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2008.03.20 09:53 |  診療  |  映画 / 音楽 / 読書  |  その他(医療関連)  |  おかだ  | 推薦数 : 1

眼球移植

 眼科つながりです。

 SFなどではけっこう平気で眼球移植が行われます。とりあえずすぐ思いつくのは……えっと……『死霊狩り』(平井和正)なんかどうでしょう(ご存じない方が多いでしょうけれど)。小説以外なら『サイボーグ009』とか『600万ドルの男』とか。
 だけど、眼球移植は、そんなに簡単にできるものなんでしょうか。

 突然ですが、「ゲゲゲの鬼太郎」の目玉親父は、一体“どこ”でものを見ているのでしょう? 「目玉」ではありません。視覚情報は脳の視覚野で処理されて初めて人はものを“見る”ことができるのです。目玉親父の場合、あの細い体が脳そのものであるか、あるいは無線LANでどこかよそに置いてあるサーバーにつながっていてそこで視覚情報を処理していない限り、「見る」ことはできないはずです。
 目玉はただの光学装置であって脳と正しく結合して初めてその機能を発揮できるものなのです。では移植の時に脳と目玉の間で視神経をちゃんとつなげばOKかと言えば(上下左右をちゃんと間違いなくつなぐのは大変ですが)……こんどは目玉の運動の問題が生じます。

 もしも右目と左目がそれぞれ勝手に別のところに注目したら、脳は送られてきた二つの画像を処理しなければなりません。片方を無視すればいいのなら簡単ですが(たとえば「利き目」での作用)、両方が自己主張したら二つの画像を一度に見る「複視」となってしまいます。それを防ぐために移植された眼球は、見たいものがどこにあっても脳の指令に従ってそいつを追随しなければならないのです。それももう片一方の目と共同して(さらに言うと、左右の微妙な差を利用して脳は立体視をやっています)。これ、私達の両目(と脳)は自動的に情報処理していますが、実は大変なことです。話を単純にするために左右に関してだけ考えますが、見たいものが右側にあったら両目とも右(でも、角度は微妙に違う)、左側にあったら両目は左に向きます。しかし見たいものが真ん中にあったら、右目は左側・左目は右側に向く必要があります(医学や生理学に詳しくない人、ここの説明、わかります? 図に描いたらわかりやすいんですけどね)。目を動かす筋肉を微妙に調節して常に両目で一点を注視できるのは、実に大変な作業なんです。

 さらに、ピント合わせも重要です。対象との距離を一瞬で判断してレンズの厚みを調整しなければなりません。これがいかにすごいことかは、オートフォーカスのカメラを使ったことがある人には説明抜きでわかるでしょう(それとも最近のカメラは(私が持っているのとは違って)瞬時にピントを合わせちゃいますか?)

 移植された目は、血管と視神経だけつなげばいいのではなくて、その他の細かい筋肉や神経も全部フルセットで移植して(あるいはつないで)完璧に機能させなければ人は「ちゃんと見る」ことはできないのです

 あ、まだありました。絞りは……ちょっとズルですが、移植するのは生体眼ではなくて人工義眼にして電子的に処理しましょうか。これなら機械的な絞りにしなくてすむので話が楽になります。ただこんどはエネルギー源をどうするかと、電子情報を脳が処理できる生体情報にどうやって変換するかの問題が新たに浮上しますけれど。

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