私が小学生のとき、「検便」と言われたら、マッチ箱に便のカケラを入れて持っていきました。そういえばマッチ箱って最近見ませんねえ。
私が住んでいたのは幸い水洗トイレのアパートでしたが、周囲はほとんどが汲み取りで、便器の脇に新聞紙を敷いたりして同級生はそれなりの苦労をして便を取っていたそうです。あの町に下水道が完備したのは私の就職後、1980年代のことですが、そういえばその頃よく町を走っていたバキュームカーも最近は見なくなりました。私が最後に見たのは、10年くらい前。「あ、懐かしい。やっぱり、におうな」と思いましたっけ。(当時の住宅では、トイレが玄関の脇、という間取りがけっこう多かったのですが、これはトイレを奥に持って行くとバキュームカーで吸い取るのにホースの取り回しが難しいからではなかったか、と私は想像しています)
大腸癌検診が形になり始めたのは1980年代後半だったと記憶しています。便を何回採取するか、それをどうやって集めるか(郵送して良いものかどうか)、潜血食をどうするか、家庭での前処置はどこまでが適当か、実際に検診を始める前に病院の中で議論をした覚えがあります。当時の検査法はグアヤック法などで、便に混じったヘモグロビンは胃酸や消化液で変性したものでもどんどんひっかけるので、潜血食(肉や魚は禁止。野菜も加熱)が必須でした。面倒くさいです。
※大腸癌検診でなぜ便に混じったヘモグロビン(つまりは血液)を調べるかといえば、癌から出血していることがけっこうあるからです(多くは肉眼では見えません)。ただし、癌でも出血していないものもあるし、癌以外でも出血しているものもあるので話がややこしくなります。
たとえば、鼻出血・口腔内出血・大腸以外の消化管の癌・食道静脈瘤・腫瘍(良性でも悪性でも)・潰瘍(消化管のどこでも)・炎症(消化管のどこでも)・クローン病・憩室・痔・出血をきたしやすい全身疾患(白血病・血友病・DIC……)……もう全身どこでも各科の病気なんでもありです(これは便そのものを見たらある程度見当はつきますが、お尻が痒くて引っ掻いたらにじんだ血や子宮からの出血が大便にまとわりついて検出される、ということもあり得ます)。
そこで現在は変性ヘモグロビンはひっかけない検査法が採用されています。これだと出血して間もないヘモグロビンだけを検出することで、ねらいを大腸に絞ることができるのです。その場合でも言えるのは「大腸になぜか血がにじんでいるらしい」ということだけですけれど、それでも集団検診には十分役に立ちます。あくまでスクリーニングが目的ですから。
私も自分の便検査をこの前提出しました。和式トイレだと水深が浅いから苦労はなかったのに、洋式トイレだと採便が難しいのが困りますね。水底に落としたらまずいですから。説明書には「逆さに座れ」とありましたが、ズボンを完全に脱がないとその体勢はとれません。そこで私はもう一つのやり方「前に体をずらして」をやったのですが、これだと男の大切な部分が便器の前方のふちにぶつかってしまいそうになるし、なにより姿勢が不安定です。一瞬自分の格好を客観視して「人間の尊厳って、なに?」と考えてしまいました(ちょっと大げさ?)。
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