ニュースによると、「新型インフルエンザ対策の企業版」を厚労省が策定中だそうです。4割の従業員が長期間欠勤することに対応しろ、だそそうな。だけど、その記事を素直に読んでいると、「企業」の中に「医療機関」が入っていないことに気がつきました。
ある企業で10の仕事を10人でやってたとしましょう。一般企業で4割欠勤すると、10の仕事を6人ですることになります。これは大変です。しかし新型インフルエンザが流行して4割が欠勤するパンデミックの事態では、医療機関では6人に減った人間で10の仕事ではなくて40とか60の仕事をしなければならなくなります(この計算、数字の正確性はともかく、理屈の説明は不要ですよね?)。そのことを厚労省は考えているのかな?
ということは、厚生労働省は……
1)医療従事者は病気にならないと思っている
2)医療従事者は病気になってもあるいは死んでも働けると思っている
3)医療従事者は1日に48時間働けると思っている
4)医療機関のことは忘れていた
5)何とかなると楽観的に思っている
6)「縁起でもない」から、考えたくない
7)実は奥の手がある
「正解」が7)であることを、切に願います。
厚労省のサイトに、平成19年3月26日新型インフルエンザ専門家会議による「医療体制に関するガイドライン」があります。たぶんこれが上記のニュースで触れられたことを取り入れて改訂されるのでしょう。で、これを読むと、国民は粛々と発熱外来を受診しあるいは家で静かにしていることを求められているようですが、さてさて、そんなに上手くいきますかね? それができる人ばかりなら、夜中の救急外来が軽症患者でパンクする、なんて事態は最初から起きないようにも思うのですが。それに、高熱に浮かされたモンスターはもっと凶暴化したりしませんか?
そうそう、このガイドラインでは別に気になったところがあります。「9.医療施設におけるライフライン 」で「○ パンデミック発生により社会機能が低下した事態においても、医療施設は必要な入院機能を継続するために、電気、水、食料等のライフラインを確保する。都道府県等は、これらのライフライン確保を支援する。」とあります。ライフラインを確保するのは病院の責務、ということのようですが、停電したらどうやって病院が電気を確保します? 私がすぐ思い出すのは、かつて台風19号であちこち停電したことですが、そのとき病院の自家発電の燃料は次々切れてしまいましたが、業者は交通渋滞と多すぎる注文によって配達の手が回らず、多くの病院では電気が使えない状態が長く続きました(そもそも自家発電では病院全体に電気は供給できません)。水も、井戸を掘っているところはまだ良いのですが、それも電気あってのことです。それを「医療施設は……確保する」ですましちゃって、本当に良いの? 県だって困りません? 病院だけでも対応するのは大変でしょうが、「支援」を求めるのは病院だけではないでしょう。てんてこ舞いになるのは目に見えています。すべて対応できるだけのリソースが県にあるでしょうか。しかも人的資源は4割減です。
「緊急事態に対して適切な対応マニュアルを整備しろ」と病院に要求するのは厚労省や日本医療機能評価機構ですが、“この程度”のマニュアルで良いのだったら、楽ですねえ。「緊急事態に現場スタッフは適切に対応する。管理職と病院はそれを適切に管理・支援する」で良いのですから、鼻歌まじりでちょちょいのちょいです。でも、いくらことばがなんとなく立派でも、この程度の具体性だといざというとき何の役に立たないんだよなあ。“改訂版”でもうちょっと読み応えのあるガイドラインが登場することを望みます。少なくとも、モノ(備蓄と流通)・人(特にイレギュラーな使い方)・情報(収集/処理/広報)、について具体的にきちんと押さえているものを。もし「精神的な支援」だけだったらそんなものなんか要りません。
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「規制大好き」の厚労省は、当然のように処方日数も制限します。現在は向精神薬が規制されていて他の薬は基本的に処方日数の変な制限はありませんが、かつては内服薬・頓服薬・外用薬それぞれ別々に厳しい規制があり、それに違反したら即座に「不正請求」としてレセプト保険点数の削除という鞭がふるわれました。
その昔ハリホットという湿布薬がありまして(今もあるかもしれません)、一袋に小さい湿布が42枚も収められていました。全身が痛い老人が両肩・腰の両側・両膝にそれぞれ貼ったら一日6枚、その1週間分(週に1回きまった曜日に受診)、という計算で作られた薬でした。ところが昭和の末期にこれを私が出すと、ある日突然レセプト審査で「12枚分過剰投与である」として支払いを削られました。当時外用薬は「5日分」しか出してはならないという規則があり「6(枚)×5(日)=30。42ー30=12。したがって12枚分は減らして処方するべきだったのに、この薬漬け医者め、罰してやる!」というわけです。
ということは、密閉されている袋を開けて12枚抜き取って患者さんに渡して「湿布が欲しいのなら5日後にまた来てね」と言うか(でも、その抜き取った12枚、どうしたらいいです? キープしておいて次回受診時に「はい、これはあなたの分」と渡すのかな)、42枚丸ごと渡して12枚分のコストは医療機関が泣くか、どちらかを選択する必要がありました。(実際には5日ごとに来院願う方が病院は儲かります。湿布の枚数は結局同じですが、再診料を7日ごとよりもたくさん頂けますから)
……だけど……「42枚を袋に詰め(て販売す)る」規格は厚生省(当時)が認可したものなんですけどねえ。「42枚まとめて販売することは許す。でも処方はしてはならない」とは、どの口がそんなことを言うのか、と当時思いましたっけ。
訂正。当時思っていた(過去形)のではなくて、現在でも思っています(現在完了進行形)。
※現在でも保険薬の湿布で一袋5枚の規格のものは、当時の規制の名残かも、と私は思っています。
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