昔のまだ禁煙車がなかった頃の新幹線では、どの車室の中でも紫煙がもうもうと渦巻いていて、下手すると反対側の出入り口が煙って見えにくいくらいのことがありました。あの頃は男性は過半数が喫煙していたんじゃないでしょうか。(私も含めて)非喫煙者がよく黙って耐えていたものだと思います。それが今では逆に喫煙者の肩身はどんどん狭くなってきています。
日本人全体での喫煙率の年次推移は下の通り。どんどん減っています。
http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/toukei/kituen.htmlこちらのグラフの方が色がきれい。
http://www.geocities.jp/uen2003ehime/page019.html若い女性で喫煙者が増加傾向にあるように見えてちょっと気になります。西洋はほぼ男女差がないので、これも日本の欧米化の表れでしょうか。
2006年の調査では、日本医師会会員の喫煙率は男性医師は21.5%、女性医師は5.4%だそうです。男女とも日本人平均の約半分。「半分も」なのか、それとも「半分しか」なのか、どちらを言うかで言う人の医療者に対するスタンスが見えそうです。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcs2006/200603/500031.html こんなデータを見ていると、映画「オール・ザッツ・ジャズ」で、主人公の振り付け師が煙が立ちのぼるタバコをくわえたままゴホンゴホン咳をしているのを聴診している医者もまたくわえタバコ姿で咳をしている、というシーンを思い出します。日本ではさすがに仕事中にくわえタバコ姿の医者はいない……ですよね。(病院機能評価ver.5では「病院敷地内は完全禁煙」が条件ですから、これからの医療施設では(職員だけではなくて外来者も)喫煙者はますます肩身が狭くなります)
ちなみに看護師の喫煙率は、日本看護協会の調査では24.5%(ただし女性のみのデータで、一般女性の倍)となっています。
http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/katsudo/jirei/dantai/k1633.html 私は現在は非喫煙者ですが、医者になってから禁煙したクチです。理由は、吸う暇がなかったから。最初は紙巻きで始めましたが、出入りしていた薬理学教室の助教授のパイプ姿が格好良かったのとパイプタバコの煙の甘いにおいに影響されたのか、学生最後の頃にはパイプに移行していました(傍から見て似合っていたかどうかは……まあ、青二才の恰好づけでしょう)。ところが卒業したら大変いそがしい研修医生活で、ばたばた走り回ってやっと一息ついてパイプに火をつけたらすぐに、あるいはタバコを詰めて火をつける寸前に呼び出されます。なかなか帰れないけれどそれでもなんとか家に帰ってさて一服と思ってもすぐ電話が鳴ります。ゆっくりパイプをくゆらしたり掃除をする暇がありません。というか掃除が必要なほどパイプが汚れません。これは虚しい、ということであっさり吸うのをやめました。
別にニコチン禁断症状は出現せず、全然苦しくない禁煙でした。目が回るくらいの生活の中で自然にニコチンが抜けていたのかもしれませんし、パイプは煙を深く吸い込まないから最初からニコチン中毒になっていなかったのかもしれません。
結局、生活に合わせて習慣の方を変更したわけです。
「生活習慣」とひと言で言いますが、実は「生活/習慣」ではないでしょうか。生活がパターン化するとそこに習慣が生まれます。そして、習慣があることによって生活の方がこんどは規制を受けます。つまり、渾然と絡み合ってはいるが、実は別物。別物ではありますが絡み合っていますから、生活を変えずに習慣を変える、あるいは、習慣を変えずに生活を変えるのは、困難です。
禁煙に限らず、ダイエットでも試験勉強でも事情は同様でしょうが、“それ”を「目的」にしてしまうと、“達成”した瞬間人間は気が緩みます。「できた」から安心してしまうし、「できた自分」に対して何かご褒美をやりたくもなります。ところが生活のスタイルが変わっていなければ、その“ご褒美”は、実は避けるべきもの(タバコ、高カロリー食品、楽してごろごろ、勉学を怠ける……などなど)であることが多いのです。だからうっかり喫煙を再開したり体重がリバウンドしたり勉学の成果が一夜漬けで身に付かない。しかし「目的」ではなくて「結果」だったら話は違います。結果として「タバコを吸わない生活のスタイル」を確立できたなら、たとえたまにうっかり吸ってしまったとしても、こんどは「吸うこと」の方が長続きしないはずです。タバコの場合は、依存性の問題があるのでここまで単純に言ってはいけないのかもしれませんが、ダイエットと勉強ではそう断言してよいでしょう。(糖尿病などの食事療法もそうでしょうね)
大切なのは「禁煙を何年やっている」とか「禁煙に何回も成功した」なんて“自慢”ではなくて、「自分の生活/習慣」に対する深い認識とそれがどうありたいかの明確なビジョンとそれを達成するための正しい方法論と地道な努力の日常的な継続です。
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