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人気のある(あった?)医学TVドラマシリーズ「ER」、今でも時々チャンネルのザッピングをしていてひっかけることがあるのですが、あそこで描写される現場やセリフのリアルさには驚きます。仄聞したところでは医療の専門家がアドバイザーとして入っているそうですが、日本の医学ドラマのしょぼしょぼさとついつい比較してしまいますな。まあ日本のドラマのことはどうでもよくて、今日書きたいのは「ER」で目撃される病院での“人口密度”の高さです。たとえ夜中のシーンでも、白衣を着た人や着ていない人がうろうろうろうろうろうろうろうろ。あの人数の多さは、日本人の感覚からは尋常ではないと思うのですが、皆さんはいかがです? 日本でたとえば夜中の病棟にカメラが入ったら、「薄暗くて人気のない廊下」でしょう? 人影があるとしたら、せいぜい巡回の看護師かトイレ歩行あるいは夜間徘徊中の患者くらい。それが「ER」だと、救急室はもちろん煌々と照らされた詰め所には人がぎっしりでお互い怒鳴りあっているし、廊下にも様々な人が立ったり座ったり歩いたり走ったりしています。「あれはドラマだから」で片付けても良いのですが“リアル”が売り物の番組なのですから、ああいった細部にも何らかの真実性はあるはずです。
以前聞いた話では、同規模の病院を日米比較したら、アメリカは日本に比べて入院患者一人当たり、医師は2倍、看護師は3倍、プラス様々な専門職や非専門職やボランティアがうようよ、でした。なるほど、“混雑”するわけです。(ついでですが、医療費は10倍だとか)
私が子供の頃人気だったTVドラマ「ベン・ケーシー」ではどうだったかなあ。オフィスとか手術室のシーンしか思い出せません。まああの頃はのどかな時代でしたから、アメリカの病院ものんびりしていたのかもしれませんが。(外科系のドクターがよく着ている丈が短い白衣を「ケーシー型」というのはこの番組からのはず)
「アメリカの病院のように日本でも人を増やせ(でも金がかかるよ)」でこの稿を閉じても良いのですが、最近読んだ『ニッケル・アンド・ダイムド ──アメリカ下流社会の現実』(バーバラ・エーレンライク 著、 東洋経済新報社)も紹介しておきましょう。この本は、五十代のジャーナリスト(女性)が、実際にワーキング・プアになって生活をしたレポートです。様々な町で2年間にわたって6つの職を転々として、日々稼ぐ金だけで食と住(とそれ以外)をまかなう“プロジェクト”で、アメリカ社会の持つ問題点が浮き彫りにされているのですが、その中に「大半の老人ホーム、特に営利目的の施設では、危機的な人員不足に陥っている」という2000年7月のアメリカ保健福祉省の報告が紹介されています。で、対策は低賃金パートタイマーの派遣。本書には、何の訓練も受けていない人(つまりは本書の著者)が食堂でアルツハイマーの老人たちに食事介助をするシーンが描かれます。著者が仕事をしたのは食堂だけで(実際にこなすのは食事介助と皿洗い)、同僚が全員無断欠勤した最悪の時には著者がたった一人で数十人の老人全員の世話をすることもあったことが生々しく書かれていますが、身体介護でも同様の状態で、だからアメリカの施設での老人の状況(事故や褥瘡などの発生)は悲惨一歩手前、あるいは、悲惨そのものだそうです。(たしかに時給6ドルでは、そんなに人は集まらないでしょうけどね。そんな給料だと持ち家がない限り、食ったら住めない、住んだら食えない、になりますから)
日本の十倍コストをかければ「マンパワー!!」、そこまでコストをかけなければ「まんあわわわ~」……これもまた、アメリカの“現実”なんですね。で、日本はどうしましょう。どうなりたいです?
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