずっと鳴り響いていてうるさくていけません(^_^;)。
written by おかだ / 2008.09.15 19:03

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