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 もちろん炭疽菌も炭疽(炭疽症)も「現役」です(獣医の世界では重要な病気でしょう)。ただ、19世紀末にコッホが炭疽菌が炭疽の病原菌であることを証明しパスツールがワクチンを開発してくれたおかげで、すっかり「過去の病気」のイメージになっていました。少なくとも私は、大学を卒業した後はきれいさっぱりこいつらのことは忘れていました。
 それがまたテロで“復活”してきたものですから、私は目をぱちくりです。炭疽菌だけではなくて、天然痘やペスト、ボツリヌスなどがテロ兵器として考えられるという厚労省の通達 http://www.mhlw.go.jp/houdou/0110/h1015-4.html が出ましたが、営々と積み上げられてきた近代医学の先達の努力の集積が、テロリストによって一挙に否定されてしまったようで、私は当時なんだかとっても不愉快な気分を味わいましたっけ。

 そういえば当時日本のある病院では「炭疽菌対応マニュアル」を作れという病院上層部からの命令が出されました。「もし炭疽菌入りの封筒がこの病院に届けられたら、一体どうするんだ?」と。
 あれはアメリカのテロで、日本で起きるとしてもここに真っ先に届けられるとは確率的に思えないけれど、誰かに激しく恨まれるような何か身に覚えでもあるのかな、とそこの院内感染対策委員長は思いました。ところが求められているのは、病気の対策というよりテロ対策です(感染した人は抗生物質で治療するしかないし、人→人の感染は考えなくて良いのですから)。テロ対策は院内感染対策の範疇を超えています、というか、そういった病院全体の危機管理システムに関して考えるべきは病院の上層部のお仕事のはず。
 しかもそんな封筒が見つかったら、院内マニュアルよりも警察と保健所の命令の方が優先になるのは目に見えています。ちょっと想像してみてください。院内にいる殺気だった警官に向かって「院内マニュアルではそこは立ち入り禁止です」と医者が申し渡して、言うことを聞いてくれると思います? 保健所が「こうしろ、ああしろ」と言うのに対して「院内マニュアルではそうなっていません」と抵抗できると思います?
 ということで、結局院内マニュアルは作られませんでした。

 で、今。テロの記憶もずいぶん遠くに行ってしまいましたが、「炭疽菌」について、皆さんはちゃんと記憶を保持していますか? それともまた「死語」になってますか?

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