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 書誌情報:『図表でみる世界の保健医療 ──OECDインディケータ(2007年版)』OECD 編著、鐘ヶ江葉子 訳、 明石書店、2008年、3000円(税別)

 OECDが出している保健医療国際比較の最新版です。2005年版については「海外からの評価」で触れましたが、最新版が出たのに気がついたのでアマゾンに注文しました。到着したばかりでまだ精読はしていませんが、とりあえずの読書感想です。

 「出生と死亡」といったわかりやすい統計データもありますが、それを加工した「早すぎる死亡」には刮目しました(というのはことばのアヤで、私は強く目をこすったらしばらくピントがおかしくなるので、眼鏡をかけ直しただけです)。これは「若年者が死んだ年齢を70歳から引いて全死亡者分を積算したもの」の比較です。日本はOECDでトップ、つまり子ども〜若年者の死亡がとっても少ないのです。さらにこの数字の変化の意味が国ごとに違うことも本文では書いてあります。「国情」というものがあるので、単純に数字だけ“読”めばよいわけではないことがわかって、面白いですよ。
 日本では良く比較される交通事故と自殺ですが……日本の交通事故の死亡率はトップから5番(人口10万対で6.6。トップのオランダは5.2。ワーストの韓国は17.7)ですが、自殺はワーストから3番(人口10万対で19.1。トップのギリシアは2.6。ちなみにワーストはここでも韓国で24.2)。
 「65歳以上人口1000人あたり病院と介護施設の介護病床数」……ため息が出ます。本文には「それぞれの施設の場で提供されるケアは、多くの場合、医療と福祉が混合されたものである」とあります。誰に何が提供されるべきかが明確です。それを分離してさらに病床数を減らす、が日本の方針でしたね(誰に何を提供したくないか、は明確です)。で、国際比較のグラフを見ると……第一グループは北欧です。そこからちょっと落ちて第二グループを形成しているのが欧米の国家群。そこからがくんと落ちて第三グループも欧州が中心ですが、日本もそこに混じっています。かろうじてイギリスよりは上ですから、胸を張っても良いのかな? でもこれから減らすんでしたよねえ。

 こういった統計データの場合、国際比較も重要ですが、時間軸に沿っての比較も重要です。「その国」が過去から現在へどう変わってきたかを見たら、将来どうなるか、もある程度予想できます。
 OECDで本書を編集している人もそれは考えているのでしょう、2005年版と少し変わったところがあります。「臨床医の数」のところで、日本の医師数が下から4番目なのは2005年版と同じですが、その右にある年平均増加率のグラフが「1975〜90年」(A)と「90〜2005年」(B)の二つの時期が比較できるようになっています(この比較は2005年版にはありませんでした)。日本は(A)が2.9%(B)は1.2%です。みごとな激減ぶりです(日本の「医師不足」は自然現象ではなくてどなたかの意図的な努力の結果であることがわかるような気がします)。ただ、日本より下の国の(B)を見ると、メキシコが4.0、韓国は4.7、最下位トルコは3.7です。抜かれるのは時間の問題ですな。上を見ると、日本のすぐ上のポーランドの(B)は0.0なのでこれは抜けそうです。その上のニュージーランドは1.1。ほとんど差がないので抜くのは難しそう。その上のカナダは0.3。なんとかなりそうです。で、それより上は……えっとぉ……なんだかこのへんかもうちょい下が日本の“定位置”みたいです。(「産経と朝日(厚労省)のパラドックス」をしつこく思い出します)

 2005年版の感想でも書きましたが、「日本の医療」について「ぐろーばるすたんだーど」などと口走る可能性のある人は、最低この本(の図表)くらいは目を通しておいた方が良いです。「学ぶ」つもりがなくても「楽しむ」ことができることは請け合います。

 ただ気になるのは、日本が提供しているデータの精度です。わかりやすいところで医師数なんか、絶対「現実」とは乖離していると思うんですけれど。自分の国の政府が信用できないとは、国民として不幸なことだと思いますが、でも、厚労省が根拠にしている医師のリスト、どこまで信用できるのか、と思ってしまうんです。年金名簿さえちゃんと管理できなかったお役所ですからねえ、「どっかと座り込んで書類を見つめているだけで、重い腰を上げて勤務実態調査はしていない(やってもせいぜい郵便か電子メールか電話まで)」に先月のお小遣いくらいなら賭けても良いです……って、この賭け、受ける人はいないでしょうね。あ、そもそも、パソコンのローン返済で、先月は(先月も)お小遣いは無かったんだ。


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