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2008.03.25 07:02 |  診療  |  その他(医療関連)  |  社会・歴史  |  おかだ  | 推薦数 : 1

死語(14)大量皮下注

 私が子どもの頃、少なくとも1960年代には、小児への点滴はそれほど一般的ではありませんでした。器具(注射針と点滴剤)と技術(血管確保のやり方)とその普及度の問題です。子どもよりも血管を刺しやすく確保しやすい大人の点滴でも、1980年代前半でさえ、血管確保が難しかったらカットダウン(皮膚を切って静脈を露出、そこに直接針を入れる。血管は針の“上流”でしばるので針を抜いた後その血管はもう二度と使えません)をやっていたのですから、“そういう時代”だったと言っても良いでしょう。

 では、嘔吐がひどくて口から水が入らない・点滴も難しい小児にはどうしたか。そのままだと脱水で死にますから、大量皮下注というテクニックが使われました。今でも点滴が血管から漏れたら皮下に注射液が入って腫れますね。それを人工的に起こすのです。大腿部など面積が広いところを選んで点滴一本分を強引に押し込みます。そのあとたしか蒸しタオルか何かで覆って吸収を促進していたように記憶しています(私自身は体験していないので淡い記憶ですが)。子どもは泣き叫びます。そりゃ、痛いもの。
 私が医者になってしばらくして、針がものすごく良くなって、若い小児科医がにこにこと「この針だと血管確保に失敗する気がしない」なんて言っていたのを覚えています。当然大量皮下注は“過去の遺物”になりました。

 ところが、大量皮下注がちょっと姿を変えて意外な“復活”をしているようです。血管がもろくて長時間の確保が難しい老人で、持続皮下注というテクニックがあるのだそうです。血管内ではなくて皮下に点滴してそこからゆっくり吸収させるわけです。これだったら(ラインにつながれているというストレスを除けば)ずいぶん楽そうです。“過去の遺物”でも忘れずに取っておいた方が良いこともあるんですね。

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