前々回の当直での話です。
夜明けに患者さんが急変して、久しぶりに救急蘇生術をやりました。気管内挿管をしたのは何年ぶりでしょう。私が担当していない病棟だったのでどこに何があるのかすぐわからずいろいろ戸惑うこともありましたが、とりあえず困ったのが、喉頭鏡が点灯しなかったことです。手渡された瞬間いつものクセでまず点灯するかどうか確認してわかったのですぐ交換できましたが、ナースはつい先日定期点検があったばかりなのに、とそちらはそちらで困っていました。私は私で、あとで救急カートの点検手順を再検討する必要がある、と心にメモをしました。それと、救急カートから取り出した人間がまず点灯をチェックするようにした方が良いでしょうね。
それでもなんとか気管内挿管ができて、心マッサージと人工呼吸を一人で交互にしながら応援の到着を待ちました。私は腰にぎっくり腰の既往という爆弾を抱えているのでできたらあまりあの腰に負担がかかる格好を続けたくないのですが、とりあえず私以外に動ける医療資格者はその時点で2人だけだったのでしかたありません。点滴もなかなか確保できないのでボスミンは気管内投与をして、点滴ラインが取れたところで心マッサージを交代。やれやれ、と腰をもみながらアンビューバッグで酸素を送り込む係に専念、応援がもう一人到着したのでそちらにバッグを任せて私はご家族に電話をしました。(よくこんなときに「連絡が遅い!」と発生時と連絡時の差を問題視する人が登場するのですが、私は手が足りない状態で連絡と救命とどちらを取るかと言われたら、まずは救命の方を選びます。連絡は手に余裕があれば、です。だって、電話をしていてその間に患者は死んだ、はイヤですもの。それとも「死んでも良いから連絡を優先しろ」と主張する人がいるかな?) しばらくして主治医が到着したので、申し送りをして現場の指揮を任せて手が足りているのを確認してからカルテ書きに回りました。(法律では診療をしたら直後にカルテを書け、となっています。今回のような場合、医師が複数いたらそれも可能ですが、単数の場合(あるいは複数でも全員が診療にかかり切りの場合)その「直後」はいつやってくるんでしょうねえ。「ああせい、こうせい」と言う人は口を一つ動かせば用は事足りますが、それで動かなければならない人に手が何本あるか数えて欲しいと思うこともあります)
マニュアル大好きの医療機能評価機構では、こういった緊急時対応に関してもマニュアルを求めます。どういうサインで人を集めて、誰が集まって誰が指揮を執るのか、をちゃんと決めておけ、と。私は苦笑します。マニュアルを作るのは作れますが、現実は出たとこ勝負なのです。医療はスポーツと似ていて、ある程度の筋書きはありますが、即興性が非常に大きいのです。(サッカーの「システム」でも、いくらシステムを練り練習をしても、実戦では球の転がる方向やそのとき集まった味方の数や配置と動き・敵ディフェンダーの数や配置と動き・天気・点差・残り時間などで、その場その場での「ひらめき」が必要になりませんか?) そういった状況に台本やら脚本やらを持ち込んだらその通りすべてがきちんと進行するはず、という発想のおかしさをお役人は誰にも教えられていないのでしょうね。
たとえば今回も、私が処置中に突然「うっ」と言いながら腰を押さえて倒れる、なんて事態をマニュアルに盛り込めるでしょうか?(幸い今回はありませんでしたが、確率はゼロではありません) 「現場で指揮を執っていた医師がぎっくり腰で倒れた場合には、先任ナースが指揮を引き継ぐものとする」なんて一文を緊急時対応マニュアルに入れる、とか?(で、「余裕ができたら倒れた医者を助ける」なんて一文を入れておかないと、いつまでも私は床に放っておかれるのですね……やれやれ)
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なぁんだ、厚労省って、暇な職員が随分いるのねえ。。。
勤務中にネット三昧楽しんで、で、超過勤務手当を貰ってたりするの…? この人たちをリストラしたら、結構な人件費が浮くんじゃないかしら。誰も困んないし...
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医療現場のマニュアルってしょっちゅう変わりますよね。それってマニュアルって言うんでしょうか。要は個人個人の自覚の問題だと思うのですが、ってこんなこと言ったら前時代的、ワールドワイドじゃないって批判されるのがオチでしょうね。
医師は治療をする人であり、治療が必要な立場になるという認識が全くなかった私です。このエントリーを読み、そうだ、医師不足だから、蘇生術中にぎっくり腰で動けなくなることだってあるんだと、改めて痛感しました。
マニュアルをきちんと作っても、指導・監督する立場の人には、結局、「猫にご飯」になってしまいますね(苦笑)。
ぎっくり腰に限らず(^_^;)医者は倒れます。そういや新型インフルエンザ対策でも厚労省は「医者はフル稼働できる」前提のようですが、とことん甘いなあ、と思います。
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