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昨日の続きと言えば続きです。
「清潔」と「不潔」は反対語ですが、必ずしもきちんとペアになって用いられるとは限りません。
たとえば年頃の娘は「お父さんって、フケツ」とは言いますが「お父さんって、清潔」とは言いません。「クリーンな政治」「清潔な政治家」は「ぅわぉ、たまにはこんなのが存在するんだ」という“オドロキの表現”であって、決して「不潔な政治家」と対称形をなしてはいません。世の中ではことばは辞書に書いてある通りには使われていないことがあるようです。
医学の世界で「清潔」「不潔」は世間一般とはさらに異なる独特の用法をされます。簡単に言うなら「病原体が一つでも存在している(可能性がある)」場合は「不潔」です。風呂上がりに洗濯したての下着を身につけていても、医学的にはその人は「不潔な存在」です(皮膚にも口の中にも腸内にも、常在菌がうようよですから)。まっさらのハンカチも、滅菌処置を受けていなければ「不潔なハンカチ」です。なんだか変な感じですが、ことばの定義が定まっている以上、それに逆らった個人的な用法を強行すると現場が混乱して不潔なものが清潔区域に侵入して医療事故の元になってしまうので、「郷に入れば郷に従え」で医療現場では私も“そういう使い方”をします。(帰宅したらニホンゴを使いますが、家庭では、幸か不幸か娘はいませんので、「お父さんってフケツ」とは言われずに済んでいます)
病院関係者でなくても、病院で流しが二つ並んでいて、それぞれに「清潔」「不潔」と書いてあるのを見た人も多いでしょう。保健所が厳しく指導してくれるのです。「流しは二つ作りなさい」「清潔の流しと不潔の流しとをきちんと分けなさい」。そして、流しで洗う場合「不潔なものは不潔の流しで洗いなさい」と。たしかにウンコを触った手と患者さんの脈をとった手を同じ流しで洗うのは問題かな、と思いますが、もしも「清潔」の流しで手を洗っていると怒られます。「手は不潔です。不潔の流しで洗いなさい」
……ちょっと待って。すると「清潔」の流しでは、いったい何を洗うんでしょう? だって「清潔なもの」は洗う必要、ありません。不潔だからこそ洗う必要があり、洗うために流しがあるのです。もしかして、洗った後「清潔」になったものを一時保存するための場所? だめですよ。清潔なものを流しに直に置いたら「不潔」になってしまいます。いくら「清潔」と表示しても、流しのステンレスの表面を滅菌や消毒しているわけではありませんし、たとえしたとしてもその直後から空中落下細菌でそこは「不潔」になっているはずなのですから。清潔の表示を見て「あ、ここに来てはいけないのか」と細菌がUターンしてくれたら良いんですけどね、それを病原体に要求してもまず間違いなく無視されるでしょう。
どうも保健所にも「清潔/不潔」に関しては独特の用法があるようです。しかも指導に来る人によって言うことが違うのを見ると、方言も多いのかな。
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