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 大学の授業で、私が受けた結核の講義は一コマだけでした。担当教官はとても残念そうに「かつては胸のレントゲンに異常な影があると結核をまず疑っていたが、今は癌を疑うようになった。しかし、今でも結核患者は日本に数十万人いて、新規発症も年に7~8000人。決して過去の病気ではない。しかし私に割り当てられた時間はたった一コマ。とにかくこの100分間で全てを伝えるから、ちゃんと聞くように」とのことでした。(30年以上前の授業のことなのに、われながらよく覚えているものだと思います。当時は過剰に真面目で、教師の冗談もノートに書きとめるような学生だったからでしょうか)
 たしかに当時はすでに「結核は過去の病気」という風向きで、「もし見つかっても新三者併用療法でたたけばいいのだ」と言う人がけっこういました。まだ多剤耐性結核菌が問題になっていなかった時代のお話です。しかし実習に行った保健所では年配の所長が結核を「今、目の前にある問題」として捉えているのが印象的でした。

 現在の医学部でどのような授業が行われているのか興味がありますが(というか、実際に授業が受けられたらうれしいな。学生の時より熱心に勉強する自信があります)……私が習った時よりも患者数の数字そのものは小さくなっているのは確実です。たしかに以前の「国民病」から「普通の病気」になりつつはあるのでしょう。
 でも、結核はまだまだ“現役”の病気です。「過去の病気」ではありません。私自身が結核を見つけるのは、これまで大体2~3年に一人のペースですが、まだまだ「そのへんに結核菌は生きている」状況であることは間違いありません。過小評価されているというか、単に見逃されているだけではないのか、とさえ私は感じます。

 で、見つけたらどうなるかというと、手続きが面倒くさかったのです。結核予防法に基づいて保健所に届けを出すと、あとは法律の枠組みに乗っかってすべては自動的に運ばれますが、ともかく書類を書かなくちゃいけません。それも法律的に“正しい書類”を。こちらは書類仕事ですが、患者さん本人は療養所に強制的に入所させられ(ある意味人権侵害ですよねえ)治療が始まります。本人と濃厚な接触があった人は結核検診。怪しければ薬の予防投与。ただ、その薬を出せる機関にも制限がかかっていたはずです。一般の医療機関で出せるのはINHだけ、だったかな(このへんは記憶が曖昧です)。

 ところが、今からちょうど1年前、2007年の新感染症法では、なんと結核予防法がなくなってしまった(感染症法に統合された)ではありませんか。結核も普通の感染症扱いになったということなのでしょう。公費負担などは維持する、と厚労省は1年前には言っていましたが、統合されてしまったらこんどは絶対「同じ法律の中にあるのだから、結核だけを特別扱いするわけにはいかない」と言い出す、文言だけに拘泥して、歴史にも科学にも医学にも福祉にも無頓着な人が必ず出てくると思うんですけどねえ。

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