おかだ
More プロフィール

Search

Calendar

<< 2008/06 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

新着コメント

新着トラックバック

 糖尿病などで私からカロリー制限を言い渡された患者さんのほとんどは、“抵抗”を試みます。たとえば「果物は体に良いからかまわないでしょう?」とか「甘いものを食べないと力が出ません」とか「酒は百薬の長」とか「日本酒はだめだろうけれど焼酎は体に良い」とかとかとかとか。私の返答は基本的に同じ主題とその変奏です。「一日のなかで、総カロリーを超えなくて栄養のバランスもちゃんと取れるのだったら、その中でのやりくりはお好きにどうぞ。オーバーしたらその分を運動で燃やすのもOKです。私のためではなくてご自分のためなんだから自分で励んでください」
 私を“懐柔”できないとなると、次の手は「カロリーの少ないものだったら良いでしょう?」。私の答えも決まっています。「単品でカロリーが少なくても、それをたくさん食べたら結局摂取カロリーが増えることは、お忘れなく」。もちろん「間食に味付けしていないコンニャクを食え」などという非現実的な要求はしません。文字通りの「人事を尽くして天命を待つ」(できる範囲でできる限りの努力をして、あとは天命(この場合は天寿ね)を待つ)をオススメしているだけです。別に長生きが絶対的な善とまでは主張しませんが、いつか来る“その日”まではボロボロの血管よりはできるだけ健康的な血管でいる方がお得な人生だとは思っています。

 そういった人への“援護射撃”と言えるかな、「カロリーゼロ」をうたった商品があります。確認のためにスーパーに行ったら、スプライトゼロとかコカコーラゼロとかペプシNEXとかが「カロリーゼロ」と表のラベルにでかでかと、裏の栄養表示の所にも小さくでもしっかりと書いてありました。
 だけど、まったく吸収されずに体の中を素通りするのならゼロカロリーということはあるでしょうが、何らかの味がするモノ(人体のレセプターと何らかの関係を持つモノ)がゼロカロリーということはあるのでしょうか。

 正解は法律にありました。健康増進法に基づく栄養表示基準では、食品100g(飲料100ml)あたり5kcal未満であれば「ゼロカロリー」、食品100g(飲料100ml)あたり糖類が0.5g未満であれば「糖質ゼロ」と表示してよいことになっているのです。
 細かい数字は法律そのものにはありません。厚労省のページで見つけました。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/hyouziseido-5.html

 5カロリー未満を「5カロリー未満」と表示する、あるいは「4カロリー」とか「2カロリー」とか表示するのならわかります。だけどそれを十把一絡げに「ゼロカロリー」と表示するのは、科学的にも言語的にも、ずいぶん乱暴な態度です。私には賛成できません。
 ペットボトル症候群の人は、一日に何リットルも清涼飲料水を飲みます。たとえばこの「カロリーゼロ」の飲料を5リットル飲んだら、最大250カロリーの摂取になり得ます。これってけっこうでかい数字です。たとえばその人にとって1500カロリーが適正だとしたら、16%も誤差が生じるのですから。しかも本人は「カロリーゼロだから大丈夫」と思っているから、ますます困ります。主治医がそれを承知していなかったら、食事療法が足りないのかと3食の方をいじったり、薬の効きが弱いのかと薬を強くしたり、治療が迷走し始めます。これは患者の不利益に通じます。

 さらにもう一つ問題が。企業努力で「本当にカロリーゼロの清涼飲料水」が開発されたとしても、それは「本家カロリーゼロ」を名乗れないのです。すでにそれは存在するのですから後発商品でしかありません。本当に真面目にゼロの商品が「実はそうではない商品」の間に埋もれてしまう、それは良いことですか? 真面目な企業にとってはいらだたしい状況ではないかと思うのですが。

 「羊頭狗肉」ということばがあります。「5カロリーもゼロカロリーも似たようなものだ」と言う人たちは「羊も犬も似たようなモノだ」と主張していた人たちの子孫なのかもしれません。「円周率は3も3.14も同じようなもので区別しなくて良い」と言う人たちも現在の政府にいるところを見ると、“子孫”は数多く存在しているようです。

 どれも明らかに違うと思うんですけどねえ。

固定リンク | コメント (3) | トラックバック (0)